第4話 幽霊を探し訪ねて 〝ひっくり〟 1/2
小旅行2日目。秋田県のとある海水浴場で。
人の疎らなビーチで眺める日本海は水墨のような色をしていて浜風がやや肌寒い。
海水浴シーズンとしてはちょっとばかり時期が早いけれども照り付ける太陽だけは夏色である。
キミは海パン姿で砂浜を歩く。
折りたたみ日傘を差した紫外線対策ばっちりのハルが、
「どうかな? 似合う?」
サマードレスに身を包み、腰の辺りを軽くつまんで少し持ち上げてみせた。
肩から足下へ、サマードレスはその白さをピンク色へと濃くしており、膝丈の裾のところには四葉のクローバーの柄がある。
ひらひらと浜風に吹かれて涼しげに靡いた。
日本人形のようなハルが、バービー人形みたいになった。
キミはハルを観察して、
「なにかオカシイ。変なんだよな……」
と、じぃーっと見る。
「ハルの髪型がダメなのだ!」
「そうよねえ、ヘルメット被ってるみたいだもの」
栞乃とカエ姉がハルの髪型を指摘した。
2人とも水着に着替えている。
栞乃はスクール水着にスカートがついたような黄と白のボーダー柄Aラインの水着。
カエ姉は青い縦線の入ったウエットスーツ姿で登場した。
「ヘ……ヘルメット……」
頬を引きつらせるハル。
ヘルメットの髪型と言われてショックを受けているようだ。
そんなハルにカエ姉が、
「サイドをゴムでまとめて、上げてみればどうかな?」
と言って、ハルの髪をいじった。
「ちょっぴり良くなったんじゃない?」
まとめた、というより束ねた髪がぴょんとハネて、ヘタの付いたミニトマトのようになってしまった。
「う~ん、ハルにドレス系は似合わないかもね」
あっけらかんと言うカエ姉。
「ちょっと!! どーゆうことよ!」
いきなり、キミの背後で千秋の怒声が。
「ん?」
キミは振り向く。
と、そこには。
水玉模様のビキニを着、透明感ある艶やかな白肌を露出させた千秋が腕で胸を隠していた。
「みんなが水着を着るって言ったから頑張ったのにっ! 着てないじゃない!」
涙目の千秋は頬を紅潮させて怒って、キミを睨んだ。
「ん? ああ……」
キミは思い出した。
千秋をこの小旅行に誘う時にハルが水着を持ってくるとかなんとか……。
キミの横で、栞乃が口に手を当てて笑った。
千秋は腰まで伸びた黒髪を頭の上で軽く巻いたお団子で、上手い具合にピンでとめている。
そのせいか、一度頭にいった目線がどうしようもなく下がって、豊かな胸にいってしまう。
千秋に卑猥な目つきを向けてニタッと頬笑むカエ姉。
「千秋ちゃ~ん? お胸の方がまたまた成長したようで、うふふ……たわたわに実ってるわねぇ」
「もぅカエ姉ってば! やめてよね!! だから着るの嫌だったのに!」
「おんやぁ? じゃあどうして着たのかねぇ? 誰かに見せびらかすつもりかい?」
「そっ、そんなんじゃ……!」
千秋はキミを見て、耳まで真っ赤にして唇をツンと尖らせる。
「見つめんなっ!」
「栞乃に少し分けてあげなさいよ千秋」
「そうなのだ! オッパイほしいのだ!」
栞乃は威張るようにツルッとした胸を張った。
「……アホか」
キミは嘆息して言った。
「てか、なんでカエ姉はウエットスーツ? 海に潜ってウニやサザエでも……密漁とか?」
「あはは、違う違う」
カエ姉は浜辺にあるプレハブ小屋を指さして、
「あそこで水上バイクの貸し出しをやっていて、それでバナナボートを引っ張るのさ」
「カエ姉は免許を持っているのだ! みんなでバナナに乗って海に振り落とされるのだ!!」
キミは沖の方へ目をやった。
海は、手前の方から砂遊びをする子ども達、海に入って泳ぐ人、その向こうに水上バイクが水しぶきを上げて海面を走っている。
と、キミは波打ち際に空気で膨らんだシャチを発見した。
プレハブ小屋の前には浮き輪が積まれている。
どうやら水上バイクの他にも貸し出しを行っているようだ。
「浮き輪のシャチがある。誰かが返却するのを忘れて置いて行ったんだろうな。疲れているけど、遊びたい……けどバナナボートに乗るほど元気でもないし、俺はアレでいいや」
遊び終わったら俺が返しておこう、とキミは言った。
「逃げたのだ。男らしくないのだ」
「それにケチ臭い」
栞乃とカエ姉にじとーっとした目を向けられた。
「いいじゃねーか。行こうぜ千秋っ! ハルは写真でも撮っておいてくれ」
そう言ってキミは波打ち際へ逃げた。
後ろでハルが声を上げた。
「ひっくりに遇うかもしれないよー?」




