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第93話 蒼黒の侵蝕 ―聖杯に取り込まれる創造主―

第93話 蒼黒の侵蝕

―聖杯に取り込まれる創造主―


―少し前に遡る。


―アーク・エクリプス ブリッジ―


「ちょっと……!あの量産機、踏み潰されてしまうわ!」


イリアは、正面モニターを見ていた。


そこに映っているのは、


漆黒の龍。


黒龍と化したディアヴロ。


その巨大な脚の下には、一機のネンドールが押し潰されかけていた。


ギギの乗る量産機だった。


イリア「このままじゃ、あのネンドール……!」


ココル「メテオールも右腕を失っておりますからな……」


「このままでは、二機とも……」


ズシィィィン……!


黒龍が、さらに脚へ力を込める。


ギギ「ぐ……ぉぉぉっ……!」


ギシギシギシ……!


量産機の装甲が悲鳴を上げる。


イリア「……!」


その瞬間。


胸元のペンダントが、


キラリ……


と、蒼く輝いた。


イリア「……え?」


ペンダントの奥から、声が響く。


ユグ『タスケニ……イコウ』


イリア「ユグちゃん……?」


ユグ『イリア……タクミヲ……タスケル』


イリア「でも……どうやって……」


ユグ『…………』


ペンダントが、さらに強く輝く。


パァァァァァッ!!


その光が、イリアの身体を包み込む。


次の瞬間、


イリアの脳裏へ、無数の情報が流れ込んできた。


機体構造。


エネルギー配分。


操縦系統。


そして…


イリア「……これ……!」


ゆっくりと顔を上げる。


その瞳に、迷いはなかった。


イリア「ココル!」


ココル「は、はいですじゃ!」


イリア「ジャワディ!」


ジャワディ「どうされました?」


イリア「二人とも配置について!」


「今から、」


イリアは、拳を握った。


「ユグナイト・オペレーションを開始するわ!」


ジャワディ「ユグナイト・オペレーション……!?」


ココル「……!」


一瞬、ココルの目が見開かれる。


ココル「……おお!」


「そうじゃ!」


「それがありましたぞぉぉぉッ!!」


ココルは、ジュリアが眠る座席を慎重に後方へ移動させ、固定する。


そしてジャワディと共に、それぞれの操作位置へついた。


イリア「D.L.S――起動!」


カチッ!


操舵装置が収納される。


同時に、


シュィィィン……!


イリアの周囲へ蒼いドーム状のD.L.Sが展開した。


『――D.L.S SYSTEM――』


『――YUGKNIGHT OPERATION――』


その瞬間。


ゴォォォォォォッ!!


アーク・エクリプスの船体下部から大量の蒸気が噴き出した。


ジャワディ「船体分離開始!」


ココル「船体部、オートドライブへ移行!」


ガシャン!


ギュイン!


ガキィィン!


巨大な船体が、次々と変形していく。


艦橋。


装甲。


推進機関。


それらが一つの巨大な機体へと再構築されていく。


そして、


ドォォォォォン!!


大地を震わせ、巨大な機動兵器が立ち上がった。


イリア「……!」


その姿を、イリアは静かに見上げる。


イリア「アーク・ユグナイト……完成!」


ギュオォォォォン!!


両眼が蒼く輝く。


イリア「行くわよッ!!」


ドォォォォォン!!


アーク・ユグナイトが大地を蹴った。


巨大な拳が、


黒龍の頭部へ向かう。


バゴォォォォォン!!


黒龍「グォッ……!?」


黒龍の巨体が揺らぐ。


ギギ「……な、なんだぁ!?」


イリア『大丈夫!?』


ギギ「で、でけぇ……」


イリア『そこでおとなしくして!』


イリア『創造主!これを受け取って!』


ユグナイトの手から蒼い光が放たれた。


蒼い光は、メテオール全体を包んだ。


カイザー『エネルギー回復!活動限界値…1500』


匠「……カイザー」


カイザー『どうした?』


匠「ニュートライズは、何回充填出来る?」


カイザー『あと二本分なら…』


『しかし、それだけでは、奴を止められんぞ…』


匠「二本で充分だよ…」


「ニュートライズを最大まで引き上げる」


カイザー『危険すぎる!』


『現在のメテオールは右腕を失っている!』


『それだけではない!』


『聖杯に接触すれば、先ほど以上にD.L.Sへ侵蝕される可能性がある!』


匠「いや、その心配はない。黒龍のコックピットに飛び移るから…」


カイザー『…!尚更危険だ!』


匠は黒龍を見た。


匠「聖杯を破壊せずに、あいつを止めるには……これしかない」


カイザー『…………』


その時。


イリアから通信が入る。


イリア『創造主!』


匠「イリア?」


イリア『私が黒龍を押さえる!』


『だから…』


『思いっきりやっちゃって!私は、あなたを信じるわ!』


匠「……ありがとう」


メテオールが、一気に加速した。


ギュオォォォォン!!


その途中、


匠「……あ」


視線の先。


地面に転がっている一本の巨大な腕。


ヴァルテリオンの腕。


その横では、ギギの量産機が黒龍の攻撃を受け、動けなくなっていた。


ギギ「お、おい!」


「それは俺ンだぞ!」


匠「いや、これは、“返してもらうよ”!」


メテオールが腕を掴む。


ガシィッ!!


そして、


失われた右腕へ接続。


カイザー『接合システム起動』


ギュォォォォォン!!


蒼い光が接続部を走る。


機械構造が再構築され、


ガシィィィン!!


巨大な右腕が完全に固定された。


匠「……動く」


拳を握る。

挿絵(By みてみん)

ギギ「くっ付けやがった…」


メテオールが跳躍する。


背部から、


シュイン!


シュイン!


二本のミラージュ・エッジが展開。


そのまま、黒龍を囲むライジング・ビットへ収納されていく。


ギュィィィィィン……!


エネルギー充填開始。


その瞬間、


黒龍「チョロチョロト……」


「ウルサイ……!」


巨大な尾が振り払われる。


ドゴォォォン!!


メテオールが吹き飛ばされる。


匠「くっ!」


しかし、


ガシィィィン!!


黒龍の身体を巨大な腕が掴んだ。


イリア『邪魔するなぁっ!』


アーク・ユグナイトが、黒龍を背後から羽交い締めにする。


黒龍「グ……ォォォ……!」


イリア『創造主!』


匠「今だ!」


カイザー『ミラージュ・エッジ、充填完了!』


シュイン!


二本の剣がライジング・ビットから抜き取られる。


匠「そこだ……!」


量産機の一撃によって生じた、頭部の亀裂。


その奥。


赤く脈動する光。


匠「聖杯……!」


メテオールが急加速する。


シュンッ!!


一瞬で黒龍の頭上へ。


二本のミラージュ・エッジを構える。


匠「…斬るッ!!」


ズバァァァァァン!!


黒龍の頭部装甲が切り裂かれた。


バキィィィッ!!


漆黒の装甲が崩れ落ちる。


その奥から、


聖杯があるコックピットが露出した。


カイザー『今だ!』


匠「ニュートライズ――注入ッ!!」


ガシュン!!


ガシュン!!


二本のミラージュ・エッジが、黒龍の首元を貫く。


黄金の光が、内部へ流れ込む。


ギュォォォォォォン!!


黒龍「グォォォォォォッ!!」


イリア『創造主!』


匠「いくぞ!」


メテオールが、黒龍の頭部へ飛び移る。


そして、


胸部ハッチが開いた。


匠「……!」


匠は、自らD.L.Sを飛び出した。


その身体が、黒龍の露出した内部へ落下していく。


カイザー『匠ッ!!』


匠「大丈夫だ!」


着地。


目の前に、


聖杯。


それは赤黒い光を放ちながら、脈動していた。


ドクン。


ドクン。


まるで生き物の心臓のように。


匠「……これが」


「三百年間……」


「ジャクラムの憎悪を吸収した聖杯……」


匠は、ゆっくりと手を伸ばした。


そして、


聖杯へ触れる。


その瞬間。


ドクンッ!!


匠「……ッ!?」


脳裏へ、無数の声が流れ込んできた。


憎しみ。


悲しみ。


怒り。


絶望。


無数の感情。


匠「ぐ……ぁ……!」


カイザー『匠! 離れろッ!!』


匠「く……!」


それでも手を離さない。


匠「ジャクラム……」


「お前の憎悪は……」


「俺が…」


その瞬間。


黒龍の身体が、


ピタリ。


と止まった。


イリア『……え?』


ギギ「……何だ?」


カイザー『……まずい』


黒龍の全身から、


シュゥゥゥゥゥ……


蒼い光を混ぜた黒い瘴気が噴き出し始める。


イリア『何……これ……』


ココル『……まさか』


黒龍の頭部。


匠がいる場所から、


大量の瘴気が流れ出す。


カイザー『匠ッ!!』


『離れろッ!!』


匠「……!」


だが、


遅かった。


黒い瘴気が匠の身体を包み込み、亀裂が次第に塞がっていく。


ギュオォォォォォォ!!


匠「ぐ……あぁぁぁッ!!」


イリア『創造主ッ!!』


ルイス『匠ーーーッ!!』


ギギ『おい! 何が起きてんだよッ!!』


ココル『匠の反応が……!』


カイザー『……取り込まれた…』


イリア『……え?』


カイザー『匠が……聖杯に……』


『取り込まれてしまった……』


沈黙。


各機のモニターから、


ゆっくりと、


一つの影が立ち上がる。


その影は、


匠の姿をしていた。


しかし、


その瞳は、


蒼く…


そして、


黒く輝いていた。


匠「…………」


イリア「創造主……?」


匠「…………」


ゆっくりと顔を上げる。


そして、


ニヤリ。

挿絵(By みてみん)

匠「……ぐへへへっ」


「心地よいぞ……」


「この身体……」


イリア「……!」


ルイス「そ、そんな……」


ココル「……匠……」


カイザー『…………』


その声は、


確かに匠のものだった。


だが、


そこに、


匠の意志は存在していなかった。


黒龍が、


ゆっくりと翼を広げる。


ドォォォォォォン!!


赤黒い瘴気と蒼い光が、王国の空を覆っていく。


そして、


黒龍の瞳の奥で、


匠の瞳が、


ゆっくりと開いた。


―つづく-


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