↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
90/100

第90話 最後の想い ―守りたかった未来、奪ってしまった現在―

第90話 最後の想い

―守りたかった未来、奪ってしまった現在―


―モディアス王国・バトル・スクエア-


ビィービィービィービィーッ!!


警報音が、戦場に鳴り響いていた。


エルゼイレの全身から、赤黒い光が噴き出している。


ジャクラム 「ぐ……ぉぉぉぉッ!!」


ドクン…


ドクン…


そのたびに、機体内部のエネルギーが膨張していく。


ジャクラム 「か、身体が……はち切れそうだ……ッ!!」


聖杯に集められた無数の想い。


禁断の果実によって異常な生命基盤へと変質した肉体。


そして、その二つを媒介として流れ込む、黒い意識の力。

すべてが臨界点へ近づいていた。


一方、


メテオールのコックピット。


匠は、静かにエルゼイレを見据えていた。


カシンッ…カシンッ…。


二本のミラージュ・エッジが、メテオールの背部へ収納される。


匠 「カイザー!ミラージュ・ゲートを構築する」


カイザー 『……了解!ミラージュ・ゲート構築、開始!!』


瞬間…、


八基のライジング・ビットが、一斉に飛び出した。


ギュンッ!!


ギュンッ!!


ギュンッ!!


八基のビットがエルゼイレの背後へ回り込み、巨大な円陣を形成する。


そして、


ギュォォォォォォォォンッ!!


猛烈な回転を開始した。


空間そのものが歪む。


円陣の中心へ磁場が集中し、何もないはずの宙に波紋が生まれていく。


ジャクラム 「…な…何をするつもりだッ!!」


パァァァァァン!!


円陣の中心が、弾けた。


そこに現れたのは…


まるで水面のように揺らめく、巨大な空間の門。


カイザー 『ミラージュ・ゲート、完成!』


ジャクラム 「……ッ⁉️」


匠 「行くぞ……!」


メテオールの背部推進機構が、蒼く輝く。


匠 「うぉぉぉぉぉッ!!」


ズゴォォォォォォッ!!


メテオールがエルゼイレへ突進する。


ジャクラム 「止めろォォォッ!!」


エルゼイレが抵抗する。


だが、


メテオールは、その巨体ごと押し切った。


ズズズズズ……!!


二体が、揺らめく空間へ沈んでいく。


ジャクラム 「ぐ……ぬぉぉぉぉッ!!」


そして…、


二機は、完全に空間の中へ消えた。


―モディアス王国・遥か上空宙域-


静寂。


無数の星々が輝く宇宙。


その中で、空間が大きく歪んだ。


ジュォォォォン!!


歪みから、メテオールとエルゼイレが吐き出される。


二機は、王国遥か上空の宙域へ転移していた。


カイザー 『匠……活動限界値、現在――3000』


匠 「…3000……了解!」


一拍。


匠 「D.L.S.リミッター解除」


ブォォォォォォン!!


メテオールの全身が蒼から、


黄金へと変わっていく。


カイザー 『ニュートライズ・バインド!!』


ビカァァァァァァッ!!


これまでミラージュ・エッジによってエルゼイレへ送り込まれていた黄金の光が、一斉に輝いた。


光と光が繋がる。


巨大な魔法陣のような拘束構造が、エルゼイレを包み込んだ。


ジャクラム 「……な、何だ……これは……」


身体が動かない。


聖杯の力さえ、封じ込められていく。


匠 「ジャクラム……」


メテオールが、ゆっくりと拳を構える。


匠 「まだ、お前の“想い”を全部受け取ってない」


「だから…」


「もう少し待ってろ」


カイザー 『匠……必ず……帰って来い』


匠 「ああ…行くぞ!」


黄金のメテオールが、エルゼイレへ突進する。


その拳が…、


挿絵(By みてみん)


胸部中央。


突き抜けなかった光へ向かって放たれた。


ギャッシュゥゥゥン!!


黄金の一閃が、エルゼイレの胸部を貫く。


その先にあったのは…、


禁断の果実。


ジャクラムの生命基盤そのものとなった、果実のコア。


ジャクラム 「ぐぉぉぉぉぉぉッ!!」


世界が白く染まる。


ヴゥゥゥゥン……


プツン…


ジャクラムの視界から、すべての光が消えた。


―遥か昔・モディアス王国-

ジャクラムは、静かに立っていた。


そこは…、


かつて自分が生きていた王宮だった。


ジャクラム 『…………』


目の前に広がる光景。


それは、ジュネイを失った後の王宮。


そこでは、ジャスパが無人兵器の研究を続けていた。


ガシャァァン!!


ジャスパ 「くそぉッ!!」


作業台を叩く。


ジャクラム 『……ジュネイを失っても尚、“人形”の研究か』

『相も変わらぬ……愚かな男よ』


だが…


ジャスパの口から漏れた言葉に、ジャクラムの表情が変わる。


ジャスパ 「何故……上手くいかないんだ……」


「皆が……」


「ジャクラムが……」


「王国のために、血を流しているというのに……」


ジャクラム 『…………』


ジャスパ 「これでは……ジュネイの願いも叶わぬではないか……」


ジャクラム 『……ジュネイの……願い?』


ジャスパは膝から崩れ落ちる。


ジャスパ 「神よ……」


「もう……これ以上、無駄な血を流させないでくれ……」


「皆から……平和を奪わないでくれ……」


その傍らには…、


一人の少女がいた。


幼いジゼル。


彼女は、人形を抱えながら父を見つめている。


ジゼル 「あー……また父上が泣いてるぅ」


「そんなに泣いていると、母上が起きちゃうよ~」


ジャスパ 「……ああ」


「そうだね……」


「母上のためにも……」


「一生懸命頑張っている叔父さん達のためにも……」


「泣いてばかりはいられないな」


ジャクラム 『兄上……』


拳を握る。


その時だった。


ジャクラム 『……?』


ジゼルが、こちらを見た。


誰もいないはずの場所。


誰にも見えるはずのない精神体。


なのに…、


ジゼルは、笑った。


そして、抱えていた人形を高く掲げる。

挿絵(By みてみん)

ジゼル 「…………」


ジャクラム 『ジゼル……?』


『私が……見えるのか……?』


ジゼルは答えない。


ただ、笑っていた。


ジャスパ「ジゼル、どうしたんだい?」


ジゼル「こうしてると、皆が幸せになるような気がして…」


その笑顔を見つめながら…、


ジャクラムの頬を、一筋の涙が伝う。


ジャクラム 『……すまぬ……』


『ジゼル……』


『お前を……手に掛けてしまった私を……』


声が震える。


ジャクラム 『……許してくれ』


カシャァァン!!


その時…、


中庭から、剣が落ちる音が響いた。


ジャクラムが振り向く。


そこにいたのは…、


幼きジェイド。


そして…、


剣を構える、自分自身だった。


ジャクラム 『…………』


ジャクラム 「踏み込みが甘いぞ、ジェイド!」


「そんなことでは、敵軍にやられてしまうぞ!!」


幼いジェイド 「……はいっ!!」


ジャクラム 「さあ、もう一度だ!!」


剣を構え直すジェイド。


その姿を見つめながら、ジャクラムは静かに呟いた。


ジャクラム 『……そうだった』


『私は……』


記憶が蘇っていく。


ジュネイを失った。


だからこそ…、


残された者たちを守ろうとした。


兄を支えようとした。


ジェイドを鍛えた。


国を守ろうとした。


未来を守ろうとした。


ジャクラム 『私は……』


拳が震える。


ジャクラム 『ただ……皆を守りたかっただけなのだ』


『二度と……』


『大切な者を失いたくなかった』


その瞬間…、


ドクン…!


胸の奥。


禁断の果実のコアが脈動する。


しかし…


今までとは違った。


赤黒い光の中に…


ほんの僅かな、


黄金の光が混じっていた。


ジャクラム 『…………』


『私の……本当の願いは……』


顔を上げる。


ジャクラム 『世界を書き換えることではない』


『王位を奪うことでもない』


『兄上を憎むことでもない……』


涙が、次々と頬を伝う。


ジャクラム 『ただ……』


『もう二度と……』


『大切な者を……』


『失いたくなかっただけなのだ……』


その言葉に呼応するように…


周囲の景色が黄金に染まっていく。


だが、その直後。


ザザザザザザッ!!


空間に黒いノイズが走った。


ジャクラム 『……ッ!?』


記憶が崩れていく。


笑顔。


涙。


怒り。


憎しみ。


すべてが混ざり合う。


黒い意識が叫ぶ。


『守りたい』


その言葉を、


【奪われたくない】

へ変える。


『失いたくない』


その願いを、

【死なせなければいい】

へ変える。


『自由に生きてほしい』


その願いを、

【自由など与えなければいい】

へ変える。


そして…、


【世界を書き換えればいい】


ジャクラム 「……違うっ!!」


黒い影が、背後からジャクラムを覆う。


ジャクラム 「やめろッ!!」


「私は……そんなことを望んだのではない!!」


黒い意識 『でもぉ…』


『あなたは、そう願ったでしょう?♡』


ジャクラム 『…………ッ!!』


黒い意識 『もう誰も失わない世界』


『誰もあなたから奪えない世界』


『それが、あなたの望みでしょう?♡』


ジャクラム 『違うッ!!』


その時…!


黄金の光が差し込んだ。


ジャクラム 『……?』


振り返る。


そこに立っていたのは、


黄金の光を纏った匠だった。


匠 「だったら……」


ジャクラム 『……創造主……』


匠 『お前の最後の想いは、もう分かった』


一歩、近づく。


匠 『お前は、世界を変えたかったんじゃない』


『守りたかったんだ』


ジャクラム 『…………』


匠は、手を差し出す。


匠 『だったら…』


『その願いを、黒い意識に奪わせるな!!』


ジャクラムは、その手を見る。


長い沈黙。


やがて、


ジャクラムは拳を握った。


ジャクラム 『…………創造主』


匠 『…』


ジャクラム 『私は……』


声が震える。


一筋の涙が落ちた。


ジャクラム 『……どうすれば、よかったのだ?』


匠は答えなかった。


ただ…


真っ直ぐにジャクラムを見つめた。


そして二人の間に、黄金の光が広がっていく。


それは、


過去を消すための光ではない。


罪を無かったことにする光でもない。


失った者を、取り戻す光でもない。


ただ…


過去を正しく受け止めるための光。


ジャクラムの胸に宿った黄金が、ゆっくりと広がっていく。


ジャクラム 『…………』


『ジュネイ……』


『兄上……』


『ジェイド……』


『ジゼル……』


そして…


ジャクラム 『…す…すまなかった…』


その言葉と共に…


黒い影へ、亀裂が走った。


ピシッ……


ピシピシッ……


黒い意識 『……ッ!?』


匠 「ジャクラム!」


「今だ!!」


ジャクラム 「うぉぉぉぉぉぉッ!!」


黄金の光が、世界を包む。


―現実世界 遥か宙域-


ドクン…


ドクン…


エルゼイレの胸部が、大きく脈動した。


カイザー 『……匠!?』


エネルギー反応が変化している。


赤黒かった波長の中に、


微弱な黄金反応。


カイザー 『これは……』


その瞬間、


エルゼイレの胸部から、

バァァァァァン!!

巨大な光が噴き出した。


ジャクラム 「ぐ……ぉぉぉぉッ!!」


しかし、その光の中には、

まだ黒い力が残っている。


カイザー 『匠!』


『まだ終わっていない!!』


『黒い意識が、抵抗している!!』


黄金のメテオールが構える。


匠 「……分かってる」


その瞳が、蒼く輝く。


匠 「だったら…」


「最後まで、受け止める!!」


…その瞬間。


遠く離れた海底。


巨大な大蛇の石像。


その両眼が…、


カッ!!


今度は、はっきりと輝いた。


そして


ピシッ…ピシッ…


石像に亀裂が入る。


海底の闇の中で、


何かが、


ゆっくりと、


目を覚まそうとしていた。


―つづく―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。