↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
85/100

第85話 解析者の眼 ―蒼き相棒が暴く、神魔の構造―

第85話 解析者の眼

―蒼き相棒が暴く、神魔の構造―

―モディアス王国・バトルスクエア内-


赤黒い瘴気が渦巻く戦場で、二体のエルゼイレ・ジャネスが同時に動いた。


「“弱点”をひとつずつ暴くだと……?」


ジャクラムの声には、嘲笑と僅かな苛立ちが混じっていた。


対する匠は、メテオール・リンクスのコックピットの中で静かに息を吐く。


「……ああ」


蒼い双眸が、二体のエルゼイレを捉える。


挿絵(By みてみん)


「お前は強い」


「…………」


「だけど、“強い”ことと、“無敵”であることは違う」


匠は両手を強く握った。


「なら、俺はお前の弱点を一つずつ見つけて、全部潰す」


「くくく……」


ジャクラムが笑う。


「面白い……実に面白いぞ、創造主!」


六枚の翼が大きく開く。


「ならば、見抜いてみろォッ!!」


ゴォォォォォッ!!


二体のエルゼイレから、赤黒い瘴気が爆発的に噴き出した。


左右から挟み込むように、二体が同時に突進する。


「カイザー!」


『了解』


D.L.S.内部に、二体のエルゼイレの姿が瞬時に拡大表示された。


右。


左。


翼の角度。


大鎌の軌道。


瘴気の濃度。


すべてが数値化されていく。


『匠。本体は右側だ』


「了解!」


メテオール・リンクスが右へ身体を捻る。


「左は……任せる!」


『承知した』


その瞬間…、


八機の《ライジング・ビット》が一斉に展開した。


シュシュシュンッ!!


蒼い光が戦場を駆け抜ける。


メテオールは本体へ…、


ライジング・ビットは分身体へ…。


「行くぞォッ!!」


ギィィィン!!


蒼い双剣と赤黒い大鎌が激突した。


同時に、空中では八機のビットと分身体が激突する。


まるで二つの戦場が同時に生まれたかのようだった。


―アーク・エクリプス ブリッジ内-


巨大戦艦のブリッジでは、イリアが操舵を握ったまま戦況を見つめていた。


「解析しながら……戦ってるってこと?」


モニターには、無数のデータが流れている。


ココルは腕を組みながら頷いた。


「うむ…」


「しかし……本当にそんなことができるの?」


「匠だからこそ、じゃ」


ココルの視線が戦場へ向く。


「匠には、設計図を見ずともネンドールを寸分違わず組み上げる技術がある」


「…………」


「じゃが、それだけではない」


ココルは続ける。


「奴は、組み上げる際に、その構造そのものを理解しておる。どこに負荷が集中し、どこを改良すれば性能を最大限に引き出せるのか……無意識のうちに把握してしまう」


イリアは驚いたように目を見開いた。


「つまり……」


「逆もできるって事?」


ココルはモニターに映るエルゼイレを指差した。


「創られたものを見れば、頭の中で分解できる」


構造。


機構。


エネルギーの流れ。


攻撃の癖。


弱点。


「そして今のカイザーは、その能力を匠の戦闘補助へと昇華させておる」


「……創造主の“眼”を、カイザーが代わりに持ってる?」


「いや…」


ココルは首を横に振った。


「“眼”だけではない」

僅かに笑う。


「匠とカイザーは、互いの思考を補完する唯一無二の“相棒”なのじゃ」


「……相棒」


イリアは、その言葉を呟いた。


そして胸元へ手を伸ばす。


そこには、淡く蒼く光るジゼルのペンダント。


「……ユグちゃん」


小さな声で呼び掛ける。


『ダイジョウブダヨ……』


イリアは微笑んだ。


「……うん」


そして再び戦場を見る。


「創造主……絶対に勝って」


―バトル・スクエア-


「ぐっ……!」


メテオールが大鎌を弾き返す。


しかし、すぐさま反対側からもう一体が襲い掛かった。


『匠!』


『右後方!』


「分かってる!」


ガギィンッ!!


メテオールは振り向きざまに双剣を滑らせ、大鎌を受け流す。


その瞬間…、


ピピッ…


ライジング・ビットが蒼く点滅した。


『第一解析結果』


カイザーの声が響く。


『二体のエルゼイレは、完全な独立個体ではない』


匠の瞳が鋭くなる。


「……やっぱりな」


『分身体への攻撃に対して、本体側のエネルギー反応が微弱に変動している』


「つまり、二体は完全に別々じゃない」


『肯定』


匠は笑った。


「フッ…それじゃぁ、もっと揺さぶってやる!」


メテオールが急加速する。


「来いッ!!」


エルゼイレが二体同時に追う。


しかし…、


「遅い!」


シュンッ!!


メテオールが消えた!!


ジャクラムの瞳が見開かれる。


「何ッ!?」


次の瞬間…、


メテオールはエルゼイレの死角へ回り込み、双剣を振り抜いた。


バシュッバシュンッ!!


肩を掠める。


「……!」


だが、傷口は瞬時に再生した。


ジャクラムが笑う。


「無駄だッ!」


「…………」


匠は攻撃を止めた。


「再生速度……異常だな」


『解析中』


「なら……」


匠は再びエルゼイレへ物凄いスピードで斬り掛かる。


一撃。


二撃。


三撃。


しかし、あえて致命傷を狙わない。


肩。


腕。


翼。


脚。


装甲。


同じ箇所を微妙に変えながら攻撃する。


「何がしたいッ!?」


ジャクラムが吠える。


「貴様ぁ、我を弄んでいるのかッ!!」


「違う…」


匠は冷静に答えた。


「調べてるんだ」


「……何?」


「その機体が、どこまで再生できるのか」


ジャクラムの表情が変わった。


「…………」


匠は続ける。


「傷が塞がる速度は一定じゃない」


「…………!」


「攻撃を受けた場所によって、再生に僅かな差がある」


カイザーが即座に反応する。


『解析を更新』


D.L.S.の画面に、エルゼイレの内部構造が立体表示される。


赤黒いエネルギーが全身を巡っている。


だが…、


一点だけ。


胸部深くに、異常なエネルギー集中が存在していた。


「そこか……」


匠の声が低くなる。


ジャクラムが笑う。


「何かを見つけた“つもり”か…?」


匠は答えない。


その代わり、ライジング・ビットが一斉に動いた。


シュンッ!! シュシュンッ!!


八機が四方八方へ散開する。


「カイザー!」


『解析を継続する』


「頼む!」


「……!」


ジャクラムが翼を大きく羽ばたかせた。


無数の赤黒い羽が飛び交う。


しかしライジング・ビットは、それぞれが独立した意思を持つように羽を回避していく。


そして…、


八方向から同時にエルゼイレへ照準を合わせた。


「……何なんだ?」


ジャクラムの笑みが消える。



「その小型機…は、…」


匠は静かに呟いた。


「お前の動きは、もう覚えた」


『解析率――六十七パーセント』


「まだだ」


匠は双剣を構える。


「もっとだ」


エルゼイレの翼が動く。


「もっと速く」


大鎌が振り上がる。


「もっと深く…、」


メテオールの蒼い光が、一段階強くなる。


「お前を理解する」


その瞬間。


『匠…』


カイザーの声色が変わった。


「……どうした?」


『重要な解析結果を検出』


D.L.S.に、新たな情報が表示される。


二体のエルゼイレ。


その内部構造。


匠の表情から笑みが消えた。


「……そういうことか」


『肯定』


「ジャクラム……」


メテオールが双剣を下段に交差して構える。


「お前の“再生”も」


蒼い粒子が全身を駆け巡る。


「二体の“存在”も」


ライジング・ビットが一斉に旋回を始める。


「そして…、」


匠の瞳が鋭く光った。


「お前の“因果改竄”さえも」


ジャクラムの顔から、初めて明確な動揺が浮かんだ。


「……貴様ぁ」


匠は言い放つ。


「もう、俺には通用しない」


『解析率――八十パーセント』


「…………」


『さらに上昇中』


ジャクラムが大鎌を握り直す。


「ならば……」


赤黒い瘴気が爆発する。


「解析する暇など与えなければよいッ!!」


二体のエルゼイレが同時に咆哮する。


「行くぞ、カイザー!」


『了解!!』


「ここからが…、」


メテオールの背部推進機構が最大出力へ移行。


ヴォォォォォォン!!


「俺たちの反撃だッ!!」


シュンッ!!


蒼い流星が、戦場から消えた。


そして次の瞬間…。


二体のエルゼイレの間を、無数の蒼い閃光が駆け抜ける。


ジャクラムが振り返る。


「……速いッ!!」


ライジング・ビットが、八方向から一斉に包囲する。


その中心で、メテオール・リンクスが蒼い双剣を構えた。


「ジャクラム…」


「…………」


「お前の機体が、どれだけ強いのかは分かってる」


「…………」


「だからこそ…、」


「俺は、その強さを真正面から超える!!」

挿絵(By みてみん)

蒼き流星が再び加速した。


赤黒き神魔を打ち破るための、本当の戦いが始まった。


―つづく-


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。