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第64話 死蜘蛛の舞 ― 歪んだ笑みと狂気の銃口 ―

第64話

死蜘蛛の舞 ― 歪んだ笑みと狂気の銃口 ―

――モディアス王国・上空――

空が裂けていた。

爆炎が渦巻き、黒煙が戦場を覆う。  

既に量産型ネンドール部隊の殆どが戦線離脱し、

敵のデクノイドも壊滅状態。  残る主戦力は――わずか。

《エンプレス》。  

《ヴァルテリオン》。  

《シルヴィアンジュ》。

そして、敵側の中核――  《ヴァジェラ》、

《マデュエリ》。

激戦が続く空域の一角。

紅い機影シルヴィアンジュが、紫黒の軌跡と交錯していた。

 ギィィィィン!!

双剣と双扇がぶつかり、火花が弾け飛ぶ。

妖艶な女性型ネンドール《マデュエリ》。  

その両手には、巨大な紫黒色の扇が握られていた。

ヴゥーーーーーン

ババジャは、王国の上空に再び障壁で覆われるのを見た。

「くぅ…障壁が再起動されてしまったわい。」

「ガガよ!早うコイツらを片付けてしまうぞい!」

ジー…ジー…。

ヴァジェラへ通信するが繋がらない。

「…?故障したのかの?ぬぬぅ…こんな時に!」

アンジュ「隙あり!!」

シルヴィの双剣が唸る!

しかし、マデュエリの左右の扇が双剣を払う。

ババジャ「ええい!忌々しい小娘が…!じゃが…」

不気味な笑い声。

通信モニター越しに、ババジャが歪んだ笑みを浮かべる。

「お前さんに“死の舞”を見せてやろうかのぉ……」

マデュエリが、ゆっくりと舞い始める。

まるで踊り子。  

しかし、その舞は死を招く呪術。

「ほれっ……!」

 バサァッ!!

巨大扇が開かれる。

「ほれぇぇっ!!」

次の瞬間――

無数の刃が放たれた。

 シュガガガガガガガッ!!

紫黒のナイフ群。  

暴風のような弾幕。

「ッ――!」

アンジュの瞳が鋭く細まる。

シルヴィアンジュが双剣を高速回転させ、飛来する刃を次々と叩き落としていく。

火花。

金属音。

高速機動。

だが――数が多すぎる。

「あーもうっ!!」

「鬱陶しいィッ!!」

アンジュが叫ぶ。

シルヴィアンジュが急加速。  一気に間合いを詰めた。

 ガッシィィィン!!

双剣と双扇が正面衝突する。

互いの顔が至近距離でぶつかる。

「ご老体の割には、しぶといわねぇ……!」

アンジュが睨む。

だがババジャは、不気味に笑うだけだった。

「ヒィッヒッ……」

「舐めくさっておると、痛い目を見るぞえ……小娘……」

その時、

ババジャの口元が、ゆっくり吊り上がった。

「…種は、蒔かれた」

アンジュの背筋に寒気が走る。

「『死蜘蛛の舞・縛雷陣』」

瞬間。

先ほど撃ち落としたはずの無数のナイフが、空中で一斉に紫光を放った。

「なっ――!?」

ナイフ同士が光の糸で繋がっていく。

空中に形成される巨大な蜘蛛の巣。

その中心にいたのは――

《シルヴィアンジュ》。

「しまっ――」

遅い。

 バチィィィィッ!!

紫電が炸裂した。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

挿絵(By みてみん)

電撃がシルヴィアンジュを拘束する。

蜘蛛の巣状のエネルギーが四肢へ絡み付き、機体の自由を奪っていく。

 ビリビリビリィィィッ!!「ぐっ……!!」

アンジュが歯を食い縛る。

(くそっ……!!)

全身が痺れる。

操縦桿が上手く握れない。

さらに――

追撃。

「ヒィッヒッヒッ!!」

「終わりじゃぁ!!」

マデュエリの双扇が振り下ろされる。

 ドバァァァッ!!

雷撃が再び炸裂した。

「がぁぁぁぁぁっ!!」

アンジュの悲鳴。

シルヴィアンジュが大きく仰け反る。

(動けない……!!)

その時だった。

 ガキィィィン!!

突如、下方から激しい衝撃音が響く。

ババジャが目を見開いた。

「なにぃっ!?」

そこにいたのは――

蒼銀の獅子。

《ヴァルガレオン》。

咆哮を上げながら飛来した獣形態ヴァルガレオンが、マデュエリの杖へ牙を突き立てていた。

 ギギギギギィィィッ!!

超鋼の牙が、杖を噛み砕いていく。

「や、やめ――」

 ガリリッ!!

 バキィィィン!!

杖が、真っ二つに砕け散った。

同時に、

王都全域へ広がっていた禍々しい波状エネルギーが消滅していく。

そして、ヴァルガレオンは素早い動きで“縛雷陣”を黄金の爪で裂いた。

蜘蛛の巣状は消え去り、シルヴィの拘束が解かれた。

アンジュの瞳が見開かれる。

「……ルイス!!」

ヴァルガレオンが着地する。

その体躯から、ルイスの声が響いた。

「すみません!!」

「お待たせしました!!」

蒼銀の獅子が戦場に帰ってきたのだ。

――アラベスク・マウザー艦内・煌武館道場――

 ドサッ!!

兵士が倒れる。

匠は肩で息をしながら、周囲を見渡した。

(キリがない……)

道場には、気絶した兵士や門下生が何十人も倒れている。

だが、外からはまだ足音が聞こえてきていた。

イリアも息を切らしている。

(このままだと……)

その時、

『タクミ!!』 『クロイネイロガ、キエテイクヨ!!』

ユグの声。

「……え?」

次の瞬間だった。

今まで襲い掛かってきていた兵士達が、次々と動きを止めた。

「……あれ?」 「俺は……何を……?」

「どうして剣なんか……」

虚ろだった瞳に、正気が戻っていく。

匠が目を見開く。

(精神操作が……解けたんだ!)


パァーンッ!!


イリアが即座に前へ出て、掌を鳴らした。


「ほら!!」

「ボサッとしてないで動きなさい!!」

凛とした声が道場へ響く。

「負傷者の救護!!」 「倒れてる人を医務室へ運んで!!」

「急いで!!」

「「は、はいっ!!」」

 兵士達が慌てて動き始め、道場に匠とイリアと王女だけとなった。

混乱していた空気が、一気に変わっていった。

匠は思わず息を吐く。

「……助かった」

だが…

「…⁉️」

その瞬間、ほんの一瞬“黒い意識”を感じた!

『タクミ!!』

『ウシロッ!!』

「――っ!!」

匠が振り向く。

そして、

「きゃぁっ!!」

ジュリアの悲鳴。

「王女!!」

「ジュリア!!」

そこにいたのは――

ガガだった。

いつの間にか背後へ回り込んでいた男が、ジュリアを後から抑え、銃口を突き付けていた。

ジュリアの喉元へ、冷たい銃口が押し当てられる。

挿絵(By みてみん)

空気が凍った。

匠の目が鋭く細まる。

イリアも動きを止める。

ガガは、ゆっくりと笑った。

「ふふふ……」

狂気混じりの笑み。

「動かない方がいい……」

カチリ…

その指が、引き金へ掛かる。

(勝った……)

ガガの口元が吊り上がる。

(私の……勝ちだぁ……)

ジュリアの怯えた瞳。

匠の拳が、ギリッと音を立てた。

戦場の空気が、再び張り詰める。

――つづく――


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