表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
58/63

第58話 蒼銀の獅子 ― 砕けぬ誇りと、静観する赤い爪 ―

第58話

蒼銀の獅子 ― 砕けぬ誇りと、静観する赤い爪 ―


――モディアス王国・上空――

轟音が、空を埋め尽くしていた。

爆炎。

黒煙。

交錯する光弾。

王国上空では、既に全面戦争が始まっている。

量産型ネンドール部隊が必死に防衛線を維持する中、無数のデクノイドが黒い津波のように王都へ押し寄せていた。


その最前線。


コックピットの内部で、ギギが狂気じみた笑みを浮かべる。


「ヒャハッ!!」


両腕を広げる。


「さぁて――いっちょ遊んでやるかァ!!」


次の瞬間。


大量のデクノイド群が、一斉に王都へ向かって加速した。


黒い群れ。


空を覆い尽くす圧倒的物量。


だが――


「行かせない」


その前へ、蒼銀の閃光が割って入る。


蒼銀の装甲。

重厚なシルエット。

巨大な大鎚を構えた、新たなるネンドール。


 《ヴァルテリオン》。


そのコックピット内で、ルイスが真っ直ぐ前を見据えていた。


「お前の相手は……私だ」


静かな声音。


だが、その奥には燃え上がる怒りがあった。


ギギが、愉快そうに目を細める。


「へぇ~? 俺と遊んでくれんのかよ、クソガキィ!!」


ヴァルテリオンが、大鎚レオンハンマーを構える。


ルイスの瞳が鋭く細まった。


「――《獅子大鎚剛打術》」


力強く、言い放つ。


「お前に叩き込んでやる!!」

挿絵(By みてみん)


その瞬間。


ギギが爆笑した。


「バァーカ!!」


周囲を埋め尽くすデクノイド群を指差す。


「こんだけ囲まれて、そんなデカいトンカチでどう戦うっつうんだよっ!!」


指を鳴らす。


「やれ!! デクノイドォ!!」


無数の異形兵器が、一斉にヴァルテリオンへ襲い掛かった。


四方八方から迫る爪。

砲撃。

普通なら回避不能。


だが。


ルイスは、一切動じなかった。


「バカは、お前だ」


ヴァルテリオンが、《レオンハンマー》の柄の末端を握る。


そして――回した。


ゴォォォォォォッ!!


巨大な大鎚が、常識外れの速度で高速回転を始める。


ヴァルテリオンは、周囲から迫る攻撃を弾き返す。


蒼銀の残光が空間を裂いた。


ギギが眉をひそめる。


「……は?」


次の瞬間だった。


ヴァルテリオンを中心に、蒼い衝撃波が解き放たれる。


 ドォォォォォンッ!!


「なっ――!?!?」


ギギの目が見開かれた。


超高速回転によって生み出された念導エネルギー波。


それは周囲一帯を巻き込む破壊の奔流となり、突撃してきたデクノイド群を一瞬で粉砕した。


装甲が砕け散る。

異形の体躯が潰れる。

黒い破片が、空中へ爆散していく。


「ま、マジかよぉっ!!?」


ギギの声が響く。


ヴァルテリオンが、一歩前へ出た。


蒼銀の双眸が、ギギを射抜く。


「今度は――お前が砕かれる番だ」


その姿はまるで。


怒れる白獅子そのものだった。


――


一方。


少し離れた空域では。


《シルヴィアンジュ》が、紅い軌跡を描きながら戦場を駆け抜けていた。


アンジュは、双剣を縦横無尽に振るいながら、デクノイドを次々と斬り裂いていく。


爆発。


閃光。


敵機の残骸が、燃えながら地上へ落下していった。


その最中。


アンジュは、遠くで戦うヴァルテリオンを見ていた。


「へぇ……」


口元が、僅かに緩む。


「やるじゃない、ルイス」


以前の怒りと悲しみに満ちていた王子ではない。


今のルイスには、確かな“戦士”としての覚悟があった。


だが、その瞬間。


「よそ見しおってぇ!!」


不気味な怒声。


妖艶な女性型ネンドール《マデュエリ》が、黒い杖を振るう。


アンジュは即座に双剣で受け流した。


 ギギギギィィィンッ!!


火花が散る。

挿絵(By みてみん)



通信モニターの向こうで、ババジャが不気味に笑っていた。


「余裕のつもりかえ、小娘ぇ?」


アンジュは、ため息混じりに肩をすくめる。


「お年寄りには優しくしなさいって教わってるのよねぇ」


ニヤリと笑う。


「アンタは別だけど」


「ほぉぉぉんに憎たらしい娘じゃ……!」


ババジャの顔が歪む。


だが次の瞬間。


老婆は、不意に目を細めた。


「……ほんに、“あの”小娘がよう大きくなったわい」


アンジュの動きが止まる。


「……え?」


眉をひそめる。


「何、それ」


ババジャは、意味深に笑っていた。


「あの戦争でよく生き残れたのぉ…。」


アンジュの胸がざわつく。


「……私の何を知ってるの?」


声が低くなる。


「教えなさいよ!!」


だが。


ババジャは、ヒヒヒと不気味に笑うだけだった。


「さぁのぉ……」


その笑みはまるで。


過去の全てを知っている者の顔だった。


――


さらに上空。


漆黒の巨兵ヴァジェラの前では。


《エンプレス》が、圧倒的な武技を見せていた。


龍節棍が唸る。


高速連撃。


円舞のような棍術。


周囲のデクノイドが、次々と破壊されていく。


爆炎が空を染める中、アイザックは軽く息を吐いた。


「……三十体は倒したかな」


そして。


目の前を見据える。


そこには。


腕を組んだまま、一歩も動かない《ヴァジェラ》がいた。


黒き巨兵。


不気味なほど静かな佇まい。


アイザックの瞳が細くなる。


(大軍勢を率いて来たにも関わらず……)


違和感。


(“大将”が動かない……?)


余裕なのか。


それとも――やはり“スコープ”が狙いなのか。


直感が、警鐘を鳴らしていた。

挿絵(By みてみん)



その時だった。


近くにいた量産型ネンドールのパイロットが、震えた声を漏らす。


『な、なんだ……この圧力……』


『息が……苦しい……』


空気が重い。


まるで、


そこだけ世界が沈み込んでいるかのようだった。


だが、


アイザックだけは、笑っていた。


「なるほど……」


静かに呟く。


「ようやく、本気を出してくれるのかな?」


エンプレスが、ゆっくり構えを取る。


「なら――こちらも」


その瞬間。


ヴァジェラが。


ゆっくりと腕組みを解いた。


ゾクリ――。


戦場全体へ、悪寒が走る。


災厄が…。


今まさに、目を覚まそうとしていた。


しかし、


アイザックは、一歩も引かない。


むしろ、楽しげに微笑む。


「では、こちらもちょこっと本気を出してみよう……!」


アンジュが、敵の攻撃を捌きながら叫ぶ。


「はぁ!? いきなり奥義!?」


アイザックは静かに目を閉じた。


「――奥義」


エンプレスの全身から、翠色の念導光が噴き上がる。


空間が震える。


次の瞬間――


「《龍昇虎巌》」


ブゥゥゥゥゥゥンッ――!!


エンプレスの背後に、巨大な龍と虎の形をしたオーラが浮かび上がった。


さらに、


エンプレス本体から分離するように、翠色のエネルギー分身体が形成される。


『龍虎の型』


龍と虎。


本体と幻身。


空全体が、巨大な武の気配に包まれた。


アイザックが、静かに笑う。


「さあ――いくよ」


その瞬間、


エンプレスが、消えた。


――つづく――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ