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第20話 聖杯 ― “魔導器”のありか… ―

第20話

聖杯 ― “魔導器”のありか… ―

――モディアス王国・戦闘区域――

リンクスが放った一撃は、確かに必殺だった。

蒼き弓から放たれた光の矢。

それは一直線に、空間そのものを裂くような軌道を描き――

ゲネル・ジャネスの核へと突き進んでいた。

回避は不可能。

防御も不可能。

必中。

誰が見ても、そう確信する軌道だった。

だが――

届かなかった。

ズバァンッ‼

激しい火花。

轟音。

光の矢は、何かに弾き飛ばされ、虚空の彼方へと霧散する。

「……なっ……⁉」

何が起きたのか、理解が追いつかない。

煙がゆっくりと晴れていく。

その向こう。

そこに――

一機のネンドールが静かに降り立っていた。

挿絵(By みてみん)

漆黒。

闇よりも深い黒。

光を拒むように磨き上げられた装甲は、まるで周囲の光すら吸い込んでしまうかのようだった。

ゲネルのような禍々しさはない。

だが――

そのフォルムには、別種の異様さがあった。

無駄のない装甲。

無駄のない関節。

無駄のない機体構成。

それは美しさではない。

理性の結晶。

ただ一つ。

“戦うためだけに設計された機体”

そんな印象を与える存在だった。

その瞬間。

リンクスのセンサーが警告音を鳴らす。

《 WARNING 》

《 危険度:測定不能 》

「……測定不能……?」

数値が出ない。

脅威レベルの算出が――

システムそのものに拒否されている。

コックピット内の空気が、急に冷たくなる。

アンジュ

「……あれ……」

シルヴィのモニター越しに、その機体を見つめる。

「……嫌な感じがする……」

直感だった。

だが、その直感は

間違いなく――

“危険”を告げていた。

その時――

静かな通信が、戦場に割り込む。

ガガ

「――お初に御目にかかります」

低い声。

整いすぎている声。

感情の起伏が一切ない。

それは戦場には似つかわしくないほど、静か

な声だった。

挿絵(By みてみん)

「私は、ガガ」

「このギギの、兄にあたる者です」

ギギ

「……兄貴?」

驚きと苛立ちが混じる声。

ガガは続ける。

「そして、この機体は――」

一拍。

「ヴァジェラ・ジャネス」

黒い機体が、ゆっくりと頭部を上げる。

赤い光が灯る。

まるで獲物を認識した捕食者のように。

「以後、お見知りおきを」

名乗りは、あまりにも淡々としていた。

ギギ

「……そんなの聞いてねぇぞ?」

触手が苛立つように蠢く。

「その機体……どっから出てきやがった?」

ガガ

「お前は、何でも欲しがるからね」

責めるでもない。

諭すでもない。

ただ事実を述べる声音。

「だから――」

「秘密裏に、作っておいたのさ」

ギギは舌打ちをする。

だが、それ以上は言わない。

その沈黙が――

二人の力関係を物語っていた。

匠は小さく呟く。

「……あの機体……」

喉が乾く。

「正直……ヤバいかも……」

冗談のような言葉。

だが。

背中には冷たい汗が流れていた。

リンクスの警告音は、まだ鳴り続けている。

《 WARNING 》

《 WARNING 》

アンジュは何も言わない。

ただ。

ヴァジェラを見据えていた。

ガガ

「さて……」

ヴァジェラは一歩も動かない。

だが。

その場に立っているだけで。

戦場の主導権は――

完全に彼の手中にあった。

「今日は、ここまでにしておこう」

淡々とした声。

「君達と、無理に事を構えるつもりはない」

その視線が、ゆっくり動く。

リンクスへ。

いや――

匠へ。

「――ところで」

一瞬の沈黙。

「一つ、聞きたいことがある」

「……?」

ガガ

「“魔導器”について」

「何か、心当たりはないかな?」

「……魔導器?」

聞き返した、その言葉。

その瞬間――

アンジュの肩が、わずかに強張った。

沈黙。

それは否定でも肯定でもない。

だが。

ガガは見逃さない。

ガガ

「……なるほど」

「そこのお姉さんは」

「知っているようだね」

アンジュの指先が、わずかに震える。

「もっとも――」

「知っていたとしても」

「教えてはくれなさそうだけど」

「……っ!」

言葉を挟もうとした、その時。

ガガ

「それでは」

ヴァジェラがゆっくりと空を見上げる。

「また、お会いできる日を」

「楽しみにしているよ」

ギギが叫ぶ。

「この借りは絶対返すからな‼」

ゲネルがリンクスを指す。

「特に……お前だ」

「創造主‼」

次の瞬間。

二機のネンドールは、黒い影となり――

上空へと消えた。

戦場に、静寂が戻る。

「……アンジュ」

ゆっくり振り向く。

「魔導器って……何なんだ?」

アンジュは目を閉じた。

(……とうとう……)

(嗅ぎ付けてきたのね……)

答えは、まだ言えない。

その時。

ピッ――

通信端末が鳴る。

二人の端末が、同時に。

ジャワディー

「匠君、アンジュ」

低い声。

いつになく重い声。

「直ちに帰還し、円卓の間へ来てくれ」

一瞬の沈黙。

そして。

「……話すべき時が来た」

戦争の裏側。

王国が隠してきた秘密。

それが今――

静かに動き始めていた。

――つづく――

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