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第19話 同調 -リンクス舞う -

第19話

同調 ― リンクス舞う―

――モディアス王国・戦闘区域――

蒼い閃光が、空を裂いた。

それはまるで――

夜空を落ちてくる流星。

蒼き噴光を尾に引きながら、一機のネンドールが戦場へと降下してくる。

再構成された装甲。

研ぎ澄まされたフレーム。

旧カイザーとは、明らかに違う。

洗練されたシルエット。

戦うためだけに研ぎ澄まされた機体。

――生まれ変わったネンドール。

その名は、

カイザー・リンクス。

ズゥン……‼

轟音とともに地表へ着地する。

衝撃が地面を揺らし、砂塵が大きく舞い上がった。

ゆっくりと立ち上がる蒼き巨体。

そして、静かに歩き出す。

その歩みは迷いがない。

まっすぐに――

シルヴィの前へ。

コックピットの中で、匠は短く息を吐いた。

「……ごめん」

通信回線を開く。

「遅くなった」

シルヴィのコックピット。

アンジュは、目の前の蒼いネンドールを見上げていた。

「……ううん」

小さく首を振る。

だが視線はリンクスから離れない。

蒼を基調とした装甲。

どこか見覚えのあるシルエット。

しかし決定的に違う。

アンジュは呟く。

「……それが、新しいカイザー?」

匠が答える。

「ああ」

短く。

そして誇らしげに言った。

「カイザー・リンクスだ」

アンジュはその名をゆっくり繰り返す。

「……リンクス……」

その響きを胸の中で転がすように。

そして、ふと首を傾げた。

「……ジンクスの専用機に、少し似てるわね」

匠の肩がビクッと揺れた。

「そ、そう?」

「……はは……」

思わず苦笑する。

その瞬間だった。

――ずるり。

闇の奥で、何かが蠢いた。

地面を擦る、不快な音。

切断されたはずの触手が、闇の中からゆっくりと這い出してくる。

そして――

その中心に現れたのは。

異形の巨体。

ゲネル・ジャネス。

通信回線に、歪んだ笑い声が響く。

ギギ 「へぇ~……」

モニター越しの顔が歪む。

「よく見りゃ……知らねぇ機体じゃねぇか」

触手が、空をうねる。

「おいおい……」

「お前が、新しい“創造主”かぁ?」

その瞬間。

切断されていた断面が蠢いた。

ぐじゅ……

肉が盛り上がり、触手が再び形成されていく。

再生。

匠とアンジュが息を呑む。

「……っ!」

ギギが狂ったように笑う。

「ヒャッヒャッヒャ!」

「さぁさぁ‼」

「こっからが本番だぜぇ‼」

無数の触手が空を埋める。

そして――

暴風のように襲いかかった。

だが。

その瞬間。

リンクスが消えた。

ギギ 「……あ?」

蒼い残像だけが空を走る。

触手が空を裂く。

しかし――

当たらない。

すべて空振り。

匠は気づく。

(……速い)

いや、違う。

(……見えてる)

触手の動き。

攻撃の軌道。

すべてが――

異様なほど遅く感じる。

思考と機体が、

完全に同調していた。

リンクスは水の流れのように舞う。

最小限の動き。

無駄のない回避。

そして――

その周囲を旋回する二つの武装。

ブーメラン状ユニット

『クレセント』

蒼い軌跡を描きながら空を舞う。

意思を持つかのように触手へ突っ込み、

弾き、

逸らし、

そして――

斬る。

ズバンッ‼

触手が切断される。

ギギ 「……チッ」

苛立ちが滲む。

「チョロチョロと……」

触手がさらに暴れ唸る。

「邪魔くせぇ‼」

速度が跳ね上がる。

触手の嵐。

だが――

リンクスは止まらない。

蒼い残像が空を舞う。

匠は呟く。

「……このままじゃ」

「埒があかない」

短く息を吸う。

通信を開く。

「アンジュ‼」

「下がって!」

アンジュ 「了解‼」

シルヴィが後退する。

その前へ――

リンクスが一歩出た。

匠は静かに両手を広げる。

そして、

まるで指揮者のように素早い動きで腕を振る。

クレセントが高速旋回する。

ゲネルを中心に、

蒼い光の輪が形成される。

一周。

二周。

三周。

光の軌跡が球体を作る。

ギギ 「なっ……⁉」

機体が動かない。

「おいおい‼」

「動けねぇじゃねぇか‼」

完全拘束。

クレセントがリンクスの前で静止する。

匠の呼吸は落ち着いていた。

モニターに数字が浮かぶ。

130

活動限界。

匠が呟く。

「……130」

「129」

「128」

「……これが、今の限界か」

しかしその目は鋭い。

「……でも」

「十分だ」

匠の脳裏に一つのイメージが浮かぶ。

武装変形。

モニターに設計図が浮かび上がる。

それと完全に同調するように、

クレセントが空中で分解する。

装甲がスライド。

パーツが組み替わる。

そして――

巨大な蒼き弓が形成された。

アンジュが叫ぶ。

「その場で……創造したっ⁉」

弓に光が集まる。

エネルギーが一点に収束する。

眩い蒼光。

匠が叫ぶ。

「……いっけぇぇぇ‼」

光の矢が放たれる。

蒼き閃光。

一直線にゲネルへ――

ギギ 「そんなの――」

顔が歪む。

「アリかよぉぉぉ‼」

挿絵(By みてみん)

その瞬間。

――ズバァン‼

漆黒の影が

光の軌道へ割り込んだ。

激突。

轟音。

火花が爆発する。

蒼い矢は弾き飛ばされ、

空中で霧散した。

匠 「……なっ⁉」

アンジュ 「……何……?」

戦場が静まり返る。

煙の向こう。

そこに立っていたのは――

黒いネンドール。

挿絵(By みてみん)

静かに立っているだけなのに、

圧倒的な存在感。

リンクスのセンサーが警告音を鳴らす。

本能的な危険。

ギギも見たことのない機体だった。

「……何なんだコイツは…?」

黒い機体がゆっくり顔を上げる。

赤い光が灯る。

その視線が、

リンクスを捉えた。

戦場の空気が、

凍りつく。

――つづく――

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