第18話 誓い ― 目覚める“想い” ―
第18話
誓い ― 目覚める“想い” ―
――モディアス王国・整備ドック――
匠はネンドール制作機の前で足を止めた。
一度だけ、後ろを振り返る。
「ココル……ごめん」
静かな声だった。
「止めてくれたのに……飛び出しちゃって…」
ココルは腕を組み、深く息を吐いた。
「まったくじゃ……」
だが、その声には怒りはない。
「無茶しおって……」
視線は匠ではなく、
ネンドール制作機へ向けられていた。
ガシャッ――
ガシャッ――
巨大な装置が動き続けている。
その中央から、
次々と新しいパーツが排出されていた。
だが――
それは、これまで見たことのない部品だった。
ココルが目を細める。
「それより……見てみい」
「制作機が……勝手に設計を始めとる」
匠はゆっくり近づく。
「……わかってる」
ランナーに繋がれたパーツを手に取る。
真新しくランナーに繋がれたパーツ。
だが、その感触は奇妙だった。
まるで――
“呼ばれている”ような感覚。
(カイザーが……)
(ジンクスに……頼んだんだ……)
匠はニッパーを手に取る。
パチン。
パチン。
パーツを切り離す。
既存フレームへ、新しいパーツを組み込んでいく。
作業は速かった。
いや――
速すぎた。
匠の体が微かに蒼く光っているかのように見えた。
カチリ。
カチリ。
パーツは、寸分違わず嵌まる。
改造ではない。
再設計でもない。
これは――
“再構築”だった。
機体が、変わっていく。
骨格が変わる。
装甲が変わる。
シルエットが変わる。
それはまるで――
眠っていた本当の姿が目覚めていくようだった。
ココルが息を呑む。
「……ヴレイヴァー……?」
しかし、すぐ首を振る。
「いや……違う」
「似ておるが……別物じゃ」
「思想が違う……」
「これは……」
ココルの声が震える。
「……進化じゃ」
匠は最後のパーツを手に取る。
胸部コア。
マナストーン。
ゆっくりと機体へ装着する。
カチリ。
その瞬間――
ドックが光に包まれた。
蒼い閃光。
だがその光は、
恐ろしいほど穏やかだった。
まるで、
空そのものが優しく輝いているようだった。
空気が震える。
床が微かに振動する。
そして――
匠の意識の奥に、
声が触れた。
――タク…ミ……
匠の心臓が強く鼓動する。
――ヒトリの“想い”では……
――届かヌ……
声は遠く、
しかし確かに響いていた。
――仲間たチの“想い”ヲ背負い……
――それでも前に進ム覚悟は……あルか……
匠の胸に重い感情が落ちる。
守るということ。
背負うということ。
戦うということ。
それは――
誰かを失うかもしれないということ。
匠は静かに目を閉じる。
「……ここまで来られたのは」
小さく呟く。
「俺一人じゃない」
仲間たちの顔が浮かぶ。
アンジュ。
ココル。
王女。
ノブロコフさん。
ジャワディーさん。
そして――
匠は少し笑った。
「ジンクス」
拳を握る。
「みんなの“想い”を背負って……」
顔を上げる。
「一緒に行こう」
強く言った。
「カイザー‼️」
蒼い光が脈打つ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
それは、
心臓の鼓動のようだった。
光は一点へ収束する。
球体ポッド。
その内部に、
新たなネンドールが眠っていた。
次の瞬間――
ドォォン‼️
ポッドは整備ドックから射出された。
蒼い尾を引きながら、
空へと飛び出す。
――モディアス王国・戦闘区域――
「どうしたどうしたぁ‼️」
ギギの狂った笑い声。
「防御しかできねぇのかぁ姉ちゃん‼️」
ゲネル・ジャネスの触手が暴れる。
無数の触手。
アンジュへ襲いかかる。
「……っく……」
アンジュの視界が揺れる。
腕が重い。
呼吸が荒い。
「……もう……」
声が震える。
「……はやく来てよ……」
額から汗が滴り落ちる。
「匠……」
その瞬間。
ガンッ‼️
剣が弾き飛ばされた。
地面に落ちる。
「はい終了~‼️」
ギギが笑う。
「もう飽きたわ❗バイバァ~イ‼️」
触手が一斉に突き出される。
アンジュは歯を食いしばる。
「……くっ‼️」
その時だった。
空が――
裂けた。
青い閃光。
ズバァァン‼️
六本の触手が、
一瞬で切断される。
「……え?」
アンジュの目が見開く。
逆光。
空に浮かぶ影。
その姿は――
一瞬、
ヴレイヴァーに見えた。
「あれ~?」
ギギが首を傾げる。
「やっぱオジサン生きてたんじゃん」
しかし光が晴れる。
そこに現れた姿。
それは――
見覚えがあり、
しかし決定的に違う。
アンジュは震える声で言った。
「……違う」
「……カイザー……?」
そして叫ぶ。
「カイザーなの⁉️」
――カイザー・コックピット――
モニターが起動する。
文字が浮かぶ。
《 KAIZER - LINKS - Ready Go‼️ 》
匠はゆっくり息を吸う。
拳を強く握る。
そして、静かに言った。
「……いくよ」
目を大きく開き、
そして、
その名を呼んだ。
「リンクス」
蒼い光が、
戦場を包み込んだ。
――つづく――




