閑話⑤「ぼくが見てた、ふたりのこと」
日曜日、朝。
カーテンの隙間から、光が入る。
結翔は、目を覚ました。
まだ少し眠い。
でも——
なんとなく、気になって起き上がる。
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リビングの方から、音がする。
小さな声。
笑ってる声。
——ママとパパだ。
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そっと、ドアを少しだけ開ける。
のぞく。
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キッチン。
真希と悠真が、並んで立っていた。
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「それ、こっちでいい?」
「うん、ありがと」
「味見する?」
「ちょっとだけ」
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そんな、なんでもない会話。
でも——
前と、ちょっと違う。
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前は、もっと静かだった。
話してても、短くて。
なんか、ぴりぴりしてた。
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でも今は。
やわらかい。
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ふたりとも、ちょっと笑ってる。
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「……ふーん」
結翔は、小さくつぶやく。
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少し前のことを、思い出す。
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ママが、いなかった日。
家が、すごく静かだった。
パパも、あんまりしゃべらなくて。
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そのとき、ちょっとだけ思った。
——なんか、へんだなって。
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でも今は。
ちがう。
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ちゃんと、戻ってる。
でも、前よりいい。
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結翔は、ドアを閉めて、
少し大きめの音を立てて歩く。
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「おはよー!」
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「あ、結翔。おはよう」
「おはよ」
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ふたりが、同時にこっちを見る。
それだけで、なんか安心する。
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「今日なにするの?」
結翔が聞く。
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「どうする?」
真希が悠真を見る。
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「どっか行くか?」
悠真が答える。
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「いきたい!」
すぐに答える。
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「じゃあ、みんなで考えよっか」
真希が笑う。
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そのとき。
結翔は、ちょっとだけ気づく。
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ふたりの手が、少しだけ触れてる。
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ぎゅっとじゃない。
でも、ちゃんと触れてる。
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それを見て——
なんか、うれしくなる。
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「ねえねえ!」
わざと、少し離れたところに行く。
双子の近く。
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なんとなく。
ふたりの邪魔をしないように。
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自分でも、よく分からないけど。
そうした方がいい気がした。
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双子も、にこにこしてる。
よく分かってないけど、楽しそう。
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「ここ、ブロックつくろ!」
「うん!」
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遊びながら、ちらっと見る。
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ママとパパ。
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目が合って、少し笑ってる。
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それだけで、いい。
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難しいことは分からない。
大人のことも、全部は分からない。
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でも。
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ふたりが、笑ってると。
なんか、安心する。
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それだけは、ちゃんと分かる。
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朝ごはんの時間。
「いただきます!」
声がそろう。
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にぎやかで。
ちょっとバタバタで。
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でも。
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それが、すごくいい。
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「これ、おいしい!」
「ほんと?」
「うん!」
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笑い声が広がる。
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結翔は思う。
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——このままでいいな。
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特別なことは、いらない。
すごいことも、いらない。
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ママとパパがいて。
みんなでごはん食べて。
たまに出かけて。
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それで、十分。
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それが——
ぼくの、大好きな“家族”。
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