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『40歳OLと高校生、世間では“母子”、本当は恋人――バレたら即終了の年の差ラブコメ、始まります。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
シーズン8.5《社会人8年目と2人の出世…家族5人編のその後と特別編 ~ 》
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第6話「月を見上げる、それぞれのかたち」


運動会とBBQが終わり、


にぎやかだった秋も、ゆっくりと終わりに近づいていた。



夜の空気が少し冷たくなる頃。


街の灯りの上に、丸い月が浮かぶ。


――十五夜。



「今日、月きれいだよ」


真希が窓の外を見ながら言う。



リビングにいた三人が一斉に反応する。


「ほんと?」

「見たい!」



ベランダへ出る。


夜風が少しだけ頬に当たる。


空には、はっきりとした月。



「……でっか」


結翔がぽつりと呟く。


未来と莉嘉は、そのままじっと見上げている。



しばらくして、未来が言う。


「ねえ、ほんとにうさぎいるの?」


その一言で、空気が少し変わる。



最近、学校や動画で話題になっていた。


“月にはうさぎがいるのか問題”。



莉嘉も続く。


「いるって言ってる人と、いないって言ってる人いるよね」



悠真は少し考えてから答える。


「実際にはいない」


現実的な答え。



「えー」


二人が同時に不満そうな声を出す。



その横で、真希が少し笑う。


「でもね、そう見えるって話」



「見える?」


未来が首をかしげる。



真希は空を指差す。


「月の模様が、うさぎがお餅ついてるみたいに見えるの」



三人がもう一度、月を見上げる。



「……あ」


莉嘉が小さく声を出す。


「ほんとだ、なんかそれっぽい」



結翔は少しだけ考える。


「想像力の問題か」



悠真が苦笑する。


「言い方」



現実と、物語。


どちらも間違いじゃない。


そんな曖昧な答えが、この夜にはちょうどよかった。



その後、部屋に戻る。


テーブルの上には――


月見団子と、いくつかのお餅。



「やった!」


未来と莉嘉のテンションが一気に上がる。



二人はお餅が好きだった。


特に、こういう行事の時のものは別格。



「ちょっと待って」


真希が先に声をかける。



二人の動きが止まる。



「ちゃんとよく噛んで食べること」


少しだけ真剣な声。



「……うん」


未来と莉嘉が頷く。



「小さくなるまでね」


真希は続ける。


「喉に詰まると危ないから」



テレビでも、動画でも、


何度も見てきた現実。



楽しい時間の中にも、ちゃんと“気をつけること”がある。



「わかってるよ」


莉嘉が言う。


「いっぱい噛む」



未来も真剣な顔で頷く。



そのやり取りを見て、悠真は少し安心する。



一方で――


結翔は少し距離を取っていた。



「食べないの?」


悠真が聞く。



結翔は首を横に振る。


「いい」



「団子、嫌いなんだっけ」



「うん」


即答。



以前、悠真が買ってきた“ずんだ餅”。


あれがきっかけだった。



「なんか……あの味がダメ」


少し顔をしかめる。



真希が横から言う。


「無理に食べなくていいよ」



悠真も頷く。


「まあ、好き嫌いはあるよな」



「うん」


結翔は素直に答える。



その代わりに、別のお菓子を手に取る。


それでいい。



“みんな同じじゃなくていい”


それが、この家族のルールだった。



未来と莉嘉は、ゆっくりとお餅を食べている。


ちゃんと噛んで、


小さくして、


飲み込む。



その様子を見ながら、真希は少しだけ息を吐く。



「ちゃんとできてるね」



悠真も頷く。


「成長してるな」



何気ない夜。


特別なことはない。



それでも――


こうして同じ時間を過ごしていることが、


何より大切だった。



再びベランダへ出る。



月は変わらず、そこにある。



結翔がぽつりと言う。


「うさぎ、いるかもな」



未来と莉嘉が笑う。



悠真も小さく笑う。



真希は、その光景を静かに見ていた。



それぞれの考え方。


それぞれの好き嫌い。


それぞれの見え方。



全部違って、全部いい。



月の下で、


その“違い”が、ひとつの家族になっていた。



秋の終わり。


静かな夜が、やさしく包んでいた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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