第5話「走る日、つながる日」
秋の空は高く、澄んでいた。
ルクシア株式会社のグラウンドには、朝から賑やかな声が響いている。
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「第40回 秋の運動会、開催します!」
マイクの声と同時に、拍手が広がる。
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今回の企画――
悠真が関わったもう一つの案。
“秋の運動会”。
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社員だけでなく、その家族も参加可能。
そのため、結翔・未来・莉嘉も――
“真希の親戚の子ども”という形で参加していた。
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「絶対勝つ!」
結翔が気合を入れる。
未来と莉嘉も、それぞれ小さく拳を握る。
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悠真は軽く笑う。
「ケガだけすんなよ」
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競技が始まる。
まずは球入れ。
未来と莉嘉が参加。
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「いけー!」
小さな手で、一生懸命ボールを投げる。
入ったり、外れたり。
それでも楽しそうに笑っている。
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真希はその様子を見ながら、手を叩く。
「いいよ、そのまま!」
完全に“母の顔”だった。
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次はリレー。
結翔の出番。
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「頼むぞ」
悠真が小さく声をかける。
結翔は真剣な顔で頷く。
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スタート。
全力で走る。
バトンを受け取り、一気に加速する。
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「速いな」
誰かが呟く。
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ゴール。
息を切らしながらも、満足そうな顔。
「やった!」
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真希は思わず立ち上がる。
「よく頑張った!」
その声は、しっかり届いていた。
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そして――
悠真の出番。
100m走。
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スタートラインに立つ。
周囲は若手社員が多い。
だが、その中でも落ち着いている。
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「意外と速いんだよな」
同僚の声。
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スタート。
一気に駆け出す。
無駄のないフォーム。
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ゴール。
結果は――上位。
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「やるじゃん」
声がかかる。
悠真は軽く息を整えながら笑う。
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続いて200m。
さすがに少しきつい。
だが最後まで走り切る。
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真希は遠くからその姿を見ていた。
(ちゃんと頑張ってる)
そう思うと、少しだけ嬉しくなる。
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その頃――
女子リレー。
そこには――
氷室結衣 の姿もあった。
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社長とは思えない軽やかな走り。
周囲から歓声が上がる。
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「すご……」
未来がぽつりと言う。
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昼休憩。
グラウンドの端に、家族が集まる。
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そこに現れたのは、真希の母親。
「お弁当、持ってきたよ」
大きな重箱。
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「ありがとう」
真希が少しだけ柔らかい表情で言う。
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シートの上に広げる。
手作りの料理が並ぶ。
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「いただきます!」
五人で手を合わせる。
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結翔がすぐに食べ始める。
「うまっ!」
未来と莉嘉も続く。
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悠真も一口食べる。
「……いいですね」
自然と出た言葉。
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その横で、真希の父親が腰を下ろす。
「どうだ、会社は」
穏やかな声。
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悠真は少しだけ姿勢を正す。
「忙しいですけど、なんとか」
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「仕事は?」
「順調……だと思います」
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父親は軽く頷く。
「無理はするなよ」
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その一言に、悠真は少しだけ安心する。
「はい」
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午後の競技も終わり、
運動会は無事に幕を閉じた。
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夕方。
家に戻る前に、立ち寄ったのは地元の銭湯。
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「ひろーい!」
結翔が声を上げる。
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男湯。
悠真と結翔。
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「今日どうだった?」
湯に浸かりながら、悠真が聞く。
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「楽しかった!」
即答。
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「リレーも勝てたし!」
誇らしげな顔。
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悠真は少し笑う。
「ちゃんと走れてたな」
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一方――
女湯。
真希と未来、莉嘉。
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「つかれたー」
未来が湯に沈む。
莉嘉もそれに続く。
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真希はその様子を見ながら、優しく言う。
「よく頑張ったね」
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約一時間。
ゆっくりと体を休める。
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風呂上がり。
五人が再び合流する。
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「これ!」
結翔が牛乳瓶を持つ。
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「乾杯!」
五人で同時に飲む。
冷たい牛乳が、体に染みる。
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「うま……」
悠真がぽつりと言う。
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真希も小さく笑う。
「こういうの、いいね」
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夜。
家に戻る。
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それぞれが自分のベッドへ。
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子どもたちはすぐに眠りにつく。
運動会と銭湯。
一日分の疲れが、一気に出た。
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真希も布団に入る。
悠真も隣に横になる。
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「今日、いい日だったね」
真希が言う。
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悠真は目を閉じたまま頷く。
「うん」
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特別じゃない。
でも、確かに大切な一日。
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そのまま、静かに眠りに落ちていく。
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秋の夜は、やさしく更けていった。
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