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『40歳OLと高校生、世間では“母子”、本当は恋人――バレたら即終了の年の差ラブコメ、始まります。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
シーズン8.5《社会人8年目と2人の出世…家族5人編のその後と特別編 ~ 》
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第4話「本のあいだに、つながる時間」


秋の空気は、どこか静かで澄んでいた。


ルクシア株式会社のエントランスには、その日だけ特別な空間が広がっていた。



「これが……読書会か」


悠真が小さく呟く。


普段は無機質なロビーに、ずらりと並ぶ本棚。


社員たちが持ち寄った本。


家に眠っていた本、実家から持ってきた本。


子ども向けの絵本から、専門書、小説まで。


ジャンルはばらばらだが、それが逆に“らしさ”を作っていた。



「なんか、いいね」


真希もその光景を見ながら言う。


営業部課長としてではなく、“一人の母”としての視線だった。



午前中は、本の販売。


一冊100円。


どんな本でも同じ値段。



「安くない?」


結翔が驚く。


悠真は笑う。


「掘り出し物探すのが楽しいんだよ」



未来と莉嘉も、それぞれ気になる本を手に取る。


表紙を見て、めくって、また戻して。


それだけで、時間がゆっくり流れていく。



真希も一冊手に取る。


「……これ、懐かしい」


学生時代に読んだ本だった。


少し色褪せたページ。


でも内容は、しっかり頭に残っている。



悠真は別の棚を見ていた。


ふと、手が止まる。


「……これ」


手に取った本。


値札は100円。


だが裏を見ると、元値は2,000円以上。



「当たりだな」


小さく笑う。



その後、二人は何冊か選ぶ。


子ども向けの絵本。


少し大人向けの小説。


そして、自分たちのための本。



「こんなに買って大丈夫?」


真希が言う。


悠真は肩をすくめる。


「全部で数百円だし」


「それもそうか」



レジを通す。


袋に入れられる本たち。


その重さは、不思議と心地よかった。



昼を過ぎて、午後。


会場の一角に、子どもたちが集まり始める。



「始まるよ」


真希が声をかける。


結翔、未来、莉嘉も並ぶ。



今回の読み聞かせは――

千代田区立日比谷図書文化館 の司書によるもの。



静かな声で、物語が始まる。


一冊目。


ページをめくる音。


優しい語り口。



子どもたちは、自然と引き込まれていく。


さっきまで動き回っていた結翔も、じっと聞いている。


未来と莉嘉も、目を輝かせている。



二冊目。


少し長めの物語。


笑いが起きる場面もあれば、静かになる場面もある。



三冊目。


少しだけ心に残る話。


読み終わったあと、ほんの少しの沈黙が生まれる。



「……おもしろかった」


未来がぽつりと言う。


莉嘉も小さく頷く。



結翔は少し考えたあと、言う。


「家でも読んで」


その一言に、真希が少し驚く。



「いいよ」


すぐに答える。


その声は、やわらかかった。



少し離れた場所で、その様子を見ていた悠真。


ふと、真希の方を見る。



目が合う。


ほんの一瞬。



何も言わない。


だが、それだけで十分だった。



“この企画、やってよかった”


言葉にしなくても、伝わる。



イベントは穏やかに進んでいく。


大きな盛り上がりではない。


だが、確かに人と人が繋がっている空間だった。



帰り際。


結翔が袋を抱えながら言う。


「今日の本、読む?」


真希は笑う。


「読むよ」



悠真も頷く。


「夜だな」



その日の夜。


また一つ、家族の時間が増える。



静かな秋の一日。


だがその中には、


確かに“温かい時間”が流れていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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