特別編③「湖のそばで、ほどける時間」
京都での一日を終えたあと。
車はそのまま北へ向かっていた。
次の目的地――
滋賀県。
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運転席には悠真。
助手席には真希。
後部座席では、結翔と未来と莉嘉がすでに少し眠そうにしている。
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「大丈夫?」
真希が小さく聞く。
悠真はハンドルを握ったまま答える。
「まだいける」
その声には余裕があった。
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長距離運転。
どちらかと言えば得意なのは悠真だった。
一方の真希は、長くても一時間ほど。
だが、少し休めばまた動ける。
そんなバランスで、これまで二人はやってきた。
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「疲れたら代わるよ」
真希が言う。
悠真は少しだけ笑う。
「寝たら復活するタイプだろ」
「まあね」
そのやり取りは、自然だった。
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やがて車は
彦根城 の近くへ到着する。
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「着いた!」
結翔が一気に目を覚ます。
未来と莉嘉も続く。
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白く美しい城。
青空に映えるその姿に、子どもたちは一気に元気を取り戻した。
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そして――
「ひこにゃんだ!」
ゆるやかな動きで現れたキャラクターに、三人は大はしゃぎ。
記念撮影。
笑顔が並ぶ。
その瞬間だけ、時間が止まったようだった。
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真希はその様子を見ながら、小さく呟く。
「こういうの、いいね」
悠真も頷く。
「うん」
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そのあと向かったのは――
クラブハリエ
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店内に入ると、甘い香りが広がる。
「これ食べたい!」
莉嘉がすぐに指を差す。
有名なバームクーヘン。
ふんわりとした見た目。
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一口。
「……おいしい」
未来が静かに言う。
結翔も頷く。
「これ、強い」
悠真が思わず笑う。
「強いって何だよ」
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真希も一口食べる。
「……うん、これは買う」
その一言で決まりだった。
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いくつか種類を選び、箱に詰めてもらう。
「実家にも持っていこうか」
悠真が言う。
真希は頷く。
「うん、喜ぶと思う」
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夕方。
移動の疲れもあり、少し休憩を取ることにした。
向かったのは――
Grand Mercure Lake Biwa Resort & Spa の近く。
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“かたらいの森”。
そしてその先に広がる――琵琶湖。
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静かな水面。
広がる空。
風がゆっくりと流れる。
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子どもたちは最初こそはしゃいでいたが、やがて静かになる。
自然の中にいると、不思議と落ち着く。
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「ここ、いいね」
真希が言う。
悠真も同じ方向を見ながら答える。
「うん、時間止まってるみたいだ」
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2時間、3時間。
何もせず、ただ過ごす。
それだけで十分だった。
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夜。
ホテルへ。
レストランには温かい光が灯っていた。
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「いただきます」
五人で手を合わせる。
料理が並ぶ。
笑顔が増える。
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「今日、楽しかった!」
結翔が言う。
未来と莉嘉も頷く。
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真希はその様子を見ながら、小さく息を吐く。
「よかった」
その一言に、すべてが込められていた。
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食事を終え、部屋へ戻る。
子どもたちはすぐに眠りについた。
長い一日だった。
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静かな夜。
部屋の灯りも落ち着いている。
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真希は窓の外を見る。
琵琶湖の夜。
昼とは違う静けさ。
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悠真が隣に来る。
何も言わず、少しだけ距離が近くなる。
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「疲れた?」
悠真が聞く。
真希は首を横に振る。
「ううん……いい疲れ」
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しばらく、並んで座る。
言葉は少ない。
でも、空気は満たされている。
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真希が少しだけ寄りかかる。
悠真も自然に受け止める。
そのまま、静かに額を寄せる。
短く、穏やかなキス。身体を重ね合い…
それは一日の終わりを確かめるようなものだった。
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「明日もあるね」
真希が小さく言う。
悠真は頷く。
「まだ続く」
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ベッドに入る。
静かな呼吸。
隣にいる安心感。
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外では湖が静かに広がっている。
その中で、二人の時間もまた、ゆっくりと流れていった。
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