特別編②「京都で出会った、もう一つの“かたち”」
夏の陽射しは強い。
けれど、古都の空気はどこか柔らかかった。
家族5人を乗せた車は、ゆっくりと京都の街へ入っていく。
最初に訪れたのは――
金閣寺
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「うわ……金色だ」
結翔が思わず声を漏らす。
水面に映る建物。
揺れる光。
未来と莉嘉も、言葉を失ったように見上げていた。
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真希は少し後ろからその様子を見守る。
「やっぱり、こういうのは実際に見ると違うね」
悠真も頷く。
「写真じゃ分からないな」
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しばらくその場を歩き、次に向かったのは――
比叡山延暦寺 周辺。
山の空気は、街よりも少し涼しい。
木々の間を抜ける風が心地よい。
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石段をゆっくり登る子どもたち。
「つかれたー!」
結翔が途中で座り込む。
未来と莉嘉もそれに続く。
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悠真が笑いながら手を差し出す。
「ほら、あとちょっと」
真希も後ろから軽く声をかける。
「ゆっくりでいいよ」
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頂上付近。
視界が開ける。
街が小さく見える景色。
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「すご……」
未来がぽつりと言う。
その一言で、全員が静かになる。
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そのあと、再び京都市内へ戻る。
少し遅めの昼。
訪れたのは――
一和 と
かざりや
名物のあぶり餅。
香ばしい匂いが漂う店先。
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「なにこれ、いい匂い!」
莉嘉が目を輝かせる。
運ばれてきた餅に、子どもたちは一斉に手を伸ばす。
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「いただきます!」
一口。
甘い味噌だれと、香ばしい餅。
「おいしい!」
結翔が即答する。
未来と莉嘉も夢中で食べている。
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その様子を見て、真希は小さく笑う。
「こういうの、好きだよね」
悠真も頷く。
「シンプルだけど強い」
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その時だった。
「あれ……高槻?」
声がかかる。
悠真が振り返る。
そこにいたのは――
「服部……?」
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服部繁
そしてその隣に――
下柳美奈代
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「久しぶりだな!」
服部が笑いながら近づいてくる。
「まさか京都で会うとは」
悠真も少し驚きながら笑う。
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真希も目を見開く。
「下柳さん……?」
「久しぶりね、春日井さん」
美奈代は落ち着いた笑みを浮かべていた。
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少しの沈黙のあと。
服部が子どもたちを見る。
「家族旅行か?」
悠真は一瞬だけ迷う。
だが――
「……うん」
真希も小さく頷く。
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そして、二人は視線を合わせる。
言葉にしなくても分かる合図。
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悠真が少しだけ声を落とす。
「……これ、他の人には内密で」
服部は一瞬だけ驚き、すぐに理解する。
「ああ、そういうことか」
美奈代も静かに頷く。
「安心して。言わないわ」
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その流れで、真希が子どもたちを呼ぶ。
「結翔、未来、莉嘉」
三人が振り向く。
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「こっち来て」
少し照れながら、三人は並ぶ。
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「この人たち、パパとママの会社の人」
真希が紹介する。
悠真も続ける。
「で、家族」
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服部が少しだけ目を細める。
「いいな」
その一言は、軽いのに重みがあった。
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美奈代が微笑む。
「うちと似てるわね」
その言葉に、真希が少し反応する。
「似てる?」
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服部が笑う。
「俺たちも夫婦なんだよ」
一瞬、空気が止まる。
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「しかも年の差、ほぼ同じ」
その言葉に、悠真と真希が同時に目を見開く。
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「……公表してるの?」
真希が聞く。
美奈代はあっさり頷く。
「ええ。最初からね」
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その言葉は、静かに響いた。
隠している二人。
公表している二人。
同じ構図。
でも、選んだ形は違う。
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少しの沈黙のあと。
悠真が笑う。
「なんか、不思議だな」
服部も頷く。
「だな」
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結翔がぽつりと言う。
「パパの友達?」
悠真は優しく答える。
「そうだよ」
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その何気ない一言で、空気がまた柔らかくなる。
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別れ際。
服部が言う。
「またな」
美奈代も軽く手を振る。
「いい旅行を」
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二人が去ったあと。
真希は少しだけ空を見上げる。
「……いろんな形があるね」
悠真も同じ方向を見る。
「だな」
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京都の空は、静かに広がっていた。
⸻
その日。
家族の時間の中に、少しだけ新しい“視点”が加わった。
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