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『40歳OLと高校生、世間では“母子”、本当は恋人――バレたら即終了の年の差ラブコメ、始まります。』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
シーズン8.5《社会人8年目と2人の出世…家族5人編のその後と特別編 ~ 》
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特別編①「離れていても、同じ場所へ」


夏が始まる少し前。


湿った空気が、街全体をゆっくり包み始めていた。



朝。


リビングには、いつもより少しだけ落ち着かない空気があった。


結翔がリュックを背負いながら言う。


「ほんとに泊まるの?」


真希はしゃがんで目線を合わせる。


「うん。ママの実家ね」


未来と莉嘉も、それぞれ小さなバッグを持っている。


どこか楽しみそうで、でも少しだけ不安そうだった。



玄関。


悠真が荷物を持ちながら言う。


「すぐ迎えに行くからな」


結翔は少しだけ唇を尖らせる。


「ほんとに?」


「ほんと」


短い約束。


でも、それで十分だった。



車が走り出す。


向かうのは、真希の実家。


窓の外の景色がゆっくり変わっていく。


子どもたちは最初は話していたが、途中から静かになった。


それぞれが、それぞれの気持ちを抱えている。



実家に着くと、空気が少し変わる。


懐かしい匂い。


少しだけ時間がゆっくり流れている場所。


「いらっしゃい」


真希の母が優しく迎える。


その声に、子どもたちの緊張が少しだけほどけた。



「ちゃんとご飯食べるのよ」

「夜更かししすぎないでね」


真希が一つ一つ確認するように言う。


結翔は少し照れながら頷く。


未来と莉嘉はもう部屋の中を見回している。



別れの時間。


玄関の前。


「いってらっしゃい、じゃないか」


悠真が苦笑する。


結翔が小さく言う。


「……すぐ来る?」


真希は少しだけ間を置いてから答える。


「お盆になったら、すぐ迎えに行く」


その言葉は、ちゃんとした約束だった。



車に戻ると、しばらく誰も話さなかった。


エンジン音だけが流れる。


やがて悠真がぽつりと言う。


「静かになるな」


真希は窓の外を見たまま答える。


「うん」



家に戻ると、空気が違った。


広い。


そして、静かすぎる。


いつもあるはずの音が、何もない。



その夜。


二人はそれぞれ仕事を持ち帰っていた。


新しいプロジェクト。


営業、企画、そして秘書課。


すべてが重なっている時期だった。



「終わらないね」


悠真がパソコンを見ながら言う。


「終わらせるしかないね」


真希は淡々と返す。


だがその声には、少しだけ力がこもっていた。



数日が過ぎる。


朝は早く、夜は遅い。


家に帰っても、静かなまま。



そんな中で、唯一の“救い”があった。


夜のテレビ電話。


画面の向こうに、三人の顔が並ぶ。


「ママー!」

「パパー!」


一気に声が重なる。


その瞬間だけ、家の空気が変わる。



「ちゃんとご飯食べてる?」

真希が聞く。


「食べてる!」

結翔が即答する。


未来と莉嘉も元気に頷く。



悠真が笑う。


「いい子にしてるか?」


「してる!」


その返事に、二人は少しだけ安心する。



通話が終わると、また静けさが戻る。


だがさっきまでとは違う静けさだった。


“繋がっている静けさ”。



日々は過ぎていく。


忙しさは変わらない。


むしろ増えていく。



ある夜。


真希がぽつりと言う。


「あと一週間」


悠真が頷く。


「お盆までか」


「うん」


その一週間が、やけに長く感じる。



それでも、仕事は止まらない。


むしろ終盤に向かって、さらに密度が上がる。



そして――


お盆休み前日。


ようやく、一区切りが見えた。



夜。


久しぶりに早く帰れた日。


リビングに二人だけ。


静かで、でもどこか軽い空気。



真希がふと、悠真を見る。


「ねえ」


「うん?」


少しだけ間を置いてから言う。


「久々に、お風呂一緒に入らない?」


悠真は少し驚いたように見る。


そして、すぐに笑う。


「いいな」



浴室。


湯気の中で、時間がゆっくりになる。


仕事の話はもうしない。


ただ、同じ空間で、同じ時間を過ごす。



「疲れたね」


真希が小さく言う。


「うん」


悠真も短く答える。



お互いに背中を流す。


髪を洗う。


何気ない動作なのに、それがやけに温かい。



風呂を出たあと。


静かな部屋。


久しぶりに“何も追われていない時間”。



真希が少しだけ近づく。


悠真も自然に受け止める。


言葉は少ない。


ただ、距離が近い。



その夜は、久しぶりにゆっくりと時間が流れた。


何も急がない… 何も背負わない。


真希と悠真は2人寄り添って身体を重なり合う。


ただ“二人でいる時間”。



ベッドに入る前。


真希が小さく言う。


「明日、迎えに行こうね」


悠真は頷く。


「うん。みんなで旅行だな」



ようやく来る“再会”。


そして、その先にある“家族の時間”。



離れていた時間があるからこそ、


戻ったときの温かさは、きっと大きくなる。



その夜は、久しぶりに深く眠れた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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