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第7話「神奈川旅行・5人の冒険」


 週末の朝は、いつもより早かった。


 まだ街が完全に目覚める前の時間。


 春日井家の玄関には、小さなスーツケースが並んでいる。



「忘れ物ない?」


 真希が確認する。



春日井真希



「たぶん大丈夫」


 悠真は子どもたちの荷物をまとめながら答える。



「いくぞー!」


 結翔の声が玄関に響く。


 双子も意味は分からないまま、楽しそうに笑っている。



 今日から、神奈川。



江ノ島へ電車を乗り継ぎ、海が見えた瞬間。


 結翔のテンションが一気に上がった。


「うみ!!」


 走り出しそうになるのを、真希が軽く止める。



 潮の匂い。


 波の音。


 観光客のざわめき。



 その中で、5人は砂浜に立つ。



「冷たい!」


 結翔が足を踏み入れて叫ぶ。



 双子は砂を握っては落とし、を繰り返している。



 悠真はその様子を見ながら、少しだけ目を細める。


「……こういうの、いいな」



 真希も同じように海を見ていた。


「うん」



 その横で、自然に手が触れる。


 誰にも気づかれないくらいの距離。



 次は電車で鎌倉へ。


 空気が少し変わる。


 静かで、落ち着いた街並み。



 大仏の前。


「でか……」


 悠真が思わず呟く。



「写真撮ろうよ!」


 結翔が騒ぐ。



 5人で並ぶ。


 少しバランスの悪い構図。


 でも、それがちょうどいい。



 食べ歩きでは、真希が少しだけはしゃぐ。


「これ美味しい」


「ほんとだ」



 その小さな会話が、やけに自然だった。



 夕方… 横浜みなとみらい


 空がオレンジに染まる。



 観覧車がゆっくり回る。


 ビルの灯りが少しずつ増えていく。



「きれい……」


 真希が小さく言う。



 その横で悠真は、子どもたちを見ていた。


 走り回る影。


 笑い声。



 そして、その中心にいる真希。



「……ちゃんと、来れてよかったな」



「うん」



 夜になる。


 ホテルへ向かう。



 小さなトラブルが…


 チェックイン直前。


「……あれ?」


 結翔がカバンを探る。


「おもちゃがない!」



 一瞬、空気が止まる。



 真希が落ち着いて言う。


「さっきの公園だね」



「戻るか?」


 悠真が聞く。



「うん」



 結局、少し引き返すことに。



 その間も、誰もイライラしない。


 むしろ、少し笑っている。



「こういうのも旅行だな」


 悠真が言う。



「うん」


 真希も頷く。



 夜。ホテルに…


 ようやく部屋に入る。



 大きな窓。


 横浜の夜景。



「すご……」


 結翔が息を呑む。



 双子はベッドに飛び込む。



 ようやく、静けさが訪れる。



 子どもたちが寝たあと。


 リビングのような空間に、二人だけが残る。



「疲れたな」


 悠真が言う。



「でも、楽しかった」


 真希が答える。



 少しだけ沈黙。



 窓の外には、光の海。



 その中で、真希が小さく言う。


「……こういうの、またやりたいね」



「だな」



 肩が少しだけ触れる。



 それだけで、十分だった。



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