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第4話「神奈川旅行の計画」


 夕食後のリビングは、いつもより少し騒がしかった。


 テーブルの上には、折りたたまれたチラシとスマホが並んでいる。


 真希と悠真の間には、小さな“地図会議”が始まっていた。



「神奈川って言ったけどさ」


 悠真がスマホを見ながら言う。


「どこから行く?」



「江ノ島は外せないでしょ」


 真希がすぐに返す。


「海見せたいし」



 その言葉に、結翔が勢いよく反応する。


「うみ!?いく!」


 双子も意味は分かっていないが、楽しそうに笑う。



「じゃあ江ノ島スタートか」


 悠真が頷く。



 次に真希が指を動かす。


「鎌倉は?」


「大仏だろ」


「あと食べ歩き」


「確定だな」



 自然に話が進んでいく。


 まるで、最初から決まっていたように。



「横浜は夜かな」


 真希が少しだけ柔らかい声で言う。


「みなとみらいの夜景」



「いいね、それ」


 悠真もすぐに同意する。



 その横で結翔が叫ぶ。


「ぜんぶいく!!」



 笑いが広がる。



 だが、その中で真希のスマホが震える。


 画面には、会社からの通知。



 一瞬だけ、空気が現実に戻る。



「……また案件?」


 悠真が小さく聞く。


「うん。ちょっと調整」



 真希は軽く息を吐く。


 課長としての顔になる瞬間だった。



「大丈夫か?」


「うん。今のうちにやる」



 そう言って席を立つ。


 リビングの端で電話をかけ始める。



 悠真はその背中を見ていた。


 家族の顔と、仕事の顔。


 どちらも真希だった。



 少しして戻ってくる。


「ごめん、戻った」


「お疲れ」



 何事もなかったように、また地図に目を戻す。



「箱根は?」


 悠真が聞く。



「温泉でしょ」


「子どもたち寝るの早そう」


「じゃあありだな」



 会話は続く。


 未来の話なのに、現実味がある。



 その夜。


 計画はほぼ固まった。



「じゃあ決定だな」


 悠真が言う。



「うん」


 真希も頷く。



「神奈川5人旅行」



 結翔が拍手する。


「やったー!!」



 その声が、部屋に響く。



 夜が更ける。


 子どもたちが寝たあと。


 静かなリビング。



「……結構楽しみだな」


 悠真が言う。



「うん」


 真希も小さく笑う。



「仕事、大丈夫そう?」


「ギリギリ」


「だろうな」



 短い会話。


 でも、安心している。



 窓の外は静かだった。


 日常は続いている。


 その中で、少しだけ“未来”が見えていた。



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