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第二十二話 特級魔道具

「汝たち、テスト期間中に関わらずよく来てくれた。それほどまでに大事なイベントであったのだ」


 俺たちは今日、研究希望者の拠点となる講義棟の一角にある会議室に来ている。ここは主に研究希望者が機密情報を取り扱うために使われる場所だそうだ。あれほど証拠が見つからなかったアンノウンの解明で進展でもあったのだろうか。


「うちらも良く使う場所ではないけれど、馴染みのある場所ではあるわね。それで、用件は何なの?」

「良い報告と悪い報告があるのだ。まずは、どちらから聞きたい?」

「では、悪い報告の方からお願いします」

「先日先生に相談したが、特級魔道具アンノウンの解析のために他の特級魔道具を持ってくることは不可能であった。特級魔道具は日本各地で厳重に保管されている。一か所に複数の特級魔道具が集まることは避けたいそうだ」

「流石に無理だとは思っていたから、悪い報告でもないがな。で、良い報告というのは?」

「聞いて驚くなかれ。……日本に存在する四つの特級魔道具についての情報を開示してくれるらしい」

「マジなの!? 一つも情報が出回っていない特級魔道具の情報を四つも!? どういう風の吹き回しよ」

「ひとえに涼風すずかぜ先生のおかげであるな。本来なら情報がなくとも解明できるが、情報さえあれば一、二か月で解明できるということにしたらしい。そしたらすんなりと話が通ったということである」

「政府相手にはったりをかますとは涼風先生もやるな。おかげさまで俺たちは地球の神秘に触れられる訳だもんな」

「めちゃくちゃワクワクしてきましたよ。夜月家でも情報を手に入れることは不可能でしたから」

「ちなみに普段はそんなことはないが、今回は情報が重大ゆえ、この部屋は監視カメラで監視されている。下手な真似はしないように頼んだであるぞ。それと、資料をコピーするスキルの可能性を防ぐために魔力は出さないようにしてくれ」


 特級魔道具。今まで一つも情報が出回っていない地球の神秘。天岩学園と特級魔道具を保持していたからこそできた芸当だな。前にも述べた通り、特級魔道具は一つでも悪用されれば世界の均衡を変えかねない代物。果たしてどんな能力を持っているのか。この歳になって地球の神秘に心を躍らせる日がやってくるとは思わなかったぜ。


「では、日本で初めて見つかったものから順に説明していこうと思っているのであるが、よろしいか?」

「ああ、頼む」

「それでは参るぞ。『【JP-No.1】特級魔道具ギフト』。ギフトは西暦XX年に日本の○○県の○○地方で見つかった特級魔道具である。ギフトは膨大な魔力を宿した刀の姿をしており、今までの研究結果から、昔の刀匠が偶然作り上げてしまったものである可能性が高いことが判明している。ギフトの性能はとても高く、鉄をも斬るほどの鋭い切れ味を持ちながら刃こぼれすることが一切ない。驚くべきはその固有の能力にあり、ギフトは誰が使用しても使用者の熟練度を達人レベルにまで引き上げてしまう。例え、十歳児の子供が持ったとしても、かの剣豪と肩を並べるほどの腕前を持ってしまうらしい」

「凄いですね。誰が持っても達人になってしまう魔道具ですか。そんなものは聞いたこともありませんよ」

「俺たちの生活にある魔道具の中で攻撃性の高い魔道具はないからな。誰もが強者に成れてしまうという時点で世には出せんだろうさ」


 生活の中にある魔道具はちょっとした回復薬等の生活を便利にするものであったり、身の安全を守るための防御用の魔道具しかない。攻撃的な魔道具は軍が保有しているため、俺たちが見かけることはないのだ。


「というか誰もが達人になれるんだったら、元々達人であった人が使用したらどうなるのかしら? あり得ないくらい強くなったりして」

「そこが、この魔道具の弱点である。ギフトは誰が使用しても達人になれる代わりに、誰が使用しても達人にしかなれない。どんな強者が持ってもそれ以上には成れないのだ」

「ふーん、だったら特級魔道具にするほどでもなかったんじゃない? 要は膨大な魔力を持った刀ということでしょう? その説明を聞くと、特級にまでする必要はなかったように思えるわ」

「それがそうでもないのだ。このギフトは使用者がどんな人であろうと、ある一定の強さに設定される。しかし、それはこの魔道具の仕様なのだ。実はこのギフトはギフト自体を鍛え上げることで、使用者の強さが跳ね上がるという代物なのだ。そして、現代にはギフトを鍛えられるほどの技術がある。悪用されれば、誰もがシングル以上の強さと魔力を持ってしまう怪物の魔道具が誕生してしまう。使用者を倒しても、ギフト自体を壊さない限り、永遠にシングル以上の化け物が誕生し続ける。ゆえに特級魔道具として厳重に保管されることになったと書いてあるのだ」

「……そりゃあ、厳重に保管しねぇと駄目だわな。誰もが帝人先輩クラスになれてしまったらこの世の終わりだぞ。マジで一つだけでも悪用されれば世界の均衡を崩しかねないのか。本当のこととは思わなかったぜ」

「怖いですね。そんなものが後三つもあるんですか。よくもまあ、この世界はそんなものを抱えながらも平和でいられますね。いっそのこと壊した方が良いのでは?」

「どうやら、特級魔道具を壊した事例が無いみたいで、壊したときに何が起こるのか分からないそうである。あんな膨大な魔力を持ってしまった地球の神秘。下手に扱えないのであろう」

「特級魔道具がこれからの技術の進歩に関わってくるかもしれないしね。発展と衰退は表裏一体ということなのかしら」


 人類の発展に役立つと言えば聞こえはいいが、実際はどう扱ったらいいのかもわからない爆弾であったとは驚きだ。本来なら世界が手を取り合って解決するべき問題だが、皮肉にも外国を牽制するためのものとして役割を果たしてしまっている。特級魔道具を保有している数が多い国ほど力を持ってしまうようなことにならなければいいがな。


「それでは次に移るぞ。次は続けて二個説明する。『【JP-No.2】特級魔道具カトレア』『【JP-No.3】特級魔道具アザレア』。カトレアとアザレアは西暦XX年に日本の○○県の○○地方で同時に発見された特級魔道具である。カトレアとアザレアは膨大な魔力を宿した銃の姿をしており、一対の二丁拳銃になっている。カトレアは地形を変えてしまうほどの魔力を持ち、アザレアは攻撃が当たった対象の魔力を抑えることができる。これらの特級魔道具の成り立ちを説明するためにはとある勢力争いについて説明しなければならない」

「これまた凄そうな特級魔道具ですが、ここまで聞いた感じでは特級魔道具に指定されるほどの能力を持っているとは思えませんね」

「神話の一部を聞いている感じがして感動するな。これだから研究は止められないんだよ」

「全く持って同感ね。早くアンノウンも解明したいものだわ」

「続けるぞ。とある勢力AとBは争いを繰り広げていた。ある時、負け続けていたAはその憎しみと数多の犠牲を払い、特級魔道具カトレアを完成させた。カトレアの力は凄まじく、一夜にしてBは崩壊した。しかし、カトレアは人間が扱っていいものではなかった。周りに人がいなくなるまで暴走し続けるという特性を持ったカトレアは、次の日にはAをも崩壊させた。誰もいなくなった土地でカトレアを鎮めるようにBの無念を受け継いで出来上がったのが特級魔道具アザレアである。つまり、カトレアの本来の能力はアザレアによって抑えられており、アザレアの本当の能力はカトレアの能力を封印するというものであった。どちらを壊しても何かしらの災厄が降りかかる恐れがあるため、二つの銃は二丁拳銃として厳重に保管されることになったと書いてあるのだ」

「こ、怖いな。魔道具というよりはもはや呪物だな。こんなものが日本に存在しているとなれば、怖がる奴も出てくるだろう。情報を開示しないのは正解かもしれないな」

「技術が進歩すればもっと解明されて扱いやすいものにすることができるかもしれませんから、それに期待するしかないですね」

「こうなると世界の特級魔道具の情報も揃えて、tier表みたいなのを作りたくなってきたぜ。危険性をSからCとかで振り分けて、危険性の低いものから対処していくとか」

「人間の欲は底知れないわ。途中で誰かの手に利用されて、暴走して崩壊するのが落ちでしょ。こんな感じで厳重に保管するしか方法がないのかもしれないわね」


 そもそも特級魔道具自体が人間の欲求から作られたものと言っても過言ではなさそうだからな。ただ、歴史というものは同じ過ちを繰り返さないために学ぶものでもある。これ以上、この地球上に特級魔道具が増えないことを祈るばかりだな。


「それでは次で最後だ。『【JP-No.4】特級魔道具アルカナ』。アルカナは西暦XX年に日本海の海底で発見された特級魔道具である。アルカナは膨大な魔力を宿した西洋の剣の姿をしており、魔力濃度の高い自然界で偶然作られた特級魔道具であるが、なぜ日本海の海底に刺さっていたのかは分かっていない。アルカナの性能はとても高く、切れ味もさることながらその頑丈さは類を見ないほどだと言われている。固有の能力は今までの特級魔道具と比べても頭一つ抜き出ており、アルカナによって倒されたもの、壊されたものは地球上の記憶から抹消される」

「はい? 地球上の記憶から抹消される? な、何を言っているの?」

「地球上の記憶から抹消されるとは過去、現在、未来から、その存在をなかったものとして扱われ、どの記録にもどの記憶にも残ることがない。その存在の代わりに何かが入ることはなく、ただ初めからこの地球上になかったものとして扱われるようになる。一番恐れるべきは、今までアルカナによって何が抹消されたのかが分からないことである。アルカナが壊れてしまえば全ての記憶が戻る可能性があり、そのことによる人類への影響は計り知れない。よって、壊すこともできず、厳重に保管されることになったと書いてあるのだ」

「こ、怖すぎるぜ。世の中知らない方がいいことってあるもんだよな。だって、俺たちの歴史から抹消された何かがこの世界にはあるってことだろ?」

「悪用どころか普通に扱うことさえ許されないものも存在するんですね。はぁー、この世界が一気に不安定なものに見えてきました」


 知らない方がいいことっていうのはアルカナによって抹消されたものの中にでもあるのだろうか。いつか人類が向き合うべき時が来るのだろうか。今はまだ知るべきじゃないのかもしれないな。


「これで特級魔道具の説明は終わりである。一応アンノウンの説明もあるが、聞いておくか?」

「ええ、頼むわ。うちらの知らない情報を纏めてくれているかもしれないから」

「ではいくぞ。『【JP-No.5】特級魔道アンノウン』。アンノウンは西暦XX年に崎宮の天岩学園で発見された特級魔道具である。アンノウンの正体は分かっておらず、膨大な魔力を宿した何かとしか判明していない。アンノウンンは現在では開ける方法が発見されていない箱の中に入っており、その能力が何かも判明していない。箱と中身を合わせて特級魔道具とされているが、我々の見解としては特級魔道具は箱の中身だけであり、箱自体は上級魔道具に位置するものだと考えられる。箱を無理やり壊すことが可能であったとしても、そのことによって中身の特級魔道具が暴走してはいけないため、中身の正体が判明した場合のみ最終手段として執り行われると書いてあるのだ」

「そりゃそうよね。今までの説明を聞いて無理に開けようとは思えないもの。とゆうか最終手段を使うことになったらうちが駆り出されるってこと? 勘弁してほしいわね」

「まあ、誰も進んでやりたくはないよな。何があるのか分かったもんじゃないからな。ただ、十六夜が全てを解明してくれるんだ。心配しなくてもいいと思うが」

「そうだ十六夜。【知識欲ディザイア】の方はどうだ? 魔力の蓄積速度は上がったか?」

「うむ、少しだけではあるが蓄積速度が増したように思える。これなら確実に一か月以内で正体が判明するであろう。今日の会議は実に有用であったと言えるな」

「証拠と言っていいのか分からないけど、初めて十六夜のスキルの役に立てて良かったわ。これでうちも少しは満足できた」

「よかったよかった。それじゃあ、これ以上情報がないなら退出しようか。一応まだ、テスト期間だからな……」

「長内……もうちょっとだけ余韻に浸らして欲しかったわ……」

「係りの者が資料の枚数を確認する。それが終わったら今日は終わりである。汝ら、今日は本当にご苦労であった」


 特級魔道具はどれもおっかないものしかなかった。それはアンノウンも同じことなのだろう。このまま正体を判明させてもいいものなのか。特級魔道具アンノウンは、同時に特級魔道具パンドラであることを認識することとなった出来事であった。 

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