敵視
敵視
栃木に散々な目にあわされたあの日、演奏会から帰って来てから、絶望を絵に描いたようながっくりとした落ち込み方で、そのまま夜まで寝込んでいた。
あれほどにしおれ切って眠れるなんて思わなかった。もう二度とない一悟との共有する時間。あのような形で終わらせた美少女との結末。
演奏会から半年たっても体調は崩れたまま快復せず、何度も病院に駆け込んでは注射を打っていた。
たかだか十五歳の少女、一悟が原因でここまで病状は悪化する。演奏会で俺が何をしてきたのか、母が見かねて中学校へ電話をかけた。
すると栃木はなんと俺を敵視しているのである。
敵視?
電話は長くなり、話はこじれて、言い訳ですべてを塗りたくった栃木の主張はとにかく息子さんがすべて悪いのだからと話をしているらしい。受話器から漏れ聞こえてくるそのセリフに俺は思わず受話器を奪って、直情的に一言怒鳴った。
「お前さっきから何ボケたこと言ってるんだよ!情報流すよ!」
すると栃木は「ご自由に」と捨て台詞で受話器をガシャンと置いたのである。
何を勝ち目と判断したか。
俺なんかが持っている情報は、それが何か知らないけれど、どこへ流したってとり着に致命傷など与えなられるはずがない。吉崎なんてやつ、しょせんは二十年以上前のバカな卒業生。
「里子、こういう問題の解決の仕方も、卒業と言う呪文の効果の一つなの?」
「さあ、あたしも大人になったことはないしなあ、分かりません」
「俺もけちょんけちょんにバカにされたもんだよな。人権どころか、どうしてこうもいちいち他人の悪いように操作されるかなあ」
怒りの勢いで俺は電話機のプッシュボタンを押し始めた。電話の向こうは教育委員会。




