反抗
反抗
「……音楽をやる友達がいい。楽器が出来る人と友達になりたい。同じレベルで話せる友達がいい。管弦楽部のある学校へ進学する」
中学三年生、今まで訳も分からずに生きてきたけれど、そろそろ人生の選択を迫られる。進路を決めなくてはならない。
しかし、源次郎に対しての、これが自分としては精一杯の反抗なのか。意味不明の論理を展開して、高校の進路を考えた。管弦楽部のある学校だからと県立T高校を第一志望とする。
県立T高校の偏差値は58、そして第二志望のN大付属高校が偏差値64だった。どうして偏差値64の成績の自分が58の高校を第一志望に選ぶのか。第二志望の高校の方が偏差値は高い。
冗談で言っている様にも思えるが、本人はいたって本気でそう考えていた。
学力的にはいくらか学校を選ぶことのできる贅沢な立場の俺だ。ましてや偏差値58の高校などそこまで数字を落とすなどバカげている。たいていの高校には吹奏楽部がある。楽器が吹きたいのなら、どこの高校でも吹奏楽部にはいればいい。
「違う! 管弦楽部じゃないとダメなんだ!」
廊下で雅人ちゃんが叫んでいる。
「音大付属受からなかったら、俺、K高だよ!」
雅人ちゃんは学力が弱く、高校へは行かずに働くことも考えていたらしい。K高は偏差値30。甲子園で名を挙げたこともあるが不良のたまり場、教育困難校だった。
音大付属か。運命の女神は果たして微笑むのか?
このあと雅人ちゃんは音大付属から音楽大学へ。二十歳のときプロのコンクールで優勝、日本の代表的なホルン奏者へとなっていく。
「ヨシ君、俺の先生の演奏会行かない?」
男子トイレの中で半値にするからと雅人ちゃんに誘われた。あ、いいねと、俺はチケットを買った。トロンボーンの天使の音が頭の中で響き始めた。
都内にある、五百人くらいの大きさの中ホールへ行くと、三十代半ばのオジサンたちが五人、ステージに上がって金管五重奏を奏でた。
「天才になりたいなんて人は、僕は生徒に取らないいからね。楽しく吹きたいっていう人しかとらないよ」
やたら天才天才とマスメディアが連呼する中で、それもそうかと意表を突く先生なんだなと、そんな風に言う先生ってどのような人かと思っていた。楽しそうにブラスの音を鳴らしている。確かに面白い、この五人の金管奏者。




