転校生
転校生
うっとうしさばかりの学校生活、うだつの上がらない日々、そんなときに横浜から一人の女子が転校してきた。
「おーい、転校生だ」と担任の渡辺先生に連れられて、ぼさぼさ頭のさえない女子が登場した。やせ型の身長157cm、堀尾さんが不安そうな顔で入ってくると教室中はざわめいた。
まるでねっとりと暗い過去を持っているような、内気そうな女子だった。大きな瞳が、そろそろ切った方がいい、長い髪の毛から猫の目のように光って教室を見つめる。
実はそう言う暗さを持った人と言うのでは全くなく、転校先がどれほどの校内暴力であれている学校か、一体あたしはどういう所へ転校していっちゃうのだろうと、恐怖心を持っていたらしい。
しばらくは警戒していても、この平和な第一中学校。クラスの空気を知って、それほど危険な場所でもないと知ると、打ち解けるにつれて、この女子は本性を表すようになってきた。
すると転校生、堀尾さんは第一印象とはまるでかけ離れた、あか抜けたハマの人だった。髪はきれいにパーマでもあてたように整えられ、言葉は軽妙に明るかった。
堀尾さん。これがまた可愛いんだ。さっぱりした顔で笑う、嫌みのない誠実さのある性格で、誰に対しても優しく向き合う。
社会の時間に貿易の勉強をした。性格はすでにあけっぴろげになっている。
「貿易か、懐かしい言葉だな」
堀尾さんは明るい声で言った。サッカー部の鮫島が応えた。
「ああ、堀尾って神奈川だもんな」
「ハマの匂いが恋しい」
修学旅行へ行ったとき、集合写真で一番端に立っていた堀尾さんは体が半分枠の外に切れて写っていた。転校生の堀尾さんは、まだクラスに身の置き場が決まっていないのか、生徒が並ぶとき、どこに立てばいいのか分からず、そのうちカメラの用意が出来てみんなに取り残されていた。
慌ててフレームの中に入ろうとしたものの、しかし完全には入り切れず、不安そうな表情でシャッターは切られた。
「なんか不吉なんじゃないの? 修学旅行で体半分映らない写真を撮られた生徒は早死にするって」
みんなにそうからかわれる。堀尾さんは恐怖におびえながらも「これでも一生懸命写真に写ろうとしたのに」と言って回るが、すると輪をかけて霊に乗り移られているだの、呪われて不吉な人生が待っているだのと、盛り上がって笑われた。
修学旅行では安達さんがカメラを持っていて、プライベートで写真を撮っていた。その中に就寝前の裸足もあらわにウォークマンを聴いている堀尾さんの姿があった。その可愛さにどうしても写真が欲しくなってしまった。安達さんに恋文のごとく手紙を書いた。
「写真のネガを貸してください」
すると安達さんは、自分が好きだと言われると思って数日間、告白を待っていた。俺の目当てはすぐにばれた。
「ヨシ君ってひどい人ね」
安達さんは怒ったように笑った。
授業中、安達さんが他の数人と英語のレポートを生徒に返すように先生に頼まれた。そのとき机の上で俺の開いていた英語のノートに、ポンと安達さんが写真のネガの入った手紙を放り込んで立ち去った。
はっとした俺はとっさにノートを閉じて、誰にも悟られなかったか、瞳だけであたりを見回した。
機密情報をスパイのように敵国から奪取する。安達さんは何事もなかったかのようにレポートを配っていく。




