何十年
何十年
朝の登校時間、Ⅿ駅のプラットホームに立つと、灰色の気分が心に立ち込める。中学校へ登校するために、T駅まで電車に乗った。
見上げると覆いかぶさるように、片側二車線の大きな陸橋が駅舎を乗り越えていく、その腹の緑色のペンキに塗られた鉄骨が、車の走る音を轟音で響かせる。鬱々と電車が来るのを待っていた。
雨がしとしと降っている、冷たく湿気の高い空気を吸っていた。鼻につんと来る初冬の空気。雨糸をぼんやり見つめている。悲しげなほど凛として、皮肉にも新鮮でさえあった。来週は誕生日、十四歳だった。
……何十年たったら楽になるんだろう。
突然に脈絡もなく、なぜかそんな考えが頭に浮かんだ。何十年? これからそんなに長い間、俺は何を苦しみ続けるつもりなのか?
上り電車がまっすぐに走ってくる。目を凝らすと直線の線路の向こうに隣の駅が見える。暗い日なので電車はヘッドライトを灯していた。
この頃、朝の起き抜けはいいが、そのあと五分もたたないうちに酸素ボンベが欲しいくらいに呼吸が苦しくなる。一日中呼吸困難で、それでも振り返れば、中学生の頃は学校へ通って受験勉強も頑張れただけ、マシというものだった。高校では過緊張で校舎に入れなくなり、それが理由になって不登校生になる。
電車がホームに停車して、ドアが開けば暖房がついている、満員の車内は暑かった。たとえ五分間の乗車と言っても、自分とは関係のないこの大人たちの乗っている車内にぎゅうぎゅう詰めにされると自分とは関係もない大人たちの乗っている車内にギュウギュウ詰めにされると、胃が痛くなって吐き気がする。
タバコを吸っているオヤジの煙の臭い。ろくに歯も磨いていないサラリーマンの口臭。すし詰めにされた男たちの、人生どこを見つめて生きているのならいいのか、どうにもあてどのない視線。
肘を上げるとOLの胸にあたって、あ、人生始めて女の胸に接触したと思ったら、その胸はぺこぺこ潰れる。パッドだった。
T駅について電車から吐き出されると、頭に鈍痛がして、ひざを曲げないおかしな歩き方で改札口を通り抜ける。




