中学生論者
中学生論者
「里子、実はこういっていながらも、俺は源次郎を信じて期待していたんだよ」
あの頃は、もしかしたら源次郎は本当に凄い大天才で、偉人伝にある逸話のように、子供の頃にはこんなにバカでボケたナスのようなキャラクターに見えていても、いずれ源次郎は優れた人格者となり、危機に陥った日本国の救世主となる。そんな大人物となる予感がしていた。
だから俺はたとえ自分の命と引き換えにしてまでも、小曽根源次郎が日本の第一級の天才になるまで、源次郎に最大限の力を貸し続けようと誓っていたんだ。
「……。は?」
里子は完全にこの話を聞いちゃいねえ。毛糸で編み物をしている。あたしマフラー欲しかったんですよ。冬までに編み切れるかなあ。先生も一悟にマフラー編んで欲しいんじゃないんですか?
「言いたいことがあるなら頭の中で整理してから話せ! と言ったら、ヨシ君は何も言わなくなっちゃったよ!」
井ノ原がそう言って醜く浅黒い顔の、180センチの巨体でゲタゲタ笑っている。
偏差値が七十二の源次郎と六十四の俺とでは、知能の釣り合いを取れと言うのが土台無理な話だった。限界を超えて必死に努力したからと言って、その努力のままに頭脳が急激に機能を上昇させるなど、都合のいい話もない。俺が源次郎についていくことは、結局不可能なことだった。
そして学年が三年に上がる春先あたりに、クラスの中で、この物理の天才人間、井ノ原や、偏差値七十の倉沢などと言う頭のいい同級生が源次郎の話に興味を持って、一緒に音楽や、芸術、文学の話をするようになり、この中学生たちで論戦の輪が出来た。




