野生のバニーガール:1
|д゜)チラッ
6時限目の終了と同時に降りだした雨に万感の思いで中指を突き立て続け、帰りのホームルームを終えたアメリカンタフガイの長篠くん(両利き)です。
しきりに傘の心配をしてくるメカクレさん(優しい)に紳士の7つ道具たる折り畳み傘を見せびらかし、絵里奈ちゃんさんに冷たい視線を向けられ(優しくない)1人帰路についております。
周りに視線を向けてみれば、同じように傘や雨合羽を用意している勝ち組(俺)。その勝ち組に縋りつこうとする子羊。ノーガード戦法の負け組(ちなみに従姉はこちらである)。まさに人生の縮図である。存分に勝利の愉悦を噛み締める。あ、そこ!親を召喚するのはルールで禁止だろう!チートだ!チート!審判に抗議してやる!
色とりどりの傘と多すぎじゃね?となる程に様々な学制服の群れが早足で行き交う街。
大手から個人までの文房具店が鎬ぎを削り、バランス特化型の大手本屋と一転特化型の個人本屋がこれまた鎬を削り、帰宅部狙いの軽食屋が声を張り上げ、部活帰りの腹ペコ共を迎え撃つ為の仕込みを始めた精肉店や惣菜店の堪らない匂いが鼻をくすぐる。今日はお前の奢りだという声が、今月ピンチだけど新刊…がという声が、ダルそうな顔をしてアルバイト先のハンバーガーショップへ向かうバイト戦士。ごめんあそぼせと優雅にアニメショップへとエントリーしていくお嬢様方。胸のさらしが緩んだのか胸を押さえて慌てた様子の男装娘。雨の中ランニングを強行するドッチボールガチ勢の皆さん。
そんな一幕がありふれた光景である場所、学園都市。
その喧噪とは若干離れた場所である公園。ウチの高校の生徒なら近道公園で通じる程度には知られている公園。その公園で、俺はバニーガールと向かい合っていた。
「……。」
「……。」
栗色の髪を肩より長く伸ばし、艶めく唇と抜群のスタイルを惜しげもなく見せつける美女あるいは美少女。けれど、それらを台無しにする表情。どれだけ雨に打たれたのかウサミミなどは完全に萎れきっている。
シリアスな予感がする……!端的に言って俺には荷が重い……!
何故だ!今日に限って何故近道公園を誰も通らない!雨だからか!雨だからだなぁ!納得!俺も商店街経由しながら帰れば良かった!ドッチボールガチ勢の皆さんの姿が見えたからチクショウ!
「あー……」
「……。」
「誰か、待ってたりする系ですか?」
「……。」
「それとも、行くところがない系ですか?」
「……うん」
あらヤダ家出ウサギだわこの娘。電話しなきゃ、保健所に。
「ちょっとタイム電話する」
「……?」
荷が重いなら任せればいいじゃないという発想。頼りになる(と思いたい)今回限りの保健所に速攻で泣きつく主人公のクズ。せめてこれくらいはね、と傘に入れてやる。……まつ毛長いな!この人!
「どうも、ハンサムです……あ、ちょっ!切らないで!携帯の表示を信じて上げて!間違い電話じゃないから!え、知らない人って表示になってる?なんでそんなイタズラに手を尽くそうとするの!違う!そうじゃない!真面目な話なんだ!ウサギ拾ったんだけどどうすればいい?雨に長い時間打たれたのか反応が鈍いんだ。……うん分かった、そうする、待ってるわありがとう絵理奈……ってまた途中で切る最後まで言わせてほしいよなー」
絵理奈ちゃんさんってばこういうとこあるよなぁ。まぁとりあえず持って帰るか。
「行こうぜー」
「……どこへ?」
「聞こえてたろ?俺の家」
「……どうして?」
「聞くまでもなくね?」
「……何で?」
「どこに対する疑問なのかいまいち分からんけど、5W1H全部聞くつもりかい?こんな雨の中捨てられたように濡れてる君が悪いよなぁ」
そもそも人通りのいい公園のど真ん中に雨の中立ち尽くしたりしてる時点で確信犯だろうに。
「……ごめんね」
「そう思うならおとなしくついてきなさい」
あーまったくガラじゃない。こういうのはダメなんだ俺は。全部丸投げしてやるんだから!頼りになる絵理奈ちゃんさんに!そう言えばウサギ用のトイレ買ってから行くとか言ってたけどまぁ大した問題ではないだろう。
とにかくこうして、長篠(勇者)はウサミミ美女を家に連れ込むのであった!




