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男前ギャル:1&変幻メカクレ:2

「寧ちゃんって彼氏いるの?」


「ふむ、生憎と生まれてこの方、自分は殿方と交際したことはないよ」


「殿方って、寧ちゃんおもしろーい」


「い、意外だね春木さんって経験豊富だと思ってた……」


 今日も今日とて空き教室巡りを楽しんでいた俺こと、長篠君(17歳独身)は活躍の舞台を中庭へと移していた。途中、先輩達と思わしきカップル(両方とも女子だった気がする)の間にどうにかこうにか挟まろうと悪戦苦闘し、結局見つかり追いかけまわされたが、完全に撒いた。余裕である。何故か、名前を書いた学年指定スリッパが片方無くなっているが、まぁ大丈夫だろう。たまに家出するからね、お年頃かしら。

 対面のベンチでコイバナらしきものが始まりそうな空気だったので、横臥の体勢から前傾姿勢へと移行し、静聴の構えをとった。ちなみに対面のベンチとの距離は4メートル程。ばっちり正面に腕組みして座る真ん中の子、寧ちゃんと呼ばれるギャルと目を合わせながら俺のことは気にするな、と手振りで続きを促した。紳士的な俺の気遣いが憎い演出を生み出したのか、彼女が口を開く。


「無論、興味はあるがな。自分も女だ。」


「た、例えばどんな人が好みなの……?」


「それ気になる!」


「ふむ、好み、か……あまり考えたことはなかったな」


 なにやら考えだした寧ちゃんとやら。けれど俺と目は合ったままだ。こうなったらにらめっこの様相を呈してるぞ。私、負けない!

 金色に染めた髪をシュシュとやら(従姉が大量に持っている)でサイドテール?にして束ねてまとめ、ぱっちりとした目とすっと通った鼻筋、そして可愛らしい雰囲気。

一見して美少女と言い切れるだろう。だが、忘れてはいけない。この高校において美少女ということはつまり。


「そうだな、自分は背が低い。なので背の高い男性などはいいかもしれないな」


「おー!もっちゃんと一緒だ!」


「うん、えへへ……私も背低いからね……」


「さらに、物怖じしない剛毅な気質を併せ持ち、あらゆる困難を鼻で嗤えるような殿方がいいな」


「な、なるほど……?」


「急に難しくなった……」


 そんなスーパーマンみたいな奴そうそういるかと抗議したい気持ちを抑え、未だに視線を外さない不敵なパッチリおめめのギャルへの目線を強くする。初対面の異性をガン見するとか常識ねぇのか、コヤツ。目が合ったってだけで裁判沙汰になった事例もこの世にはあるというのに。


「うむ、自分のことより森さんと林さんはどうなのだ?」


 なるほど、中央の美少女が寧ちゃん。左のおどおどした子が森さん。右の頭軽そうな子が林さん、と。

ふむ、自然属性トリオとでも思っておけばいいか。お前は黙ってマナでも貯めてろとか言ったら暴言になるのかしらどうかしら。多分セーフだと思うんですけど。ちなみに俺は、家帰って三段撃ちしてろとか言われたらその瞬間ドロップキックかます自信がありますね、はい。


「あーしはやっぱイケメン!ていうか必須でしょ!そんで……!」

「背が高くて、優しくて、こんな私だけを見てくれて……」


「うむ、人によってまるで異なるものなのか、興味深いな」


 女三人寄れば姦しい。ときめくことわざランキングトップ5には入ると思うのだがいかがだろうか。

ちなみに3位くらいに穴があったら入りたいがあります。どうでもいい?そうだね。

 突然語りだした森林コンビの真ん中の木は、二人を置いたまま何が楽しいのか全開で前傾姿勢のままの俺と同じ姿勢を取りはじめやがる。ずっと触れないつもりでいたが、この後輩、ずっと真顔のままである。

 おのれジンクスの体現者め!口調と見た目と性格が一致してねぇ!隣のトリップしてる二人を差し置いて対面の俺の方に注力しだすという暴挙。タフだこの女!限りなくタフな女だ!俺の童貞メンタリティーでは呑まれる……!


「……っ」

「……」

「年収800万は欲しいし……!」

「白馬の王子様……!」


 なにこの空間。ちなみにどことなく焦った沈黙を保っているのが俺である。焦った沈黙って何だよ。

何で俺は初対面の後輩女子と鏡合わせのようなにらめっこを続けとるのだ。どうしろというのだ。一体俺がなにしたってんですか!ただ森林ガールズのコイバナ堂々と盗み聞きしようとしたじゃないですか!堂々とした盗み聞きって何だよ。いかん、俺としたことがさっきから思考が空転し続けているのが分かる。何度同じこと言ってるんだコイツ!


「……何、やってるの長篠君」


 天の配剤!やはり普段の行いがモノをいうのですねゴッデス!メカクレ女神!ちなみに今日は姫カット(笑)メカクレ.verだぞ!強いぞ!


「人生の縮図ごっこ」


「訳、分からない」


「……(コクコク)」


「フッ、ところでどうしたんだい?」


「何かね、先輩が長篠君を探してるみたい」


「はて?心当たりがな――」

「スリッパ届けたいんだって」


「……(?)」


「……」


「長篠君?」


 まさか、まさかなクールになれ俺。まずは確認だ。たま、たまたまに決まってる。


「問題です」


「突然、だね」


「確かに」


 はいそこ(対面ベンチ)うるさいマジでうるさい。100歩譲って盗み聞きは許すが、いい加減そこの二人を黙らせてくれ。森の方は子供二人目に差し掛かったぞ。


「その先輩は女子である」


「ん……そうだよ」


「複数人である」


「合ってるよ」


「……もしかして、どこのクラスかわかっていなかったとか?」


「心当たりがあるようだな」


「うん、そうみたいだね……」


 寧ちゃん、平然と会話にまざってくるじゃん。そういうの嫌いじゃないよ。


「初めまして先輩。春木 寧と申します。お噂はかねがね伺っているが、噂以上だ」


「初めまして春木さん、幕井 美咲です。こちらこそ噂以上に可愛くて驚いてます」


「初めましてイケメンです。どちらかといえばハンサム寄りです」


「えっイケメン!?どこ!?」


「こっちの変な人は、長篠君です。変な人です、ズルいです」


「変な人というのは、理解した」


「……三人目の子までは大学に行かせてあげたいし……!」


「イケメン!イケメンは!?ハンサムよりって!?」


 やべぇ収拾つかない雰囲気だこれどうしよう。うーん、しょうがない強引にいくか。


「ハンサムな三人目の子は変な人だが大学にまで行ったんだよ。ズルいよね」


「何、言ってるの?」

「強引すぎる気もするが悪くない」

「三人目の子すごーい!」

「ハンサム……!その発想はなかった……!」


 よし、作戦成功。ちょろいぜ!


「改めまして問題です」


「なるほど問題というのは問いではなく」


「事柄、の方だったんだね」


「なに、なんの話?」

「……はっ、女の子がいないかも……!」


 見透かすな見透かすな。見えちゃう!俺の底が露呈しちゃう!


「その先輩方二人は今、どこにいるでしょうか?」


「どこ、って」

「うむ、分かりやすいな」

「えーヒントヒント!」

「……双子!?……」


「「後ろ」」


 なん…だと…?だ、誰の?


「やぁ」

「忘れ物だよ?」


 なーんだ、忘れ物かそれなら仕方ないな。さっきぶりですね先輩方。ご丁寧にどうもです。ご苦労様ッス。シャッス!お帰りはあちらですよ?え?あれ?どうして俺の肩を掴むんですか?えっちょっとどこ行くんですか?楽しい所?もしかして挟んでくれます?サンドイッチのハム枠希望なんですが。いいの!?やったね!お二人とも笑顔が眩しいっすね!ヒューッ楽しみー!



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