生足ミニスカート:2
少女の話をするとしよう。
彼女は美少女である。つまりこの学校のジンクスが適用される存在である。
肩甲骨あたりまでの黒髪のウルフヘアー。活発に動き回る彼女には、なるほどぴったりかもしれない。
身長は女子生徒平均より高め。顔だちは気の強そうな美人系。
後述する特徴に目を取られがちだが、彼女の胸部装甲は大変立派である。跳ねるように走る彼女の走り方と合わされば大変趣深い光景になる。実際にお見せ出来ないのが大変残念である。ばるんばるんである。
彼女を語る上で欠かせないのがここだろう。彼女は常に生足である。生半可の生足と一緒にしてはいけない。靴下すら穿いていないのだ。学校指定のローファーでも、学年ごとに色分けされたサンダルでも直履きの豪の物なのである。彼女のすらりと伸びた肉付きの良い足(健全な男子高校生には毒!)は彼女自身の美貌と合わさり一種の最先端ファッションと化している。俺が生足とかになってもくさそうという感想しか湧かないというのにズルい!
加えて彼女、びっくりするくらいミニのスカートをお召しになってらっしゃるのである。膝上とかそんなチャチなもんじゃなく股下、腰下レベルの破廉恥ガールである。初めて見たときは正気を疑ったものである。
完全に痴女なのである。疾走する痴女である。彼女のスカートの中を覗き見ようとどれだけの勇者が立ち上がり、そして散ったか……。
彼女が走る度、胸部装甲が弾み、スカートはめくれ、白く艶めかしい足が表情を変える。
男たちは、視線を釘づけにされ、夢を見て、唾を飲む。
教師陣に散々注意されても自分を曲げないその意思に敬意を表し、ここに名付けよう。
『生足ミニスカート』と。
「……あのなぁ、長篠」
「はい、なんざんしょ」
「俺さぁ、反省文書けっていったよなぁ」
「猛省してます」
「なぁんで原稿用紙二枚使って桐井のレビューしてんの?」
「ええっ!?」
「いえ、大根って言ったらダメっぽかったので。後『生足ミニスカート』です」
「反省してるのそこだったの!?『生足ミニスカート』って何!?私のこと!?」
「桐井うるさい。部外者は下がってな」
「私当事者なのに!?」
皆さんこんにちは。何故とは言わないが制服のズボンの股間部分にクリップを刺して何とかした者です。マイサンに当たらないように冷や汗垂らしながらでしたが、私は元気です。
現在時刻は17:12
とっくに帰宅部である俺の時間なのですが、何故こうして生徒指導室にいるのかと言われたらですね。廊下で騒いでいた生足ミニスカートに負けじと騒いでいましたら、二人揃って敢え無く放課後反省文コースに乗ってしまったわけですよ。
あまり得意ではない反省文ですが、書かされた経験だけは小学校時代から数え切れぬほどにあります。
大体のテンプレは出来ておりますとも。くっくっく新任生活指導教師一人くらいちょろいわ。
「あ~この学校のジンクスってのは?」
「この学校、やけに外見レベルの高い生徒が多いと思いませんでしたか?例えばそこの、『生足ミニスカート』とか」
「教師的にノーコメントで」
「じんくす?」
「……それ以前の奴もいますがこういうのがあるんですよ。『おバカを探したければ美少女を探せ』って」
「なるほどジンクスの体現者が」
「今、首を傾げてますね」
「えっなになに?」
「奇抜な格好したやつなら何人か見えてたが……」
「よく思い出してみてください。大体女子生徒だったはずッスよ」
「……うん?」「……いや?」
おおっと、旗色が悪いぞ。おかしいなぁ、こっちみんな。
「さぁ俺の方はいいでしょう。次は『生足ミニスカート』の方を見ましょうよ」
「いや、まったく良くないがな」
「誤魔化したねっ!というかそれ流行らせる気!?」
全力で流行らせるよ。ぴったりじゃん!我ながらネーミングセンス爆発してるよね。
「そのあだ名より名前のほうが少ないじゃんっ!どうして盛るの!」
「えー。じゃあ『生ミート』で」
「私食用!?略しただけじゃん!」
「じゃあもう『痴女』でいいよ」
「長篠君は私のお母さんか!」
「いや、そのツッコミはおかしい」
「でも私お母さんに事あるごとに痴女って呼ばれてるよ?」
「ロックすぎないかお前ん家。ちなみに父親からはなんと?」
「ぺんぺん草」
「なんで?」
どこから生えてきたんだぺんぺん草。どう見ても大根だろうに。
というかせんせーやけに静かだな。ツッコミは隙あらば挟みこんでくる印象なのに。
「せんせー、どうしたんスか」
そんな項垂れちゃってまぁ、まるで頭抱えてるみたいじゃないですか。
「……俺、この学校でやってけるかなぁ」
「どしたの先生。頭痛いの?保健室行く?ダメだよ夜更かししちゃ」
「おめぇが元凶だよ!」
「何でっ!?」
タイミング的に反省文かねぇ。どれどれ……。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん……
「こえーよ!何だこれ!」
危うく呪われるところだったわ!不意打ちにもほどがあるわ!
「反省文だよっ」
「今時幼稚園児でもしないわそんな開き直り!ていうか俺がさっき教えた漢字とか一文字も使われた形跡ねぇじゃねえか!」
2、3分に一度のペースで「ねぇねぇ」と話しかけてきていたのだ。真面目にやってんだなと思ってたのに!
「え~っとね」
「うん」
「……にへへ」
「ふはは」
「「は~はっはっはっ!」」
こいついつか絶対泣かす!絶対にだ!!
「……前任が諦めが肝心って言ってた理由が良~く分かったわ。今、心で理解したわ。」




