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Gold Plum ー 西多摩地区鎖国国家地帯 ー  作者: 宿り木
第二章 交錯 ~みのり&善郎の場合~
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頑固おやじ、角と行動をともにする(朝川)

≪ 山波善郎視点 ≫



「おい、いるか?」


 自宅の戸を開け妻に声をかけると、ほどなくして、はい、と奥から声が聞こえてきた。みのりたちと別れた後、善郎は芽衣子たちと神社を目指した。だが、肝心の古文書が手元にないことに気づき、一度我が家へと引き返したのである。


「会長からあずかった本を持ってきてくれ。紫の風呂敷に包んであるやつだ。卓袱台の上に置いてあると思うんだが」


 善郎は和子が顔をだす前に用件を叫ぶ。しばらくすると、はいはい、と答えた和子が、紫色の風呂敷包を持って出てきた。


「これでいいんですか?」


 尋ねながら風呂敷包を渡してくる和子に、善郎は頷く。


「ああ、すまん」

「卓袱台にはありませんでしたよ。座布団の横に置いてありました」

「……そうだったか? すまんな」


 間違いを正されしかたなく素直に謝ると、妻がふふふ、と笑い声を洩らした。


「まだどこかへ行くんですか? 夕ご飯はどうします?」


 重ねて問いかけてくる和子に、善郎はああ、と肯定する。


「ちょっと野暮用でな。夕飯までには戻る」

「はいはい」


 答えながら、和子が玄関から外を覗き込んだ。車の中から顔を出して様子を窺っていたらしい飛田が、頭を下げる。その後ろからは助手席にいる芽衣子が軽く手を振っていた。


「あらあら、ずいぶんと仲良くなられたんですねえ」

「なってねえよ。成り行きだ」


 つっけんどんに答えると、和子が口元に笑みを浮かべてくる。善郎はいってらっしゃい、とお辞儀をする妻へ小さく鼻を鳴らし、芽衣子たちの待つ車へと向かった。


「で? 俺たちはどこに向ってるんだ?」


 河間の不知から川沿いに下へと向かって走る車の中で、善郎はおもむろに口を開いた。


「そうですねえ。とりあえず、まだ使われていなさそうな神社へ向かおうと思うんですけど」


 カーブを曲がりながら答えてくる飛田の運転には、危なげな様子が少しもない。


(気に食わんな……)


 角があるくせに芽衣子より運転が上手いとは。善郎は徐々に高度を下げていく窓の景色を眺めた。


「お義父さんはどこだと思うんですか?」

「そうだなあ。神社なんて梅願さんか墨良さんくらいしか思いつかん」


 腕を組んで唸ったところではたと気づく。


「おい、角! 俺はお前の父親じゃあねえぞ!」

「え? だ、だから、それはですね」

「認めん! 断じて認めん!」

「そ、そんな、横暴な……」


 飛田が耳をぴくぴくとさせながら不満げに言葉を詰まらせる。それでも再度口を開こうと息を吸う飛田の頭を見ながら、善郎は、上等だ、と構えた。


「もう! 2人ともいいかげんにしてよ! 今はそれどころじゃないでしょ!」


 ずっとだんまりを決め込んでいた芽衣子が一喝してきた。善郎は呻いて、ミラーごしに睨んでくる芽衣子に詫びる。


「悪かった。お前の言う通りだ。角、お前の知ってる神社に案内しろ」

「わかりました。……て、あの、でもちょっと問題があるんですけど……」

「あん?」


 言い辛そうに語尾を濁す飛田の言葉に、善郎は片眉を上げる。


「言ってみろ」

「言ったら怒りませんか?」

「言わなきゃ話が進まんだろうが!」

「……はい」


 おどおどとする飛田へ一喝すると、飛田が重い口を開いた。


「今向かってるところは柚祈(ゆずき)なんです。僕が知ってる神社って、そこらへんにしかないもので。……つ、つまりその……」

「な、なんだって!」


 言葉を詰まらせる飛田を前に、善郎は絶叫する。


「す、すみません!」


 飛田が車を急停止させる。


「柚祈って言ったら獣人の住処じゃねえか! 冗談じゃねえ!」


 善郎は車を降り宣言した。


「お、俺は帰る! 帰るぞ!」


 降りてきていた坂を上ろうとしたところで、腕と肩を強い力で掴まれる。


「お、落ちついてください!」

「そうよ、お父さん! 今可能性があるのは行ったことのない場所なんだから!」


 2人が必死に追いすがり説得してきたため、余計に怒りが増した。


「ええい! 離せ! 離すんだ!」


 善郎は力の限り叫び、これでもかと身を捩る。


「お父さんってば!」

「うるさいうるさい!」


 車の前で必死に抵抗を試みていると、上空から小さく黒い影が走った。

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