お嬢さま、製本屋一家を味方にする(高木)
≪ 梅宮みのり視点 ≫
「わかりました! この芽衣子にお任せください! 必ずや新たな鍵を手に入れてみせます!」
胸に手をあて意気込む芽衣子の姿に山波の面影を感じ、笑みがこぼれる。
「良かった。ふふふ、芽衣子さんって山波さんにそっくりですね」
「本当に。娘さんは男親に似るっていうのは本当なんですね」
『似てません!』
碧が感心するように頷く。すぐに山波親子に否定された。
「ま、まあまあ。2人とも……」
反目し、動かなくなった山波たちの間に飛田が入ろうとする。しかし、睨み返され怯んでいた。
「似たもの同士」
紅が怒り方まで完璧に揃った山波親子の行動を見て漏らした呟きに、みのりはくすくすと肩を揺らす。
「ははははは……」
睨まれたときの影響がまだ残っているのかもしれない。飛田が顔を引きつらせて笑っている。
「おっと、お嬢様。悠長な時間はないようですよ」
碧が上着の内ポケットからおもむろに取り出した携帯を片手に、こちらを見た。
「もしかして」
「追手ですか?」
こちらの言葉を被せるように、飛田が後を繋げた。緊張感が一気に高まる。みのりは、唾を飲み込んで碧の返答を待った。
「えぇ。今度はB班がこちらに再び近づいてきているようです」
今さらながら、この男はどこからそんな情報を取得しているのだろうか。
(碧が味方で本当に良かったわ)
苦笑まじりのため息を漏らすと、山波の焦ったような顔と目が合った。
「逃げますかい?」
「そうですね。山波さん。これをお渡しします」
山波へ持っていた箱を渡す。
「お任せください」
「お願いします」
みのりは、しっかりと箱を握りしめた山波の目を見つめ頭を下げた。
「はい! ……おい、お前たち! 行くぞ!」
「お父さん! ちょっと待ってよ! もう!」
脇目もふらず走って出て行った山波を追いかけるように、芽衣子も部屋から去る。
「め、芽衣子ちゃん! ……じゃ、じゃあ、僕らは行きます!」
出遅れた形となってしまった飛田がこちらに会釈し、慌てて2人を追いかけて行った。山波たちがいなくなり、急に宝物庫内が静まり返る。その静けさにみのりは心細くなった。紅が心配そうにこちらを窺っている。
「お嬢さま、大丈夫。ずっと一緒」
「そうですよ。彼らが失敗しても僕の紅がいれば大丈夫です」
自信満々に胸を反らしながら放つ碧の言葉に、体の力が抜ける。
「それを言うなら、『僕と紅』でしょう。紅一人に押しつけようとするなんて信じられない」
「押しつけるだなんてとんでもない。僕の紅は無敵なんですよ? まぁ、僕も微力ながらお手伝いはしますがね。ってことで、そろそろ僕たちも行きましょうか」
「えぇ」
側近の顔へ戻った碧に頷き、みのりは残った方の桐箱を掴んだ。そして宝物庫を入る前と寸分違わず元に戻し、何食わぬ顔で根合寺を後にした。




