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Gold Plum ー 西多摩地区鎖国国家地帯 ー  作者: 宿り木
第二章 交錯 ~みのり&善郎の場合~
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頑固おやじ、複雑な思いに囚われる(朝川)

≪ 山波善郎視点 ≫



 狭い路地を走り、追っ手を撒く。獣人化した紅が黒服たちを牽制してくれたおかげで、善郎はなんとか無事に根合寺の近くまでやって来ていた。だが、善郎は紅へ素直に礼を言う気にはなれずにいる。紅が獣人だったという事実が、どうにも納得できないのだ。


「まさかあんたが獣人だったとはなあ」


 苦々しく告げると、紅がちらりと振り返った。


「何か問題?」


 冷めた目で見てくる紅に、善郎は吠える。


「問題って! そりゃあんた、獣人と俺たちゃあ仲良くはねえだろうが!」


 鼻息を荒くして紅へ捲し立てるのへ対し、紅が冷静に答えてきた。


「おじさん守る。お嬢さまの命令。危害加えない」


 冷え冷えとした瞳で告げてくる紅に、善郎はさらに苛立つ。


「ったりめーだ! そんなことを言ってんじゃねえよ! 気持ちの問題だ! 気持ちの!」


 胸を指差して主張すると、これだから人間は嫌いだ、という紅の呟きが聞こえてきた。善郎はぐっと言葉を詰まらせる。だが、ここで負けるわけないはいかない。善郎は視線を外し、しかも、と批判を続けた。


「あんた、どう見ても鶯とかの梅宮家子飼の獣人たちとは違うみてえだし」

「関係ない」

「関係ない訳ないだろうが! 獣人だぞ! 獣人っていやあ、あれだよ! 角だろうが!」


 言い訳がましいとは思ったが、どうしてもここは譲れない。善郎は仁王立ちで怒鳴る。だが、紅は心底面倒臭そうに溜め息を吐き、話を転じてきた。


「そんなことより、この坂のぼる。すぐ根合寺」

「そんなことよりってなんだ! そんなことじゃあねえだろうが!」

「おじさん、口より足。早く」


 善郎は地団駄を踏んで自論を貫くが、紅は無視してさっさと歩き出してしまう。


「俺のどこがちんたらしてるってんだ! ええ?」


 後ろから喰ってかかると、紅が振り向きもせずに短く告げた。


「おじさん、兄さん以上にうるさい」

「おう! うるさくて何が悪い! 俺はな、うるさくてなんぼなんだよ!」


 低い後ろ頭に向って声を張るが、紅にぴしゃりと言い放たれる。


「意味わからない。静かに、追っ手くる」


 紅が小さく吐息を吐き、それに、と続けた。


「アタシ、角ない」


 紅の言葉に善郎は瞳をまばたく。


「なに? 角はないのか?」

「当然。猪に角ない。あったら邪魔」


 尋ねた言葉に淡々と事実を告げられ、善郎は額を叩いた。


「そうかあ、そうだったのかあ! いや、悪かった! そうか! 角はないのか! いや、こりゃめでたい!」


 紅が階段の前で立ち止まり、首をかしげる。


「おじさん変」

「まあまあ、いいってことよ!」


 善郎は紅を促しながら階段を上った。


「わかった」


 律儀に頷く紅へ微笑み段を上がると、やがて根合寺の門扉が見えてきた。


「お嬢さま、来るまで待つ」


 紅の言葉に、そうか、と同意する。そのまましばらく待っていると、2台の車がやってきた。紅が車に駆け寄っていく。


「おう。みのり様たちも無事に着いたようだな。ってあれ? 一台多くないか?」


 善郎は疑問に思いながらも紅へ続いて車へ近づくと、目前で2台の車が急停車した。

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