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Gold Plum ー 西多摩地区鎖国国家地帯 ー  作者: 宿り木
第二章 交錯 ~みのり&善郎の場合~
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頑固おやじ、小さな護衛を得る(朝川)

≪ 山波善郎視点 ≫



(こんなちっこい女の子が護衛とはねえ)


 善郎は前を行く小さく細い背中を見ながらしみじみと思った。


(まあ、小さな子でも大丈夫なくらいの試練ってことなのかもな)


 1人納得して、話しかけてみる。


「こっちには追手がついてきてないみたいですなあ」


 だが、望んでいた答えは返ってこなかった。それでも善郎は諦めきれず、もう一度紅へ問いかける。


「みのり様たちは大丈夫なんでしょうかね?」



 頼むからなにか答えてくれ、と善郎は内心で願った。親しくない人間とともにいるのは存外疲れる。それが自分よりも小さな子どもであれば猶更だ。いざという時には自分が守らなくてはならないのだから。善郎が重い溜め息を吐いていると、前方から淡々とした声が聞こえてきた。


「兄さんいる。大丈夫」


 言葉短に答えてきた紅が、「それより、こっち」と宣言して細い路地へ入り込む。


「おおっと」


 よろけながらその後ろについていくと、今度はここ上る、と無機質な口調でフェンスを指差した。


「ずいぶん信頼してるんですなあ、あのお兄さんのことを」


 善郎はフェンスをよじ登る。ふと思いたった考えを口にしてみると、紅が振り向き首をかしげてきた。


「信頼? わからない。大丈夫、いつものこと」


 淡々と見上げてきたその面に、善郎は軽く眉を寄せる。どうも話が噛み合っていない気がする。


(今の若い子っていうのはこんなもんなのか?)


 疑問に思いつつフェンスから降り立つと、紅が足元を指し示してきた。


「おじさん、そこ危ない」


 見ると、フェンスの網が壊れてる箇所がある。


「おう? ありがとう」


 素のまま礼を言い、はたと嫌な予感が頭を掠めた。


「もしやとは思いますがね、あんたもお兄さんが好きなんですかい?」


 善郎は壊れたフェンスに気をつけながら紅へ近づき、問いかける。だが、紅は淡々とした口調を崩しもせず端的に答えてきた。


「アタシ好き、お嬢さま」


 紅の言葉に善郎の思考は停止する。


(お嬢様が好き? なんだ、それは? まさか前にたっつあんが言っていた同性愛とかいうやつか?)


 もしそうなら一刻も早く更生させなくては。善郎は動揺する心を抑えて前方の紅を見つめた。


「おじさん、早く」


 紅が立ち止まり、振り返る。急いで頷くと、こっち、と愛想のない言葉で草に覆われた路地裏を示してきた。


「え、ええっと……」


 ためらっているのをよそに、紅が道なき道を突き進む。善郎は溜め息を吐き紅の後を追った。無言の小さな背中へ向かい、おもむろに問いかける。


「あのー、つかぬことをききますがね。あんた、みのり様に恋してるってことですかい? 女ですぞ?」


 言外に非難を込めつつ尋ねるも、紅は振り返りもせずに答えてきた。


「恋? お嬢さま、命の恩人。1番好き」


 淡々と応える紅の態度に、善郎は胸を撫で下ろす。


「なるほど。じゃああんたはかなりまともなんですな。それはよかった! 本当によかった!」


 安心からしみじみ告げると、紅が立ち止まり首をかしげてきた。


「あの、つまりだねえ……」


 訳を説明しようと口を開いたその途端、紅がピクンと身体をこわばらせる。どうやら何かに反応しているらしい。


「隠れて!」


 鋭い声で告げられ、善郎は紅に言われた通り地を這う。


「い、いったい何が?」


 草の中へ隠れながら紅に説明を求めると、左側にあった生け垣の側へと引きずり込まれた。


「人の気配。追っ手……」

「はあ。よくわかりますなあ、そんなことが……」


 小声で語る紅に感心して彼女を見ると、善郎は絶句する。紅の手から茶色い体毛が生え、爪も鋭く変化していた。


「じゅ、獣人!」


 目を瞠る善郎の前で、紅の手はさらに変化していく。


(じょ、冗談じゃねえぞ!)


 内心で絶叫していると、複数の足音が近づいてきた。


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