お嬢さま、別の場所を思いつく(高木)
≪ 梅宮みのり視点 ≫
「そうだわ! そうよ。たしか根合寺というお寺にずっと青い実の梅の木があるのよ」
古文書に書かれてある通りの場所を思い出し、気分が高揚してくる。だが、そんなこちらに対し山波が水を差してきた。
「し、しかし、それでは神社じゃないじゃないですか?」
何を言いだすかと思えば、そんな些末なこと。みのりは、自分の考えが正しいと確信しながら山波の疑問に応えた。
「確かに神社ではないですけど、そのお寺は古い時代からうちの神社と縁があるんです」
「は、はあ……」
納得できないようだ。彼はあいまいに頷きながら碧を見る。
「お嬢様のおっしゃっていることは本当ですよ。根合寺の土を一時譲っていただいたことがあるくらいですからね」
笑顔で応える碧を見て、やっと得心してくれたみたいだ。自分よりも碧の言葉で考えを変えられたのは、若干腹立たしく思うが仕方ない。自分が未熟だということなのだろう。
(でも、あんな露骨に安心した顔をしなくても良いと思うのよね)
面と向かっては言えない文句を内心で吐露する。山波の上擦ったような声が聞こえてきた。
「で、では、そこにこの植木を植えればなんとかなる、ということですか?」
無意識に睨みつけていたのかもしれない。山波のこちらへ視線を合わせないように目線をずらす姿が、大人に怒られている子供のようでおかしかった。大の大人を脅し続けるのもよくないだろう。みのりは、機嫌を直して山波の質問に応えた。
「いえ、それはわかりません。でも古文書が示している場所が根合寺ならば、きっとそこに何かがあるはずなんです。……ただそのお寺にある梅の木は1本なんです。だから『青き梅の森』にならないんですよね」
ついさっきまで間違いないと思っていた自信が、急に心許なくなる。本当に根合寺で当たっているのだろうか。みのりが顔を俯かせると、腕を組み考え込んでいた山波が口を開いた。
「『もり』は『森』ではなく『守』なのではないでしょうか?」
みのりには彼の言っている意味がわからなかったが、碧には理解できたらしい。拳を作った右手を左手で包み込むように叩いた。
「そうか。『青い梅の森』じゃなくて『青い梅を守っている場所』を差しているのなら辻褄が合いますね」
「では、さっそくその根合寺へ行きましょう!」
彼らが導き出した結論のおかげで、萎れかけていた自信が一気に復活する。
「そうよ。絶対そうよ。さっそく根合寺へ行くわよ」
みのりは、心配気な顔でこちらを見ていた紅へ笑いかけた。
「おう!」
山波の掛け声とともに動き出そうとしたが、碧の言葉がそれを阻んだ。
「お嬢様と山波さんは気が合うのですね。良いことだと思いますが、その前に埋めたものを掘り返さなくてよいのですか?」
「あ、」
言葉につまる自分の代わりに、山波がこんもりと盛りあがった場所からゼンマイに似た植物を掘り返そうとしていた。




