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Gold Plum ー 西多摩地区鎖国国家地帯 ー  作者: 宿り木
第二章 交錯 ~みのり&善郎の場合~
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お嬢さま、製本屋の誤解を正す(高木)

≪ 梅宮みのり視点 ≫



「兄さん……?」


 みのりは、胡乱な目で碧を見つめる山波を見て焦る。早く訂正しなくては。


「あ、違うんです。兄妹なんですけど血は繋がっていないんです」


 血縁関係ではないことさえわかれば問題ないだろう。それでも人によっては敬遠するかもしれない。山波がそのどちらに入るかはわからない。今はまだくすぶっている程度だが、いつ噴火してもおかしくない状況だ。今なら別の話へ切り替えて、爆発を未然に防ぐことができるはずだ。しかし、その考えは碧のせいですべて水の泡となった。


「そうなんです。ですから結婚だってできるんですよ」


 恍惚と話す碧に、みのりは舌打ちをしたくなった。


(何、余計なことを言っているのよ! これじゃ火に油を注ぐようなものじゃない)


 案の定、山波が食いついてきてしまった。せっかく、鎮まりかけていた山波の熱が再度上昇する。しかも、先ほどよりもさらに熱くなっているようだ。こめかみに血管が浮き出ていた。


(あーあ、血管切れても私は責任取らないからね)


 全責任を碧へ委ねてしまおう。みのりは山波のことを碧へ任せ、傍観者になることに決めた。


「しかし、血がつながっていないとはいえ、兄妹じゃあないですか!!」

「それが何か?」


 山波は、碧の冷笑に怯むことなく人差し指を立て何やら説得し始めた。


「いいですかい? 結婚は相手が遠すぎても近すぎてもだめです! それだけは絶対にダメなんだ!」

(いきなり結婚の話? もしかしてこのおじさん、結婚にすごく苦労したのかしら?)


 必死に話す山波の姿が不憫に思えてきた。しかし、碧の応酬は続く。


「僕の紅を思う気持ちに、そんなもの一切関係ありませんよ。大切なのは、お互いがどう思っているかでしょう?」

「碧の場合は一方通行じゃない」


 正論を言っている碧へ、突っ込みを入れる。だがその声は彼らの耳には届かなかったらしい。


「そんなのは茶番ですな」


 山波は、聞く耳持たずと言ったふうに、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。


「そうですね。そんなものは当事者だけがわかっていれば充分ですからね」

(そもそも碧の場合は、紅に伝わっていないじゃない)


 彼らの恋愛談義に、いい加減厭(あ)きてきた。みのりは気づかれないよう欠伸をかみ殺す。すると、山波が急に頭を掻き毟り始めた。


「俺は認めん! 認めんぞ! 芽衣子!!」


 突然の喚き出した山波に、目を見開く。おそるおそる声をかけた。


「あの、山波さん?」

「絶対、ぜったいに……ってあれ?」


 こちらの声が聞こえたのか、我に返ったようだ。それでもまだ安心できず、みのりは窺いながら話しかけた。


「大丈夫ですか?」

「いや、あ、はい。あは、あははははは」

(この人を仲間にして良かったのかしら)


 頭をかいて誤魔化す山波を見ながら、みのりは一抹の不安を感じた。

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