お嬢さま、2つ目の種を植えに行く(高木)
≪ 梅宮みのり視点 ≫
翌日。登校時間を少しすぎた頃にみのりたちは、辺鄙な駐車場へ着いた。
「ちょっと碧! なんでこんな場所に車を停めるのよ」
みのりは車から降りるなり、運転席にいる碧へ向かって怒鳴りつける。てっきり昨日と同じように墨良神社近くにある駐車場へ向かったとばかり思っていたのだ。それなのに車から降りると、駐車場とは名ばかりの空き地のような場所に自分たちの車だけがポツンと存在していた。最後まで車に乗っていた碧が黒いスーツを翻しながら車から降りてくる。そして、しれっとした顔をこちらに向けてきた。
「いくら昨日警護車を欺いたからと言っても逃げ通せたわけではありませんからね。正面から墨良神社へ行くなど、正気の沙汰ではありませんよ」
家出中でも、碧の服装は普段となんら変わっていない。対して自分たちと言えば、学校を自主休校している時点で制服は逆に目立つと言う理由から私服を着ている。
「だからって、こんなところに来なくても……そもそもここはどこなのよ!」
みのりは、白いドット模様がついているブルーグレイのパーカーのチャックをあげながら、彼の物言いに納得できずグチグチと文句を垂れた。
(紅はあれで寒くないのかしら?)
七分丈とはいえ上着もなく、白地に紺色のドット柄がついたシャツ1枚だけだ。しかも、自分とお揃いの黒いジーンズをロールアップにして足首を晒している。
(お腹壊さないといいけど……)
そんなどうでもよいことを考えていると、碧がこの駐車場を選んだ理由を話し出した。
「ここは、墨良神社の第三駐車場ですよ。普段滅多に使われることはないようですが、ここから歩いて10分ほどしたところに墨良神社へ続くわき道があるそうですよ。正面からではなく裏道から入れば、万が一追っ手がいた場合でも逃げられますからね」
お嬢様ももう少し考えてくださらないと。言葉の端々からそんな意味合いが聞こえてきた。みのりは腹を立てつつも納得し、裏道から本殿へ向かおうとする。すると急に紅が立ち止まった。
「紅、どうしたの?」
「同じ香り。いい匂い」
紅が白い大き目の帽子を右手で抑えながら鼻をクンクンさる。みのりも彼女に倣って嗅いでみるが、全く匂わなかった。
「えっ、どこ? 私にはわからないわ」
「あっち」
突如、紅は神社とは逆方向へ走り出す。彼女の突然の行動に驚きながらも、みのりは紅の鼻を信じた。紅を追う形でついて行く。いくつかの通りを曲がると、自分の鼻でも認識できるようになった。匂いの先に、全身が黒で統一されたずんぐりとした男性の後ろ姿が見える。
「ちょっとすみません」
みのりは、なかなか縮まない男性との距離に思い切って声をかけた。




