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昼食を食べ終えて、ブランと並んで片付けをしていた。「ドォン!」と大きな衝撃音と共に、ブランの家がグラグラ揺れた。
「きゃっ、なに?」
「……ヒーラギ、大丈夫だ。これは竜人のヤンがドラゴンの姿で、ココまで飛んできただけだから」
ドラゴン⁉︎ ――ブランへ行こうと言う前に玄関が乱暴に開き。短い黒髪のいかつい男性が、同じ黒髪の綺麗な女性をお姫様だっこをして現れた。
「〈ブラン、ロンとスラに聞いた! ……人間の世界にいた、最強聖女がココにいるって、本当なのか!〉」
ブランの家を揺るがす声にヒーラギは驚き、耳を抑える。隣のブランもモフモフの耳を抑えた。
「ヤン、落ち着け……最強聖女のヒーラギがこのにいるが、お前の声の大きさにビックリしてる」
「〈声? ……そうかわかった!〉」
抑えたはずだが、まだまだ彼の声は大きかった。
「まだ、声が大きい!」
「――すまん」
落ち着いてきたヤンさんから、リコさんの瞳のことを聞いた。ブランの話の通り、彼女は瞳にケガをして以来、見えないそうだ。
「ヒーラギ、頼めるか?」
「はい、がんばります」
「〈よろしく頼む!〉」
「はい!」
いまから、リコさんの瞳を治す。
大丈夫、前に負傷した騎士の腕、足の再生をした経験はある。だけど、瞳を元に戻すことはまだ経験がない。デュオン国の聖女のとき王城の書庫で書物を読んで、手帳にしたため、ヒーラギの頭には叩き込んである。
だけど失敗をしたら? と、迷いの心が芽生え、迷いを読み取られ、ブランに背中をバシッと叩かれた。
驚いて、ブランを見ると彼は笑っていて。
「ヒーラギ、自信を持て、俺のキズも治しただろ!」
「えぇ治したけど……腕と足、瞳の再生は繊細なの。慎重にやらないといけない。……もしすると、失敗するかもしれない……」
失敗を恐れたヒーラギに。
「〈私は失敗しても何も言わない! お願いします〉」
「〈リコ、そうだな。どこに行っても無理だと言われた。あの魔王様でさえ治療できなかったんだ……頼む、聖女の奇跡に期待させてくれ!〉」
――お2人の声と熱量がすごいわ。
ヒーラギは決意して大きく息を吸った。
「ヤンさん、リコさん、はじめます」
♱♱♱
ブランとらヤンさんには後ろに下がってもらった。
リコさんと食卓の椅子に向き合って座り、彼女の手を握った。
――やるわよ。
全集中して、癒しの力を体に集めて回復魔法を唱える。
「『ヒール』」
キラキラと、癒しの光がヒーラギからリコさんに降り注ぎ。彼女が損傷した瞳の損傷箇所を、ジワリジワリと癒やしていく。
「あっ、ああ……瞳の奥が熱いわ」
いま。リコさんに私の癒しの力が効いている。
もっと、もっと、癒しの力を彼女に降り注げ。
「もう少しです。もう少し。――よし。これでリコさんの治療は終わりました。瞳の熱が引きましたら……ゆっくり、瞳を開けてみてください」
「はい、聖女様」
リコさんの緊張がヤンさんに伝わったのか、2人は同時に息を吸った。しばらくして瞳の熱が引いたのか、リコさんはヒーラギの手を強く握った。
(いま、リコさんの熱が引いたのね)
「聖女様、ヤン、ブラン……私、瞳を開けます」
「はい。どうぞ、ゆっくり開けてください」
「リコ、ヒーラギの言う通り……ゆっくりだ、ゆっくり、目を開けろ」
「そうだ! リ、リコ、落ち着くんだ」
ヤンさんと、ブランがリコさんの周りに集まり、彼女より焦っている。
「フフ、2人の方が私よりも緊張しているわよ」
リコさんの瞳が少しずつ開かれて、綺麗なエメラルド色の瞳が見えた。久しぶりに光を感じのか、リコさんはいちど瞳を細めた。その瞳が再び開かれて、ヒーラギを見たリコさんの瞳は大きくなり。すぐに後ろに立つ愛する人――ヤンさんを見た。
「あ、ああ……嘘」
嬉しに、彼女の瞳がキラリと光る。
「私、見える、見えるわ! ――嬉しい。聖女様、ありがとう……ありがとうございます」
ポタポタと涙に濡れる、リコさんのエメラルド色の瞳。その瞳に大粒の涙が溢れさせた。見えると聞いたヤンは、震えながらリコさんに近付き、彼女の前でひざまついた。
「ほんとうか? リコ? ……見えているのか? オレが見えるのか?」
ヤンさんのその問いに、リコさんは彼の手を握りしめて。ウン、ウンと何度も首を縦に振った。
「えぇ、ヤン、ヤンだ。あなた、すごく男らしくなったね。す、素敵だわ……私、こんなに素敵なあなたに毎晩、抱きしめられて眠っていたなんて……照れるわ」
「リコだって綺麗だ、愛している」
「私だって、ヤンを愛しているわ」
ヤンさんは下から、リコさんをキツく抱きしめた。ヤンさんに抱きしめられた、リコさんは幸せそうに微笑んだ。
(よかった……幸せそうで)
「ヒーラギ」
「ブラン?」
いつの間にか隣にきた、ブランに手を握られて。
「……しばらく、2人きりにするぞ」
「う、うん」
ヤンさんとリコさんを残して、ヒーラギ達はソッと外に出た。




