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 ブランはキスのあと震える手で、ヒーラギを優しく抱きしめた。はじめてのキスがブランならいいかな、ヒーラギはもっと、ブランのことを好きになりたい。


「ヒーラギ、好きだ……可愛い」

「ブラン……私、はじめてなんだけど」

「俺も、はじめてだヒーラギ!」


 温かなブランの腕の中で、ヒーラギは瞳を瞑った。

 その温かさが離れて、スリ、スリッと鼻と鼻を擦り合わせ、壁にかかる時計をブランは見た。


「もうすぐ昼だな……お昼は大根と卵スープにして。あとはマジックバックに鶏肉があったから、香草焼きにでもするか」


(チキンの香草焼き? 名前から美味しそう)


「それでお願いします」


「コメもいいが、パンを焼こう」

 

「私、チーズパンが食べたいです」

「チーズパンか、いいな」





 ♱♱♱



 


 お昼の時間となって。ブランの家のキッチンで横並びに立ち、昼食の準備をはじめた。もちろんスープ、チキンソテーなどの料理を作るのはブランで、ヒーラギは隣に立ち、もっぱら味見役だ。


「ヒーラギ、あーん」

「あーん」


 焼き上がった香草焼きのチキンの、切れ端が口に入ったとき。ブランの玄関が開き「ブラン!」と呼び、ロンさんとスラが入ってきた。


 ――あ、モグモグ……ゴクン。


「ロンさん、スラ、おかえりなさい」

「おかえり、ロン師匠とスラ……」


 仲良しなヒーラギ達を見て。ロンさんとスラは「ハハッ……おじゃまだったかな」「ニュ」とオデコをポリポリかいた。


「べ、別に気にしなくていいよ。それで、そんなに慌てて何があったんだ?」


「ブランに速報だ! 魔王が人の国を制圧して、魔王嫁を救出した。異国人のアリカも、もちろん無事だ……そしてヤン率いる、竜人軍は国民を傷つけることなく――黒狼王国の王城を陥落させた」


 そのロンさんの報告に、ブランは喉をヒュッと鳴らした。


「ハハ、父さん達が陥落? そうか、俺達の計画は全て成功したんだな。――ふうっ、これで全て終わった」


「ニュ」


「ああ、終わったね……。それでヤンは国王と王妃、王子2人に「貴様らを殺しはしない! ただ、一生キズが治らない、俺の嫁に頭を下げて欲しい」と言って、彼らをひれ伏せさせたらしい」


「スゲェ、プライドが高い弟達に頭を下げさせたのか、ヤンらしいな……だが、嫁のキズは魔王にも治せなかったからな」

 

「うん。彼女の瞳を再生させるには……相当な技術と、魔力がいると魔王は言っていたよ」


「……そうだな」


 今、ロンさんとブランが話だした話しは。


 魔王と人の国デュオン国、竜人軍と黒狼国の戦いが終わったみたい。そして、ブランの友達――ヤンの奥さんのキズが治らないと話している。


 ――そのキズ、私の力が使えないかな?


「ねぇブラン、ロンさん。そのやんさんの奥さんのキズを治すのに、私の癒しの力は使えないかな?」


 あっ! と、ブラン、ロンさんは同時にヒーラギを見た。


「そうだ、ヒーラギがいた! ヒーラギの力で、もしかしたら治せるんじゃないのか?」


「おお! ブラン嫁の力。聖女の力なら、彼女の瞳も治るかもしれない。奇跡を信じたい! ――ぼ、僕、至急、ヤンと嫁を呼んでくるよ」


「あ、ロン師匠、お昼は?」

「戻ってから食べる! 行くよスラ」

 

「ニュ?」


 なぜか、ロンさんはスラも連れて出て行った。




 ♱♱♱




「師匠、気を使ったな……」

 

 ボソッとブランが言った。やっぱりロンさんはヒーラギ達に気を遣って、スラも連れて行ったみたい。

 

「まったく、気にしなくていいのに……まっいいっか、ロン師匠とスラがヤン達を連れて戻るのを待つあいだに、俺達は昼食でも食べるか」


 ブランは食卓を片付けて、出来立ての料理を並べた。


「ヒーラギ、座って」

「うん」


「「いただきます!」」


 先ずは熱チーズがとろーりとける、チーズパンから一口かじった。熱々、カリカリのパンと濃厚なチーズが美味しい。このトロトロチーズを焼いたソーセージ、ジャガイモに乗せても美味しいだろう。


 ブランも、チーズパンをかじり。


「チーズうまっ! ヒーラギ、残ってたソーセージを焼こう。このとろけたチーズをソーセージにかけて食べたら、絶対に美味い!」


「私も、今そう思っていたわ」


 ブランは立ち上がり、マジックバックから朝のホットドックに使った太いソーセージを出して。一度ボイルしてからフライパンで焼き始めた。


「ううん、ソーセージの焼ける匂いって、また食欲をそそる」


「そうだな。ソーセージが焼けたぞ、火傷に注意な」


 焼きたてのソーセージをフォークにさして、パンからこぼれ落ちた、とろーりチーズを乗せてかじる。チーズの濃厚な味わいと、ソーセージがパリッと弾け肉汁があふれる。


「美味しい!」

「うまい!」


 2人の声がハモる。


「ハハハッ、ヒーラギ、ドンドン食べよう!」


「えぇ! この香草焼きのチキンはハーブの香りがいいわ。大根のスープは優しい味付けね。ブランにお行儀悪いって言われるかもしれないけど、このスープをコメにかけて食べたい」


 アクセントに黒コショウを振ると、良さそう。


「それ残ったスープで俺もよくやるよ。アクセントにカリカリに焼いたベーコンと、黒胡椒を振るとまた美味い」


「うわぁ、ベーコン⁉︎ 美味しそう」

「ヒーラギ、夕食はそれにするか!」


「うん、するする!」


 ヒーラギ達の賑やかな昼食は続いた。

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