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 要するにヒーラギが結界を強化したままだと、ブランたちの計画は台無しになってしまう。だから聖女となるアカリさんをこちらへと呼んだ。そして、城を出たヒーラギを確認して計画がはじまった。


 ブランはヒーラギにいろいろ話したあと、難しい顔をして黙ってしまい、黙々と朝食のパンを焼いている。ロンさんとスラさんも何も言わない。


「ヒーラギ……パンが焼けた、食べて」

「ありがとう」


 ブランは家族とは仲がよくない。

 ヒーラギは出会ってから、いままでブランに嘘をつかれていた。だけど正直にヒーラギに話してくれた。


 それに、魔王はカザール国の国民には、手を出さないと言った。結果的にヒーラギは10年もの間。酷い扱いを受けてきた王族、ローザン殿下、騎士団に仕返しができたことになる。


(そう考えるとスカッとしたわ。なんなら、ブラン達には感謝したいくらい)


 ヒーラギはそれ以上、気になることが1つある。

 この、ブランに作ってもらったケチャップとマスタードがタップリの、ホットドッグを豪快にかじりつき、味を堪能したあとに聞いた。


「話はわかったけど。ブ、ブランは……わ、私の事どう思っているの?」


 ブランには、ブランたちの事情があった。


 この計画があったから、ヒーラギのそばに居てくれたのかもしれないけど。ここまでの道中――ブランは優しくしてくれて、ヒーラギは守られていただけで、危害は加えてられていない。

 

 むしろ、お腹いっぱい美味し食事を作ってくれて、心と体は元気になった。これからも、ブランの料理を食べたいとでさえ思っている。


 まぁ、嘘をつかれた事に対して、許すか許さないかは後で考えればいいし。ほんとうは全部お芝居で、ヒーラギのことをなんとも思っていないのなら……この国を即座に出て、別の国へ行こうと思う。


「俺が、ヒーラギの事をどう思ってるかって? 俺はズッとヒーラギが好きだ。いい大人が子供に恋をした……俺にはヒーラギだけだ、って……ブハッ! ヒーラギ、俺の必死な告白中。――な、なんだ! その真っ赤な口わぁ!」


「え? 私の口が真っ赤?」

 

「プッ、そんなにケチャップを付けて……ハ、ハハハァ、可愛い」


 ブランが大笑いした。ハンカチを取り出して、口元を拭くと、ヒーラギの口元には大量のケチャップが付いていた。今、ブランの話を真面目な顔で聞いていたのに……口元にケチャップを付けていたなんて、小っ恥ずかしい。


 ――顔が熱い。

 ――でもね、私だって言うわ。


「だって、ブランが作ってくれたホットドッグ。ソーセージがプリップリで美味しいからいけないの! もう一個おかわり」


「はぁ!」

「だから、おかわり!」


「おかわり……って」


 ブランの顔がクシャリと歪んで、泣きそうなのを我慢しているのか、彼の頬は徐々に真っ赤に染まり顔を片手で隠した。でも尻尾は何かを耐えるように、パタパタと激しく動いてる。


「ダメなの?」


 残念そうに聞くと「クソッ!」と声を上げて、隠していた真っ赤な顔と瞳を向けて、睨むような顔で私を見た。


「ヒーラギはなんで? ……なんで、そんなに優しくて可愛いんだよ……もっと、もっと好きになるだろう! 嫁に欲しい、俺の嫁になって」


「嫁! な、なってもいいけど……まだ出会ったばかりだから嫁はまだ早いかな? ブランは、私のこと知らないし、私だってブランのことよく知らないわ……私よりも年上なんでしょ?」


 見つめると、目を逸らし。


「そうだよ、俺達は二十歳を終えると見た目が留まる、そのあとは緩やかに歳をとるんだ」


「緩やかに歳をとる……」


 だとすると、ブランの方が長生き。


「だったら、ブラン……私は人間だよ、あなたより先に歳をとる」


 その言葉の後にブランは再度、目を逸らした。

 

 ――え? なんで?


 ロンさんを見てもそらされて、スラまで、なんでみんな私から目をそらすの?



「ねぇ、ブラン? 何か言ってよ」



「いいや……あのな、非常に言いにくいんだけど。ヒーラギに母さんの癒しの力が移った時点で……ヒーラギはその、人とは別の人種になっていて。多分だけど、20歳を過ぎたら、俺と同じように成長が止まると思う」


 ブランの言葉にロンさん、スラが同時に頷く。


(ええ! 私ほ知らないうちに人間の枠を超えていた⁉︎)


「じゃ、私も20歳で見た目が留まるのね。だったら、今のうちに、もっと可愛くしておかないと……」


「はぁ?」


「だって、今の貧相な見た目だと……嫌にならない?」


「誰が嫌になるんだ?」


「ブランよ……これから、私と一緒にいてくれるんでしょ?」


「いるよ。ところでヒーラギ、さっきから可愛いことを言ってると食っちまうぞ! ――俺はコレでも、けっこう我慢している」


「え? 我慢?」


「これだけ言っても分からないなら、わからせる!」


 ブランがいきなりヒーラギに抱きつき、カプッと頬を噛んだ。


『きゃっ!』その悲鳴にもっと火がついたブラン……ロンさんとスラが止めなかったら……もっと、恥ずかしいことをされていた……かも。





「ごめん、ヒーラギ」

「……」

「わるかった、許して」

「……」


 森の中、ロンさんが魔法で出した枝と、スラの触手でグルグル巻き状態の、ブランはしきりにヒーラギに謝った。


「ごめん、気持ちが抑えられなくなって爆発した」


「もう、わかった。驚いたけど、嫌じゃなかったら」


「ヒーラギィ!」

 

「ブラン、落ち着いて! いま、魔王はどうなっているの? あと竜人のお友達は?」


「んー、いま魔王軍は人間の国と交戦中。ヤンは俺の父、弟達と交戦中だな。俺達はヒーラギの保護担当で戦闘に加わることはないから。終わるまでここにいるか、俺のウチに行くかだな」


 ブランの家。


「私、ブランの家に行きたいわ」

「俺んちか? 来てもいいけど、何もないぞ」


「何もないことないわ、ブランがいるじゃない。早く食べて、片付けを終わらせて、ブランのウチに行こう! ね、ブラン、スラ、ロンさん!」


「ニュ!」

「そうだね」


 早く行こうと。ホットドッグを大口で食べようとしたヒーラギをみて、ブランは慌てて止める。


「ちょっ、ヒーラギ! そんなに慌てて食べるなって!」

◆最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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