表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/38

28

 ブランは拳を握り締め、悲しげな表情で叫んだ。


「あの人は――自分自身が助かる為に、母さんを人間に渡した。贅沢ばっかする義母上、弟達もみんな無能すぎる……その行いの悪さで、多くの人を傷付けて――友のヤンを怒らすんだ」


 ヤン?

 弟?


「ブランから聞いた話だと、兄弟はお兄様達ではないの?」


 私を見る、ブランの瞳が哀しみの色に染まった。


「ブラン、興奮すぎ。全部、嫁にしゃべっているよ」


「ロン師匠、俺は嘘が嫌いだ……ヒーラギと出会ってからずっと嘘をついていて胸が痛い。……ヒーラギ、ごめん。俺は出会ってからずっと嘘をついている。母さんの力を受け継ぎ、強力な聖女となったヒーラギが、人間の国にいては俺達の計画が台無しになる……」


「え?」


 ――ブランのお母さんの力?

 ――私が強力な聖女?

 ――計画が台無し?


「話がよくわからないわ。私の力が必要で、城に連れて行くんじゃなかったの? それに私の力が強力なのも……」


「昨夜、まだ眠っていないヒーラギに俺は嘘を言った。……本当は人の国で聖女ヒーラギが守る結界は、魔王ですら破壊できなかった。だから当初の計画の内容を変えるしかなかった」


「……」


「魔王の偉大な魔力で、異世界からアカリを召喚してもらった。あの王子は聖女ヒーラギを嫌っているし、新しい聖女が現れたら、必ずヒーラギを国から追い出すと思った」


 苦しそうに語り、押し黙ったブランの続きを、ロンさんが話してくれた。


「無理やり呼び寄せた、異世界人のアカリに。――どうしてこちらへ呼んだかを説明して、聖女の役を頼んだんだ……彼女は話を聞いてやると言ってくれた。アリカには自分が危ない目に遭いそうになったら、部屋から出るなと言ってある」


 二人の話にヒーラギの頭は混乱する。

 魔王は次元を曲げて、他所の国から自分達の計画のためにアカリを呼び寄せた。


 ヒーラギとの出会い、ブランから聞いた話は全て嘘。

 ブランの優しさも、全てが嘘なんだ。


 ――悲しい。


「他の場所からアカリさんを呼んでまで、あなた達は何を企んでいるの? その計画を行うためなら、人を傷つけてもいいの!」


「ヒーラギに、ごめんしか言えない。ヒーラギが国境を超えてから、計画は始まってしまったんだ……誰にも止められない。――この計画は。魔王、竜人、俺達の思惑は一致してる。お互いに願うことがあるから手を組んでいる」


 ――思惑?


「ニュ」

「10年か……もっとかな、長い計画だったね」


(スラと、ロンさんもこの計画を知っているんだ)


「ちょっと待って! いま、魔王軍がカザール国を攻めてきていると言っていたわ。王族には騎士がいるけど、カザール国に住む国民はどうなるの?」


 守る者がいない、国民は無力。


「ヒーラギ、それについては大丈夫だ。魔王は国民には手を出さない約束だ。――誰も争いなんて、求めちゃいないんだ。だけど……人を傷付けると、倍になって返ってくることを、カザールの王族、父上達に教えてやりたい。母さんを物のように扱った人間は許せない……なにより、俺が愛するヒーラギまで、物のように扱っていたなんて許せるかよ!」


 ブランの瞳に怒りの炎が見えた。




 +


 

 ――ブランのお母様が、人に物のように扱われていた?


「でも私、ブランのお母様が王族に使われていた? そんな話は聞いたことがないわ」


「俺の母さんはヒーラギが聖女になる前まで。人の国で、聖女と呼ばれていた」


 ――私が聖女になる前って、5年前に亡くなった聖女の事?


「亡くなったんじゃないの?」


「いいや、俺たちがヒーラギと出会う5年前に、母さんを王城からなんとか助け出した。そして。ロンの友達で、ヒーラギの祖父母の屋敷に……精神と、体がボロボロな母さんは匿われていた」


「あの日。俺が魔物を連れて大怪我をして、死にそうになった俺を"助けたい"と願ったお母さんと、ヒーラギの心が重なったんだとロンは言うのだけど、実際のところはわからない。現実に母さんの力はそのとき消えて、ヒーラギに移ったんだ」


「ブランのお母様の力が、私の移った?」


「ああ、そうだ」


(あの日、急に芽生えた力は私の力ではく。ブランのお母様の癒しの力。――それが私に移った。その力でブランの怪我を治して、私は聖女となった。その力は魔王すら跳ね返すほどの力)


「ブラン。お母様の力がどうして私に移ったのか、理由は知っているの?」


 そのヒーラギの問いに、ブリンは首を横に振った。


「その原因はまだ、わからないんだ」


「じゃ、ブランのお母さんは?」


「近くの村で、元気にしてるよ……その村で、優しい伴侶ができて、いまは幸せに暮らしてる。あの日、俺のせいで、ヒーラギは聖女となり、10年もあんな場所で。一人で、ごめんな……辛かったろ」


 ブランは真っ赤な目をして、自分の唇をギリッと噛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ