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ブランの気持ちが落ち着いたみたい。いまはみんなと今日の「野営地を探そう!」と、森の開けた場所を探している。
みんなの後を追いかけて瘴気を見つけたら、気付かれない様に浄化していた。
「みんな、止まって!」
先頭を歩くブランの足が止まり、彼のモフモフの耳が音を探る。スラも気付いたのか辺りを気にし始め、ロンさんに至っては、いち早く気付き木の上から確認していた。
そうだ、ヒーラギ達のところに瘴気をまとった魔物が付近にいる。
「これは、魔物の気配だ……」
「えぇ、この瘴気の大きさだと……大猪か熊くらいかしら?」
この大きさの瘴気、ヒーラギは騎士団との遠征で感じたことがあった。木の上のロンさんが何かに気が付き、指をさして声を上げた。
『見つけた! 北西50メートルの方角に魔物だ!』
「ロン師匠、戦うか?」
『そうだね、あのままにしては置けない』
どうやら、その魔物がいる近辺に兎族の村があるらしい。ヒーラギの魔力はまだ半分以上残っているから、この森のごと浄化できそう。もし魔力切れで倒れても、ブランとスラ、ロンさんがいるから安心だ。
まだ、ヒーラギが遠征に不慣れなとき……魔力不足で倒れたヒーラギを森の中に放置した、騎士団のようにならない。
「私が、この森ごと浄化します!」
「森ごと? そんなことが出来るのか?」
ヒーラギはコクコク頷いた。
『ほぉ森を浄化か。いま浄化すれば……しばらくはこの森に瘴気が発生しなくなるし、あの魔物も弱くなるな。悪いけどブラン嫁、頼めるかい?』
「はい、がんばります!」
『よし! ブランは嫁を守って、僕とスラであの魔物を倒してくる!』
「ニュ!」
「わかった」
「では、森の浄化をはじめます」
ヒーラギは地面に膝を突き祈り始める。「助けたい」「みんなの役に立ちたい」という思いがふくらみ、ヒーラギの体内に浄化の光を集める。まだ足りない、もっと、もっと集めて――いまだ! 地面に両手を当てて唱えた。
「【浄化】」
集まった浄化の光が森全体を覆い、瘴気を跡形もなく浄化した。浄化の終わった森はキラキラ輝き、元の自然に戻っていく。
(よかった、上手くいったわ)
「ブラン、この浄化はもっても4、5日かな」
「お疲れさま、ありがとうヒーラギ」
「いいえ、さっきの食事のお礼です」
この森の瘴気を完全になくすには、森全体に結界を張らなくてはならない、そうしないと直ぐに魔物と瘴気は戻ってくる。
だけど、結界を張るにはヒーラギに1つ問題があった。ヒーラギは、すでに張っている結界の強化はできるけど、結界をどうしたら張れるのかが……わからない。
まだ、ヒーラギはやったことが無いのだ。
それを知りたくて書庫にあったすべての魔導書、前聖女が書き残した書物も読んだが……結界の張り方は記されていなかった。もしかして隣国なら結界について記した、魔導書があるかもしれないと殿下に頼んだのだけど。
「いまは忙しい!」「無理だ!」「うるさい!」と、ヒーラギの言葉に耳を傾けず、その願いは叶わなかった。ヒーラギは10年もの間、前聖女が張った結界をひたすら祈り、強化していたに過ぎない。
結界の強化と、結界を張るのは魔力を使う量も、質も違うはず。
「凄いな、ヒーラギの浄化の力で……森の空気が変わった」
『ほんとうだ。綺麗な森を見るのは久しぶり、森に住む生き物たちも喜んでいるよ』
「ニュ、ニュ」
あらわれた魔物を倒して、戻ってきたロンさんとスラに「お疲れさま」と言ってくれて。スラは手を伸ばしヒーラギの頭を撫で撫でしてくれた。
(うわぁ、嬉しい)
「スラ、もっと撫で撫でして」
と、言ったのだけど。
スラだけではなく、ブラン、ロンさんまで撫でてくれた。嬉しい……まずはこの国すべての瘴気を浄化して、最後に張り方を覚えて結界を張らなくてはならない。
だからその前に。
「あのね、浄化をしたあと結界を張った方がいいのだけど……私、張り方を詳しく知らないの。誰か知っている人を知りませんか?」
「結界を張るか……ロン師匠、結界に詳しい人誰か知ってる?」
『うーん。僕のキューロン村の長老エルフのビビ様なら、知ってるんじゃないかな? いまから会いに行く?』
会いに行きます。と伝える前に"キュルルルルル"っと、ヒーラギのお腹が鳴った。
そうだ、いま森の浄化で大量の魔力を使ったから。
「ごめんなさい……」
「ヒーラギは謝るなって。ビビ様のところに行く前、先ずは腹ごしらえをしよう!」
『そうだね』
「ニュ!」
みんなとの、ご飯の時間が始まった。




