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23

 ブランの気持ちが落ち着いたみたい。いまはみんなと今日の「野営地を探そう!」と、森の開けた場所を探している。


 みんなの後を追いかけて瘴気を見つけたら、気付かれない様に浄化していた。


「みんな、止まって!」

 

 先頭を歩くブランの足が止まり、彼のモフモフの耳が音を探る。スラも気付いたのか辺りを気にし始め、ロンさんに至っては、いち早く気付き木の上から確認していた。


 そうだ、ヒーラギ達のところに瘴気をまとった魔物が付近にいる。


「これは、魔物の気配だ……」


「えぇ、この瘴気の大きさだと……大猪か熊くらいかしら?」


 この大きさの瘴気、ヒーラギは騎士団との遠征で感じたことがあった。木の上のロンさんが何かに気が付き、指をさして声を上げた。


『見つけた! 北西50メートルの方角に魔物だ!』


「ロン師匠、戦うか?」

『そうだね、あのままにしては置けない』


 どうやら、その魔物がいる近辺に兎族の村があるらしい。ヒーラギの魔力はまだ半分以上残っているから、この森のごと浄化できそう。もし魔力切れで倒れても、ブランとスラ、ロンさんがいるから安心だ。


 まだ、ヒーラギが遠征に不慣れなとき……魔力不足で倒れたヒーラギを森の中に放置した、騎士団のようにならない。


「私が、この森ごと浄化します!」

「森ごと? そんなことが出来るのか?」


 ヒーラギはコクコク頷いた。


『ほぉ森を浄化か。いま浄化すれば……しばらくはこの森に瘴気が発生しなくなるし、あの魔物も弱くなるな。悪いけどブラン嫁、頼めるかい?』


「はい、がんばります!」


『よし! ブランは嫁を守って、僕とスラであの魔物を倒してくる!』


「ニュ!」

「わかった」


「では、森の浄化をはじめます」


 ヒーラギは地面に膝を突き祈り始める。「助けたい」「みんなの役に立ちたい」という思いがふくらみ、ヒーラギの体内に浄化の光を集める。まだ足りない、もっと、もっと集めて――いまだ! 地面に両手を当てて唱えた。


「【浄化】」


 集まった浄化の光が森全体を覆い、瘴気を跡形もなく浄化した。浄化の終わった森はキラキラ輝き、元の自然に戻っていく。


(よかった、上手くいったわ)


「ブラン、この浄化はもっても4、5日かな」

「お疲れさま、ありがとうヒーラギ」

 

「いいえ、さっきの食事のお礼です」

 

 この森の瘴気を完全になくすには、森全体に結界を張らなくてはならない、そうしないと直ぐに魔物と瘴気は戻ってくる。


 だけど、結界を張るにはヒーラギに1つ問題があった。ヒーラギは、すでに張っている結界の強化はできるけど、結界をどうしたら張れるのかが……わからない。


 まだ、ヒーラギはやったことが無いのだ。


 それを知りたくて書庫にあったすべての魔導書、前聖女が書き残した書物も読んだが……結界の張り方は記されていなかった。もしかして隣国なら結界について記した、魔導書があるかもしれないと殿下に頼んだのだけど。

 

「いまは忙しい!」「無理だ!」「うるさい!」と、ヒーラギの言葉に耳を傾けず、その願いは叶わなかった。ヒーラギは10年もの間、前聖女が張った結界をひたすら祈り、強化していたに過ぎない。


 結界の強化と、結界を張るのは魔力を使う量も、質も違うはず。

 

「凄いな、ヒーラギの浄化の力で……森の空気が変わった」


『ほんとうだ。綺麗な森を見るのは久しぶり、森に住む生き物たちも喜んでいるよ』


「ニュ、ニュ」


 あらわれた魔物を倒して、戻ってきたロンさんとスラに「お疲れさま」と言ってくれて。スラは手を伸ばしヒーラギの頭を撫で撫でしてくれた。


(うわぁ、嬉しい)


「スラ、もっと撫で撫でして」


 と、言ったのだけど。


 スラだけではなく、ブラン、ロンさんまで撫でてくれた。嬉しい……まずはこの国すべての瘴気を浄化して、最後に張り方を覚えて結界を張らなくてはならない。


 だからその前に。


「あのね、浄化をしたあと結界を張った方がいいのだけど……私、張り方を詳しく知らないの。誰か知っている人を知りませんか?」

 

「結界を張るか……ロン師匠、結界に詳しい人誰か知ってる?」


『うーん。僕のキューロン村の長老エルフのビビ様なら、知ってるんじゃないかな? いまから会いに行く?』


 会いに行きます。と伝える前に"キュルルルルル"っと、ヒーラギのお腹が鳴った。


 そうだ、いま森の浄化で大量の魔力を使ったから。


「ごめんなさい……」


「ヒーラギは謝るなって。ビビ様のところに行く前、先ずは腹ごしらえをしよう!」


『そうだね』

「ニュ!」


 みんなとの、ご飯の時間が始まった。

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