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「ブラン⁉︎」
「クク、犬と間違えた罰だ……さてと行くか、ヒーラギ、俺の背中に乗って!」
「う、うん」
罰だけど――慣れないことに頬は熱く、鼓動はドキドキうるさい。毎回されると、私の心臓が持たない。
(ブランは慣れているのかな……)
「どうした、乗らないの?」
「の、乗ります」
ブランは乗りやすいように、目の前に伏せてくれた。ヒーラギはスラ入りマジックバッグを肩にかけて、モフモフの背中に横座りで乗る。
「乗りました、ブラン。よろしくお願いします」
「よろしく、まかされた!」
「ニュ、ニュ」
いつの間にかマジックバッグの隙間から、顔を出していたスラ。『ハハハッ、スラも行こうな!』タッと地面を蹴り、ブランは風のように走りだした。
軽快に畑道をブランは駆けていくと、ちらほら畑で作業をする人を見かけた、しかし彼らは作業に夢中なのかヒーラギたちに気付かないみたい。
(あれ? いま横をすれ違った荷馬車の人……こっちを見なかったわ?)
「もしかして、周りの人達に私達の姿が見てえいない?」
「あぁ見えていないよ。獣化したとき大騒ぎにならないよう、姿消しの魔法をかけといたから」
「姿消しの魔法?」
「そう。いまの俺たちは頬を撫でる、通り風みたいなものだな」
笑うブラン。そうよね――畑道の真ん中を大きくて真っ白い狼が走っているのだ、姿が見えたらみんなは声を上げるか、腰を抜かすだろう。
「風がとても、気持ちいいわ」
ブランの背中は自分の身長よりも高い目線だから、遠くまでコメが実る田んぼが見渡る。風にゆれる黄金色に輝く稲たち……。ヒーラギがこの国を出る、ほんの少しの間は祈りを捧げよう。今年も美味しいコメが採れて、美味しいおにぎりが作れますように、と。
ヒーラギの祈りの光はいつもより多く、辺り一面にキラキラと降り注いだ。――もしかして祈り力が上がっている? それなら、もう一度、もう一度と走るブランの上で祈りを捧げた。
魔力を持たないと誰にも見えない祈りの光。――だから魔力を持たない王族、上流貴族、騎士達には辺りにキラキラ光る『祈りの光』は見えなかったのだろう。
はじめは奇跡の力だと喜んでいたけど。
10年も経つと周りは当たり前になり、冷たくなった。
『ただ飯を食らい、お前は祈っているだけ』
『それしかできないんだろう? 早く傷を治せ』
『お前の両親は、金ばっかり要求しやがる!』
とまぁ、散々言われたな。
――あら?
魔力を持つブランにも『祈りの力』が見えたのか、彼は移動のスピードを落としてくれた。
「ありがとう、ブラン」
「いいや、国境を越えるまではヒーラギの好きなようにすればいい。ただし、使い過ぎるなよ」
「えぇ、わかっているわ」
祈りの光はキラキラと輝いた。




