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「腹もふくれた、そろそろ行くかヒーラギ」
「うん、行こう」
「今日中に国境を越えてマギア森の中で一晩泊まり、明日になったら王都へ行こう」
ブランはマジックバッグにスラが綺麗にした道具をしまい、残ったピクルスの瓶をしまおうとして、ブランが声を上げた。
「スラ! お前はまた、ピクルスの漬け液を全部飲んだな!」
「ニュ!」
漬けてあったガーキンとジンセンの野菜は残して、ピクルスの漬け液を全て飲んだことがバレてしまったスラは。捕らえようと伸ばしたブランの手から"ピョン"と逃げて『ニュ(またね)』と鳴いて、マジックバッグの中に逃げていった。
「あ、逃げるな! スラめ……相変わらずピクルスの漬け液好きだな。まったく……」
スラにピクルス漬け液をすべて飲まれたのに、どこか嬉しそうなブラン。仕方ねぇ、食っちまうかとピクルスの瓶を私に渡してきた。
ブランが漬けたガーキンとジンセンのピクルスは、よく漬かっていて美味しい。
「ねぇ、ブラン。スラって、ピクルスの液が好きなの?」
「あぁ好きだな。なにせ、アイツと出会ったのも、ピクルスの漬け液が関わってるんだ」
「ピクルスの漬け液?」
あぁ、と頷くブラン。
「スラとは二年前かな? 今から行くマギア森とは違うシシンの森で出会ったというか、俺の採取中に俺が作ったピクルス入りの弁当をスラが全部食べちまったんだ。採取が終わって腹減ったって、弁当を開けたら中身は空っぽだ……」
「お弁当の中身が空っぽ?」
「そそ、俺はそのとき森に住む動物が食べたと、こんな場所にカバンを置いといた俺が悪いと思った。よく弁当を食べてるとき、森の動物が寄ってきたからな」
さっきのハンバーグも美味しかったから、ブランのお弁当も美味しんだろうな。
「それで」
「家に帰ったら見知らぬスライムが、カバンからニュルッと出てくるんだもんな驚いたよ。初めはシシンの森に帰そうとしたけど、一緒にいるうち仲良くなったんだ。スラは俺の作るものはなんでも好きで、特にピクルスの液が一番大好きなんだ」
ブランは楽しそうに、スラとの出会いを話してくれた。
2人でピクルスをポリポリ食べきり、瓶をマジックバッグにしまうと。食べ物ばかりのヒーラギのカバンの中身を、ブランはすべてマジックバックにしまい。
「ヒーラギが持ってきてこのカバン。俺の魔力が戻ったらマジックバッグに変えるかな」
ヒーラギがおじさんに貰ったカバンはマジックバッグにして、持ってきたアタッシュケースは国境付近にある街で、お金に変えるとブランは言った。
「さて、行くか」
「うん」
ヒーラギは国境近くの街まで、徒歩での移動だと思っていたが。ブランは腕につけている魔導具の腕輪を触り、なぜか服を脱ごうとする。
「え、服を脱ぐの? ま、待って!」
慌てるヒーラギに、ブランは不思議な顔をした。
「いまから、街まで移動するだろ?」
「するけど」
「俺が獣化して、ヒーラギを背に乗せるから服が邪魔なんだ」
「そ、それなら先に言ってください」
「一度見てんだ、何度見てもかわらねぇ」
と、ヒーラギが見ていても気にしないブランに、慌てて目を瞑り背を向けた。
「ヒーラギの耳真っ赤……クックク、照れるなよ。俺はヒーラギだったら見ても構わねぇ、こっち向けよ!」
「はぁ? い、嫌です。向かないし、見ません!」
しばらくして、後ろを向く私の頬をモフモフが、モフンとくすぐった。
「ヒーラギ、獣化が終わったぞ」
その言葉に振り向くと馬より大きく、真っ白なモフモフの犬になったブランがいた。ブランはカバンを口に咥えてヒーラギに渡した。
「俺のカバンを持ってもらっていい?」
「はい、持ちます」
モフモフ、ブランからアイテムバッグを受け取る。
なんてモフモフで、可愛い見た目、いきなり抱きついたらブランは怒るだろうか。
――触りたい、もふりたい。
「モフモフ犬、いい」
「犬? ……あのさ、ヒーラギに一言言っておくけど、俺は犬ではなくオオカミだから」
「お、狼?」
「何驚いてんだよ……ヒーラギ、俺を犬と間違えた罰だ」
ブランは大きな舌で、ヒーラギの頬をベロンと舐めた。




