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「……(恥ずかしい)」


 ヒーラギは顔を赤くして、お腹を抑えた。

 お腹の音を聞いたブランは「クックク」と笑う。


「デカい腹の音だな、ヒーラギは腹減ってるのか? ……そうだよな魔力ずっと使いながら来て、俺のキズを癒して魔力もくれた――よし、俺が美味いものを作ってやる」


「ありがとう……ございます」


 お礼を言うヒーラギに待っていろと、ブランは自分の肩掛けカバンを漁って小さなテーブル、折りたたみの椅子、ナイフ、まな板、鍋、フライパン、調味料を次々と取り出した。


 木の下に椅子を置き、まな板とナイフをセットしたテーブルの上に置いた。この開けた場所に火を起こすのか、石でカマドを作ると、近辺に落ちている落ち葉や木の枝を集めはじめた。


 一連の無駄のないブランの動作を、ボーッと見ていたヒーラギはあることに気付く。


(ブランが持ってるカバンって、私がおじさんから貰ったカバンよりも……小さくない?)


 それなのに、あきらかに容量が違うテーブル、椅子をカバンから取り出した。遠征にいく騎士団だって、調理器具、寝袋、テントなどを運ぶ荷物運びの人がいた。


 ――どう言う仕組み?


「ねぇ、どうしてそんな小さなカバンから……次々、カバンよりも大きな道具が出てくるの? 私を見てよ!」


 と、言ったのは。片手にアタッシュケースを持ち、肩にはパンパンなカバンをかけているから。


 ブランは集めた枝をカマドに置き、私を見て。


「ヒーラギは大荷物だな。俺が持っているカバンはマジックバッグと言って、なんでも収納できる魔法の鞄さ。いいだろう」


「ま、魔法のカバン? マジックバッグって本で読んだことがある。なんでもカバンに収納できて、しまった食材が腐らないって書いてあった……それ、ほんとうなの?」


「おぉよく知ってるな。で、ヒーラギが持ってるアタッシュケースと、パンパンなカバンの中身は何入ってんだ?」


 ブランに聞かれたヒーラギは「見てみなさい!」とアタッシュケースをバーンと開けた。その中身を見たブランは瞳を大きくする。


「はぁ? その何種類ものパンが入ったアタッシュケースは? そっちのカバンの中身はなんだ?」


「パンは家から拝借したもので。こっちのカバンはここに来る途中で、キズを癒したおじさんの村でいただいた食べ物です!」


「はぁ? これ全部、食いもんかよ。ヒーラギの着替えは? 雨具は? 護身用のナイフくらいは持ってるだろう?」


「ナイフはありませんが、薬草の本と魔法の本がニ冊と、書き溜めたメモ帳が入っています」


 ほんとうか? と、ブランの目が点になる。

 今日中に目的地の別宅へ着けば……なにかしら服が置いてあるだろうし、必要ないと思っていた。


「ぷっ、はははっ! おもしれ聖女だな」


「だって……私はいまから国境近くの、別宅に向かっているだけだから必要ないわ々


 ブランはハァとため息をつくと、ツカツカと寄ってきて、人差し指でおでこをツンツン押した。


「いたっ、――な、なに?」


「女の子のヒーラギには護衛がいないんだぞ! 自分の身を守る護身用ナイフくらいは持っておけ、何かあってからでは遅いんだぞ!」


「それは大丈夫です。そんな輩に効く、目眩しの魔法を知っています!」


「目眩しの魔法?」


「えぇ」


 ブランに自信満々に「ライト!」と、魔法を唱えたのだが、ますますブランの表情が曇る。魔法の書物に光の魔法だと書いてあったし、魔力が少なくても使えそうだったから覚えたのだけど……違うの?


 ブランは呆れた顔と、ポリポリ頬をかいた。


「あのな、ライト魔法は明かりのないダンジョン、夜に使う光源の魔法だ。周りを見てみろ、ヒーラギの前に丸い灯りの玉しかでねぇだろ?」


 彼の言う通りで、ヒーラギの周りには丸い光の玉がプカプカ浮かんでいるだけだった。


「……ほんとうだ」


「クックク、ヒーラギは今まで祈りとか癒しかして来なかったんだろ? ……しかたねぇ、国に行く道中で俺が魔法を教えてやる、その前に腹ごしらえだな……俺が持ってきた食材は少ないかな? ヒーラギ、そのパンパンなカバンの中身見せて」


 ブランに食べ物が入ったカバンを渡すと中を漁り、目を輝かせた。それは酪農のおっちゃんに貰った牛肉の塊。


「こ、これは人間の国にしかない牛から取れる牛肉だ! 浄化とハーブに漬けないと食べられない魔物の肉と違って、癖がなくて脂が乗ってて美味いんだろ?」


 そんなキラキラな瞳で聞かれても、遠い昔に数回、食べた記憶しかない……


「た、多分、美味しいと思う」


「え? ヒーラギは牛肉の味を知らない? いつも、どんな食事を食ってたんだ?」


 ――どんな、食事を食べていたって。


「えーっと、硬めのパンと野菜スープ……誕生日の日はかたいパンケーキでした」


 彼の瞳が鋭くなり。


「硬めのパンと野菜スープ?……食いもんが少ない俺たちよりもひでぇ食事だ! だから、ヒーラギはそんなに体の線が細いのか……クソッ、待ってろ! いま美味いもんを作ってやる」


 ブランは、貰った牛肉の塊を使い調理を始めた。

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