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「祈りを終えると、そのローブの女性は王城から馬車に乗り去っていった。あとを追いたかったが、肝心なときに腹のキズが開き動けなかった」


 と、腹をさする彼はキズを治すだけで、瘴気を払う力が残っていなかった。ヒーラギを闇雲に探して道端で力尽きた。


「あなたは私が見つからなかったら、どうしていたの?」


 その問いに彼は、あっけらかんと笑って答えた。


「ん、わかんねぇ。でも俺はこうして聖女に会えた、運がよかった」


「運が良かったって……」


「だってそうだろう? 俺の腹のキズが治って聖女には会えた……いやぁ、あなたが人々を思いやれる聖女でよかったよ」


 ――え?


「わ、私が人々を思いやれる聖女? 王城から役目を放り出してきたのに?」


「役目を放りだしてか……クックク。ここに来るまで荷馬車にも乗ったが、ゆっくり徒歩で移動していただろ?」


(え? どうしてそれを知っている? もしかして、彼は私をずっと見ていたの?)


「そんなの、た、たまたまよ……たまたま移動手段がなかっただけよ」


「嘘だな、魔力を持つ者はわかる。だから俺は先回りをしようとして、ここで倒れて動けなくなった。そのとき俺は温かな魔力を、土地の浄化と作物の実りを願う温かな魔力が移動してるってな」


 温かな魔力? そんな大したものじゃない。


「違う! 私は自分が悪者になりたくないだけ、私が祈りを止めたせいでこの土地が枯れたって言われたくない。王族、上級貴族たちはどうなってもいいけど……誰だって悪者になりたくないじゃない」


「ケッ、なるわけないだろう! おまえはこの国に何年も祈りを捧げ、人々を癒しキズを治してきた。ポッとでの異世界人のアリカを次の聖女だと王族、聖職者、騎士団が決めたんだろ!」


「そうだけど……」


「自分の国の人々に何があったら、おまえのせいではなく、そうした王族たちのせいた。聖女という肩書きがなくなったヒーラギはいち市民だ。もうお前は王族に守られる立場だ、お前が一人で心配して体を張らなくていいんだよ」


 そう言った、彼の言葉が心に響く。ヒーラギはずっと聖女の役割から逃げたいと思っていた『でも、私がいま祈りをやめたら?』と思うだけで怖かった。


 聖女でなくなった私は国王陛下、王妃、王子が決めた、聖女アリカ様に役目を任せていいんだ。


「そっか、私はいち市民……アリカ様に任せていいのね」


「そうだ、あっちにはあちらが決めた、聖女アカリがいる。その聖女に任せればいい……おまえには俺の国を助けて欲しいけど」


 私は聖女ではなくなったけど、力までは失っていない。私の力を必要としてくれる、彼の国に行って彼の国の人々を助けたい。


「……わかった、あなたの国に行くわ。私はおまえではなくヒーラギと言うの。あなたの名前を教えて」


「ああ、俺の自己紹介してなかったな。俺はゴルバック国の第三王子ブラン・ゴルバックだ。ブランと呼んでくれ」


 ゴルバック国の第三王子……やはり、この人は王族。


「ブラン様、私の力がどれくらい……お役に立てるかわかりませんが。よろしくお願いします」


 スカートを持って、彼にカテーシーをした。

 それを見たブランは口を尖らせて、モフモフな尻尾をブンブン振った。


「ハッハ、ヒーラギはかたっ苦しいな……様はいらない、ブランでいいよ。それも呼び捨てじゃないと俺は返事しねぇ。さて行くか」


「はい、ブラン」


 と、返事したのだけど「キュルルルル」と、ヒーラギのお腹が盛大に鳴った。

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