第12話 銀の街 前半 ④
「驚かないのか。君があげたあのエンジェライトは宝石心臓だったということを」
ジルはけしかけるように言う。
「知っている」
修行時代の時、天光の聖女イヴに訊いた。
あの時食べたのは、宝石心臓だったということを。
イヴは少し迷った様子だったが教えてくれた。迷いもなくそうだと。
その時、少し吐きそうになった。同族を食べていたことになるからだ。
イヴは、ジャンヌが聖女の地に来た直後に『光』を安定させたために宝石心臓を調整したという。
「そうか。なら教えてくれないか」
それでも答える気がない。だか、気になる点が一つ。
「だったら、なぜ。宝石心臓を持っている」
宝石心臓は、聖女として覚醒した女の心臓が宝石化したもの。全ての『光』の根源そのもの。だか、決して普通の人間が触れることがない。宝石心臓は聖女が死ねば、ともに消えるからだ。
ジルは口の端を上げる。
「私はね。昔から聖女に魅力的だった。特に宝石心臓に」
静かに過去を辿るように語る。
「君の言う通り。聖女は死ねば、宝石心臓は消える。人間は決して手に入れられない宝石。そこに惹かれてね。いろいろと試したものさ。まず聖女から取り出そうにも一部は奪えるが、やはり丸ごと取り除いても、聖女が死ねば、一緒に消えてしまう。一部取ったものでさえもだ。しばらくは聖女から一部取り除くしかなかった。一部を別の心臓に移植してみたが、『呪い』の抗体を浄化し、心臓が耐え切れずに死ぬ。人口的に聖女を作ることも叶わない。それに聖女も心臓を削ることにもなるから短命で死んでしまう。生産性も低く、いい結果も出ず、あまりにも苦戦したからスランプに陥るところだったよ」
嘆息をこぼす。
「だか、ジルコニアを見てやっと思いついたんだ」
やっと答えを見つけたように言う。
「聖女を宝石に変えればいいんじゃないかってね」
その発言に思わず唖然とした。
この男は何を言っている。
「『光』を吸収するジルコニアができたんだ。逆もできるはず。まず、結晶化させる宝石クォーツを完成させた」
錬金術まで知識を持っていたのか。にしてもなぜ、そこまでの知識をこの男は持っている。ノレッジに狙われてもおかしくないはず。
「さすがに聖女に試作したら、もったいないからね。魔族に使ったんだ。魔力を結晶化できるか。実験は成功した。体が徐々に結晶化した。使えると分かった時は、胸を高鳴ったよ。これで宝石心臓は手に入れられると」
ジルの目が少し輝いた。
「早速聖女に使えば、聖女の体が徐々に結晶化した。さらに宝石心臓と同調したんだ。つまり聖女の体全部が宝石心臓そのものになったんだ。予想以上の結果に本当に嬉しかったものだ。これでやっと宝石心臓を手に入れたのだから。宝石心臓になっても、簡単に死なないと分かれば、武器もいくらでも作れるし、研究も進められた。その中で最も驚いたのか聖女が宝石になっても人の姿をなしたことだな。あれも研究したかったが、すぐに死んでしまった。まだ宝石心臓は奥が深い」
「お前は何人聖女を殺してきた」
怒りにこもった声が震える。
その結果を得るまでに聖女を何人殺したのか。この男は。
「聖女は捕まえるのも苦労するから。そんなに多くはないよ。ざっと50人だったかな」と笑顔に返す。
本当にこの男は私をイラつかせることをしてくれる。
「話しを戻そう。君があの時から『光』を使えなくなってね。宝石心臓を食べたら取り戻せると考えたんだ。報告によれば、騎士団が着いた時には君は魔女と戦っていた。君は食べたから『光』を取り戻したが、抑えられなくなったそうだ。そして、君を止めたのは・・・」
近くにあった花瓶を投げ、ジルの顔の横を通り、背後の壁に割れる。
「結局、僕の独り言になってしまった」
ジルは立ち上がる。
「疲れているかもな。改めて聞こうか。君はこれから魔女と退治しなくていいんだ」
「どういうことだ・・・」
ジルににらみ返す。
「だから、その時までこの部屋で休んでいなさい」
答えず、ジルは扉の前に立つ。
「もしこの部屋から出たいなら、私を呼びなさい。その首輪で誤って殺しかねないからな」
ジルは静かに部屋から出る。
「ふざけるなあああああああああああああああああああああああああああ!」
ジルが座った椅子を扉に投げる。椅子は扉に当たり、粉砕される。
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな。
「そうだよな。怒っちゃうよな。こんなかわいい子を閉じこめるなんてな」
アキセが後ろから抱き、胸を触ってきたので、床に思いっきりたたきつける。




