第12話 銀の街 前半 ②
真っ暗で息ができない。
もう耐えられないと思ったが、視界がやっと明るくなり、空気も肺が満たすまで思いっきり吸って吐いた。落ち着いたところで周囲を確認する。
「ここは・・・」
神殿のような造り。天井や壁が透き通った壁で日が当たるようになっている。くぼんだ中央に四方八方に水路に銀の水が流れている。
その中央に少女が座っていた。
銀色の長い髪。銀色の瞳。服を着ておらず、体中の傷から銀色の血が流れている。
あの銀の水は、この少女から流れていたのか。国を覆いかぶすほどに。
普通の聖女なら耐えられるはずがない。
日や月に浴び、無限に『光』を生み出すとはいえ、体に負担がかかる。おそらく血の中に『光』が混じっている。出血死で死ぬ様子がないが、体への負担が大きい。長くは持たず、いずれ死ぬ。
もしかしてここに連れてきたのは、この少女からなのだろうか。
「あなたが呼んだの・・・」
少女に声をかける
「せい・・・じょ・・・」
少女はうつろな目で見つめる。
「聖女だ!」
虚ろな目が急に輝く。
「聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ聖女だ!」
狂ったように声を上げる。
銀の水が蛇のように伸び、迫ってくる。
咄嗟に手を前に出し、白い炎を噴き出す。銀の水から距離を取りながら、手に白い炎を剣に結晶化させ、体勢を立て直すが、銀の水がなかった。
「違う・・・」
なんだ?急に?
少女が混乱している。
「違う!・・・違う違う違う違う違う!」と叫んだ瞬間に銀の水が弾き、再び銀の蛇が伸びる。
さらに銀の蛇が分散し、ジャンヌに襲いかかる。
剣で切っても銀の水が無数に分散する。戦っても浪費するだけここは逃げるしかない。
白い炎に触れただけでなぜか混乱した。聖女なら『光』で効かないはず。今は考えるより逃げる方が先。
逃げられるならもうこの手段しかない。
手を大きく振り、白い炎をまき散らす
「どこにいるの!行かないでよ!」
少女が混乱している。
この隙に、窓から逃げるだけ。
近くにあった窓に必死に走る。水路を飛び越え、あとは窓を壊すだけ。
その時、窓の前に銀の水が覆いかぶす。
「何!?」
銀の水が蛇のように伸び、顔を殴られる。その勢いで飛ばされ、背後から首、手、足に銀の水が絡められる。
前から後ろから体に衝撃がくる。
捕まってしまった。
ダメ元で白い炎を放つ。白い炎で効いたなら、銀の水が離れるはずが離れない。
――なんで急に効かなくなったの
絡めたまま、少女の目の前まで引き寄せられる。
「行かないで・・・」
少女は、目から銀の水が流れながら見つめる。
「心臓をあげるから」
「え・・・」
今何を言った。
少女の背後に銀の水が槍のように鋭く形を変える。
まさかとは思うが、背後から銀の槍で少女の心臓を貫き、そのまま心臓を入れるということか。
「やめ・・・」
首がさらに絞められる。
このままでは、少女は貫通して死に、少女の心臓が入れられる。どっちにしても危機的状況には変わらない。
「これで・・・」
その時銃声が鳴った。
「何?」
よく見れば、少女の肩に小さな細い容器が刺さっていた。
少女が倒れた。
その時絡めた銀の水がただの液体になった。
咳き込みながら、顔を上げる。
毒いや眠らされている。
毒で殺すなら、この銀の水も枯れるはず。刺されたのは睡眠薬だろう。
その時、背後から轟音がした。
振り返れば、鎧が飛んできた。すぐさま白い炎を剣に結晶化し、向かってくる鎧に横に払う。兜が飛んだ。距離を取り、正体を確かめる。
「やっぱり・・・」
日のようなオレンジ色と金が混ざった髪にオレンジの瞳の女。
1年前に消えたはずのヴァルキリーだった。
「なんで・・・」
ヴァルキリーはさいはこの魔女パンドラ・ピュクシスに両腕を斬られているが、腕を持っている。
どういうこと。
目に生気が感じられない。まるで人形のように。操られているか。
今は考える余裕がない。早く逃げなくては。相手がヴァルキリーとは勝ち目がない。
「随分と大きくなったな」
男の声。とても聞いたことがある。
その時、腕を掴まれ、腹にヴァルキリーの踵が食らう。
膝がつき、捕まれた腕を後ろへ回し、そのままヴァルキリーに押さえられる。
またしても捕まってしまった。何度も捕まってしまう自分に嫌気がさす。
もがいても動けない。
「あまり暴れないでくれ。次は足を折ることになるぞ」
声をした方へ向く。
その視線には、司祭の服。金髪の長髪。青目。40代くらいの男。見覚えがある男だった。
「ここにいたのか!ジル・ド・レイ!」と声を上げる。
「綺麗になったな。ジャネット」とジルは、成長したことに喜ぶように言う。




