第11話 黒影の魔女③
「くそ、重」
ジャンヌを肩に担ぎながら、森の中を走っていた。
アキセはこの場を乗り切るための方法を考える。
今はどうにかしてジャンヌを『光』を浴びさせ、復活させなければいけない。今夜は月が出でいる。どこかに広い場所を見つけなければならない。
その時、足元に銃が当たる。
咄嗟に木の陰に隠れる。ジャンヌを置き、銃を召喚し、木の陰から様子を見る。
「聖女様を渡してもらおうか」
ヤゴウの声がした。
もう追い付きやがった。
隊長を率いり、その背後に5人の団員がいた。団員達は、左右に分かれた。
おそらく包囲させるつもりだろう。魔女に襲撃されている時に余裕だな。
「は!様つけするほど、扱ってない癖に。よく言うぜ」
「魔術師に言われる筋合いはない。異端者が」
聖騎士団に相手する余裕がない。魔女が迫っているからだ。
――そうだ。魔女に襲わせよう。
アキセは、ジャンヌに以前奪っていた『光』を込めた弾を撃ち出す。
弾は、騎士団ではなく、木に当たり、目を眩ませるほど激しく光る。
その時、地面から黒い槍が伸び、団員たちを刺していく。
これで魔女も聖女だと思って、聖騎士団を襲いにかかってくれる。
「よし、今の内に」
アキセがジャンヌを抱えて逃げようとしたが。
「逃がさん!」
目の前にヤゴウが現れた。
――はえーな。こいつ。
銃で宝石の剣を受け止める。
「魔術師が我『光』を使うな!」
「そんなの気にするか!」
別に『光』の使用禁止なんて決まっていない。
魔術師は、魔術の不発動になるため、『光』を使いたくない者もいるが、戦術的に魔術を無効化させるためにエンジェライトを使う魔術師もいる。
魔術で攻撃しても『光』で浄化される。人間相手なら手っ取り早く直接体内に召喚して、爆発させてやる。実行しようとしたが、腹に衝撃がした。
よく見れば、黒い槍がヤゴウの腹を貫通し、アキセの横腹に刺さっていた。
黒い槍が抜かれる。
横腹に血が流れる。すぐに指飾りを召喚し、腹に小さい結界を張り、一時的に血を止める。
ヤゴウは、腹に抱えながらアキセから離れる。
「魔女め・・・」
その時、ヤゴウの体を貫通した黒い槍が無数に迫ってくる。
「しゃ~ない!」
咄嗟にジャンヌに刺さったジルコニアを抜き、黒い槍に向かって放つ。
黒い槍と『光』を含まれたジルコニアが衝突し、激しく発光する。
ぎゃああああああああああああああああああああああ!
魔女の叫び声を上げる。
魔女が混乱している内にジャンヌを腰にかかえて、走る。
魔女を退治してもらうために早く月明かりを当てなければ。
やっと森から広いところに出られた。
これでジャンヌを回復できると安堵した時だった。
足に衝撃がした。太ももに黒い槍が貫通している。ジャンヌを投げ、バランスを崩し倒れてしまう。
だか、月明かりがあるためその内復活するはず。
足をやられた。
早く立たなければと体を起こした時だった。
自身の影から白い手が伸び、優しく顔をなでる。
唄が聞こえる。
「しまっ・・・」
動かない。足に怪我したからではない。魔女の誘惑にかかってしまった。
影から白い体。大きい目。黒い長い髪。美しい女が姿を見せる。
魔女は唄を歌う。とても色気のある声で誘うように歌う。
意識が少しずつ失いかけている。視界もぼやけていく。
「さあ。黒影の魔女シャドリナ・ブラッカーと行きましょう」
もうその声しか聞こえない。
手がどこまでも長く、アキセの顔を優しく触れ、影の中へと引きずり降ろそうとした時だった。
魔女の動きが止まった。
アキセは意識を取り戻したが、驚いてしまった。
魔女の顔がすっかり変わっていたからだった。
黒い顔。魚のような大き目。ぼさついた髪。鋭い歯が並んでいる。黒い鱗の手。醜い顔だった。惑わすため顔を変えていたのだろう。
あまりにもの姿の変化に驚き、体を大きく起こす。
魔女の体に光の刃が刺さっていた。
魔女は、目を見開きながら後ろを振りむく。その後ろを向けば、倒れていたはずのジャンヌがロザリオで魔女を刺していたのだ。
ジャンヌは、殺意のこもった目で魔女を見下ろす。
「ギャーギャーとうるさいんだよ。クソが!」
ロザリオは上に上げ、魔女を真っ二つにする。ロザリオを下げ、魔女の間を通し、影に刺す。白い炎を影の中に注ぐ。
魔女は、叫び声を上げながら消えていった。
ジャンヌは膝をつき、ロザリオで体を支えようとしている。
「君は本当にしぶといし、怖いことするねえ」
「うるさいね…これで助けてや…」
ロザリオの光の刃が消え、ジャンヌが倒れこむ。
「おっと」
アキセはジャンヌを胸の中へと受け止める。
「ちょっと・・・」
ジャンヌは声を低めに言う。
「いや~大人しく抱いてくれるなんてないからさ」
「あっそ。それよりさっき・・・重いと言ったよね・・・」
「え?何起きてたわけ?」
ジャンヌから返答がない。どうやら眠ってしまったらしい。
「黙っていれば、可愛いのに」
目に光りが入った。その方向に向けば、日が昇っていた。
「なんだ。もう朝か…」
顔を上げた瞬間に、目の前に人が立ち、顔を殴られた。




