第11話 黒影の魔女②
ジャンヌは、目を覚ます。
目の前が暗かった。『光』の吸収を防ぐためだろう。
手足に枷がはめられ、身動きが取れない。それにまだ体にジルコニアの刃が刺さっており、未だに『光』を吸収し、力も入れない。
物音がした。
「お目覚めになられましたか」
男の声がした。
ジャンヌは、視線だけ向ける。
月明かりを背後に一人の男が立っていた。
「この聖騎士団の隊長を務めています。ヤゴウ・ドルバーと申します。ジャネット様」
思わず目を見開いた。昔の名前を知っていることに。
「いや、今はジャンヌ・ダルクでしたね」
「その名を・・・どこの宗派だ・・・」
にらみつける。
「私たちは銀の街の聖騎士団です」
銀の街。
以前にナタルからその町の名を聞いたことがある。宗教の町だったのか。
「あいつがいるのか・・・」
ヤゴウは黙りこむ。
「答えろ!」
必死に怒鳴る。
あいつがいる。行方をくらませたあいつがいるはず。
「あまり無理をしないでください。お体に障ります。まだ先が長いので」
これは面白いものを聞いた。
アキセはコルンの発明品で『なんでも遮断マント』で身を隠し、木の陰で隠れている。
しばらく会う気はなかったが、近くで何か騒がしいと思えば、ジャンヌが聖騎士団に襲われている。聖女狩りにかかったようだ。
少し様子を見ようと隠れていた。
魔術では気付かれてしまうので、コルンの発明品を使うことにした。
『見える聞こえるスコープ』で耳までかぶせる望遠鏡。透視可能で、覗いた範囲で相手の話を訊けるというもの。透視機能は、耳の横にある円盤状を回せば、壁の厚さを調整できる。このスコープで時々いろいろと覗いていた。
ジャンヌは、昔は「ジャネット」の名で教会に入っていたようだ。わざわざ探しに来たのだろうか。どちらにしてもこのままならジャンヌは聖騎士団に連行される。しかも宗教相手では、目を付けられ、後が面倒くさくなる。
さてどうしようかと悩んでいる時だった。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
急に女の高笑い声が森の中を響いていた。
「これって・・・」
だいだい予想ができる。
笑い声で聖騎士団たちが警戒する。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
再び笑い声が響いた途端に地面から黒い槍が伸び、聖騎士団員を突き刺す。的確に頭や首を刺している。
「やっぱり魔女じゃないか・・・」
ジャンヌが弱っているところを狙ってきたのだろう。
「まあ、いいタイミングか」
「おい、何が起きた!」
外の騒ぎに気付いたのか、ヤゴウが叫ぶ。
「魔女が出現しました!」
「何!今すぐにっ!」
上から荷台に手をつけ、勢いに任せてアキセはヤゴウに蹴る。
「隊長!」
アキセは銃を召喚し、団員の頭に打つ。
ヤゴウは起き上がる。
「貴様!」
ヤゴウがアキセをにらみつける。
「何者だ!」
「おまえに答える必要はない!」
アキセはすかさず銃でヤゴウの頭を狙う。
ヤゴウの腕にある腕輪がエンジェライトを中心に光の壁が広がり、弾を防ぐ。
人間が『光』を使った。
『光』は、知恵を持つ者として聖女しか扱えない分、魔術と比べて技術も低く、主に砲弾としか使っていない。
「魔術師が」
鋭く睨むヤゴウが剣を抜く。剣もエンジェライトでできている。やけに技術が高い。
今は考えるより、この場から逃げることが先決。
弾を撃つが、ヤゴウは剣で弾く。
その時、ヤゴウの背後から黒い槍が伸びる。ヤゴウは気付き、剣で黒い槍を切る。
ヤゴウが魔女と相手している。この隙に。
「おまえはそっちと相手しててな」
その隙にアキセは荷馬車に入る。
入ってみれば、手足に手枷を付けられ、体中ジルコニアの刃が刺さっているジャンヌが横たわっていた。
「これはまだやられたもんだな。一様生きてるか」
息はしているが、ほとんど虫の息だ。
ジルコニアを取らない方がいいか。下手をすれば、生命にかかわることになるからだ。
「とりあえずここから・・・」
ジャンヌを抱きかかえた時だった。
下から黒い槍が伸び、咄嗟に後ろに下がる。
「ち!ここまで出るのか」
銃を召喚し、爆発の術の入った刻印弾を壁に打つ。壁が爆発し、穴が空いた。
ジャンヌを肩に担ぎ、空いた穴から逃げる。




