第9話 手探の魔女②
オークション会場は、町の中心から離れたところにあった石造の建物で5本の石柱が出迎えてくれる。
「裏口から回ってもよかったんじゃあ・・・」
気分が乗らない。
「この町、治安が悪いんだ。魔術で厳重保管している。聖女の力で魔術を無効化にしても、探し回るのも億劫だろう。会場で待った方が手っ取り早い」
魔術で探索も考えていたが、ジャンヌの『光』で発動できない。それに裏口から探そうにも騒ぎを立てれば、『魔女の手』はどこかに隠される。
「そうなんだけど・・・」
オークション会場に入るには正装が必要だった。ジャンヌは仕方なくワンピース風の黒いドレスを着ていた。
「あまりこの格好に慣れてないから」
慣れない格好で少し気分が乗らなかった。
正装しているリカルドがじっと見つめる。
「何?」
「女っけがなくても女になるものだな」
「それって貶しているの」
「行くぞ」
リカルドはジャンヌの言動を無視され、入口へと向かう。
少し不機嫌になりながらリカルドの後を追う。
入口には案内人が立っていた。
「招待状はお持ちですか?」
え?招待状?
リカルドがすかさず招待状を2枚出す。
案内人は招待状を確認する。
「ダンド様とミカエラ様でございますね。ご来店ありがとうございます」
案内人から小さな箱を出し、箱を開き、指輪を見せる。
「ではこちらを身に着けて参加してください」
リカルドは指輪を箱ごと受け取る。
「では、奥へどうぞ」
誤魔化せたようだ。
入口の奥へと入る。
「あの招待状どうしたの?」
「もらった」
「盗んだのね」
「そんな声を上げるな」
図星のようだ。
いつの間に盗んだのだろうか。おそらく客の中から招待状を引き抜いたのだろう。会場に入れば、なんでもいいか。
「さっきの指輪って?」
「セリの時に使うモノだろう」
リカルドは箱から指輪を指に着ける。
「参加しないでしょ」
「付けなかったら怪しまれるだろう。それに察知する術式が入っている」
案内人に渡された指輪は、術が刻んでいる。ジャンヌがつければ、『光』で魔術が消えてしまう。怪しまれないためにも代わりにリカルドが付けたようだ。
開いてある扉に入れば、広い会場へと繋がっていた。
舞台までの距離が遠く、椅子がいくつも並んでいる。100人ほどは座れそうだ。
一面を見渡せる後ろの席に座ることにした。時間が立つにつれて椅子が少しずつ埋まっていく。
話あった結果、ターゲットが現れたら、攻撃といったシンプルな作戦だった。
騒ぐだろうか。人間相手なら魔女よりも容易い。久しぶりに派手に行こうかな。
「あまり『光』を出すなよ。この会場に魔術が発動しているからな」
リカルドは言う。
会場にも防犯対策に魔術で結界を張っている。『光』で魔術が発動しなければ、職員に気づかれてしまう。
――そのくらい分かっています
「そんな魔女と違ってただ漏れしません」
急に暗くなり、舞台の上が明るくなり、男が1人立っていた。
「皆様お待たせいたしました。司会進行のマウロ・ブランでございます」
茶髪、茶色の目。40代くらいの男だった。
「毎度オークションに参加して頂きありがとうございます。今夜も皆さまにお目にかかる商品をご紹介いたしましょう」
オークションが始まった。
舞台の背後に鏡のように映し、商品を客に見せる。商品の魅力を上げるために実践させてからパウロが値段を言い出した瞬間。案内人に渡された指輪を客が上げれば、背後に上げた人の名前とパウロが定めた数字が映す。オーナーのパウロがオークションハンマーを叩いて「落札」と繰り返す。
それに、紹介する商品がどれもおかしかった。
魔力を使える首飾り。獣に変身する指輪。視力がよくなる目玉などといった変な商品ばかりだった。
「なにこれ」
「気付いたのか?」
「どの商品も記号や陣を込めていない」
「そうだ。どれも魔術で作られたものじゃない」
「じゃあ、この商品は・・・」
パウロの声で遮られた。
「さあ。今回の目玉商品!『魔女の手』です!」
円柱のガラス瓶に手が納まっている。
「この『魔女の手』は、触れたものを何でも盗ませるという。他にはない商品です」
力がアキセと似ている。アキセ以外に持っている者がいるのだろうか。魔女ならあり得るか。だか、魔女の手なら『呪い』が散らばっていない。
「ニセモノだ」
「え?」
その時だった。
バーン。
銃声が会場の中を響く。
弾は舞台の結界を貫通し、結界がガラスの割れた音のようにバラバラに落ちる。貫通した弾は、容器の入った『魔女の手』を破壊した。
「銃声?」
銃声に驚いた客が騒ぎだす。落ち着いて下さいと職員が必死に抑える。
「リカルド。この後・・・」
リカルドに聞こうと振り向くが、リカルドがいなかった。
「たく。約束なかったことにしようかしら」
急にやる気がなくなった。




