第7話 墨鯉の魔女⑥
リカルドが飛ばしたウィーン辞典を読んでいた。
「用事があるならさっさと言え」
アキセはリカルドに銃を構えていた。
「おまえ。何者だ?ただの人間じゃない。魔族が混じっているだろう」
リカルドは黙り込むので、足元に銃を撃つ。
「さっさと答えろ。次は一発ずつ体を撃っていく」
リカルドの顔色が変わらない。
「そうか、気付かないのか」
「は?」
その時だった。
「リカルド!」
ジャンヌが近づいてくる。
「悪いが、用事があるんでね」
リカルドは、ウィーン辞典を雑に落とし、ジャンヌの元へ歩く。
アキセは舌打ちする。
リカルドを追い越し、ジャンヌに近づく。
「何よ!」
ジャンヌの腕を引っ張る。
「ちょ!?」
「気に食わない」
「は?」
アキセは、『飛ばしコイン』を召喚する。工作の魔女コルン・ゴボルドの発明品の一つ。何も刻んでいないコインに触れれば、ランダムに飛ばされる。正確に思い浮かべば、コインに座標が刻み、着地点を選べる。
街の外と思い浮かべ、コインに触れる。
ジャンヌと共に転送する。
「聞きそびえた」とリカルドが呟く。
図書館のどこかに別の部屋に繋がる扉がある。
その先にはラプラスの部屋に繋がっていた。
その扉からくうそうの魔女ルシア・ファンタジアが入ってくる。
「ラプラス。本は元に戻したよ」
少し疲れ気味のようだった。
「お疲れ」
ラプラスは本を読みながら言う。
「なんでこんな面倒ごとするの?どーせ人間が片付けるのにさ」
ルシアが少し不機嫌に言う。
「本には罪がないもの。あそこまで汚されて人間たちに直せると思う」
「完璧に戻すのはラプラスしかいないけどさ」
「本当ならあの魔女が本を片付けさせてからでもよかったけど。それに聖女も本を見るのは初めてだったのかしら。本を投げるなんて」
ラプラスの口調が強くなった。本を雑に扱ったことに怒っているのだろう。
「それでも行かなかったよね」
「まだ本を読んでいるからよ」
「だから、聖女に代わりに退治させたんでしょ」
「それが彼女らの仕事でしょ」
「そうね」
「そういえば」
ラプラスが話題を変える。
「噂好きの魔女が駆け回っているようね」
「そうなの。聖女に川を落としたのも絶対知っててやったんだと思うよ。それで僕は戦わずには済んだけどね」
「どのくらい把握しているかは知らないけど、邪魔する気はなさそうね」
「今のところはね。今度あったら、訊いてみるよ」
「素直に話してくれるといいわね」
「あとさ」
ルシアが話を切り替える。
「墨鯉の魔女だっけ。もしかしてあの魔女だったりして」
「それはないね」
ラプラスは断言する。
「魔女文字と名前の一部も受け継いでいないし、呪力も違う」
「そうなんだ」
「あの本は魔女に弄ばわれるのも嫌なの。けど、あの本には載っていないわね」
ラプラスは本を閉じる。




