第7話 墨鯉の魔女①
川に沿い、森林浴に浸りながらジャンヌが歩いていた時だった。
鈴の音が森の中に響いていた。
すぐさま逃げる。
なぜなら、あの魔女がいるからだ。
唐突に風が吹き、目の前に木の棒が刺さる。
「なんで逃げるの?」
振り返る。
茶髪の中に黄緑が混じっている。髪を二つに結んでいるが、一つは三つ編みに、もう片方はただ結んでいる。緑色の長い袖。胸には布で前に縛っている。短パン。
やはり、かざなりの魔女ウィム・シルフが浮いていた。
「心辺りはないの」
「ん~ない!」とはっきり言う。
アキセとできているという噂を流した張本人だからだ。それに嫌がらせもする。
「やっぱり殺す!」
ロザリオを出すが、ウィムが瞬時にジャンヌの腹を蹴る。
川に落ちてしまう。
「あれ、どこ・・・てか、なんかこればっかり・・・」
目を覚ませば、どこかの部屋だった。
最近、魔女に不意をつかれてばかりで嫌になる。
「目を覚めたのか」
男の声がした。
視線の先には、男が窓辺で椅子に座わり、本を読んでいた。
黒髪。黒目。顔が整った青年だった。片手に宝石を込めた指輪をはめている。近くに剣が立ててあった。
なぜだろう。少し鳥肌が立つ。初対面なのに。
「あなたが助けてくれたの?」
「ああ」
「どうして?」
「ん~あ~」
急に考えて悩むことなの。
「川に溺れていたところを見つけて・・・」
「え?川?」
「覚えていないのか」
「え・・・」
思い返す。
ウィムに蹴られ、川に流された。金槌でどうにか岸に上って、そのまま気を失ったんだ。
「おまえ、白の聖女ジャンヌ・ダルクだろう」
「私のこと知っているのね」
噂は流れているが
「噂を訊いたんだ。おまえの悪行とリリムの溺愛とかな」
分かり切っている。ウィムが噂を流していると。
「噂はともかく。なんで私を?」
ジャンヌは尋ねる。
「ここどこだか分かっているのか?」
「川に流れきたから分からないけど・・・」
「ここ、アリルスブルク。魔術の街で魔女宗教が管理している。この意味分かるよな」
「・・・あ」
頭を抱える。
魔女宗教は、魔女を崇拝する。
魔女そのもの、個人といくつものの宗派に分かれる。過激派もいれば穏健派と様々である。どんなに宗派に分かれても共通点はある。
どの宗派でも魔女の敵は聖女。聖女と分かれば、聖女狩りで殺される。つまり、この町で見つかれば。
「君がここにいたら処刑されるってこと」
「まだ面倒なところに・・・」
男は考え込む。
「まあ、町出るまでは面倒みてやる」
「え?なんで?」
思わず声を上げる。
「前から聖女に訊きたいことがあったんだ。それに答えてくれれば、案内してやる」
「それだけでいいの?」
「ああ」
「じゃあ、せめて案内してからでいいかしら。それにその質問も私が答えられるものだといいけど」
「答えられるものでいい。深くまで入るつもりはないし、全部答えるとも思わない」
「そうなの・・・」
怪しすぎるが、現状見ても、一人で見つからずに逃げるには難しい。
利用できるものなら利用する。
「それでいいなら、取引成立としましょう」
「本当に承諾してくれるとはな」
「手段は選ばないわ。あと、名前も教えてくれるよね」
「・・・リガルトだ」
間を置いてからリカルドは言った。




